いよいよ、衆院選投票日。だけど、投票したくてもできなくなってしまった人もいる。米ニューヨーク在住の男性会社員(36歳)は、その一人だ。
海外に住む人がみんな投票できないわけじゃない。なぜ、彼は投票できなくなってしまったのか。BuzzFeed Newsに顛末を語った。
海外から投票する「在外選挙制度」
男性は国政選挙では毎回、投票してきた。今回も当然、投票するつもりだった。
衆議院が解散した9月28日、在ニューヨーク日本国総領事館から選挙の案内がメールで届いた。必要なものに「在外選挙人証」とあった。
初めて見た言葉だった。ネットで検索すると、これがなければ海外から投票する「在外選挙制度」を利用できないことがわかった。在外選挙人証を得るには、在外公館などで在外選挙人名簿に登録しないといけない。
そして、男性は決定的なことに気づいた。在外選挙人証の交付には2ヶ月かかるということに。すでに手遅れだった。
男性は2016年10月、東京からニューヨークに移り住んだ。在留届はインターネットで提出した。BuzzFeed Newsにこう話す。
「在留届が受理されれば、投票できるものだと思い込んでいました」
登録率は10%未満
取材に答える過程で、男性は一通のメールに気づいた。
外務省領事局から届いた在留届の受理連絡メールで、その中の最後に「在外選挙のお知らせ」とあり、在外選挙人証の取得が必要だと書いてあった。それを見落としていた。
「僕のミスです」と悔やむが、海外転居のドタバタで見落とす人は多いだろう。
4年に1度と決まっていれば、余裕を持って備えられる。しかし、安倍晋三首相が解散を検討していると報じられたのが、9月17日。それからすぐに動き始めたとして、2ヶ月でギリギリ間に合うかどうかだ。
総務省によると、在外選挙人名簿登録率は2000年〜14年まで常に10%を下回っている。登録した有権者の投票率は、14年12月の衆院選で約18%だった。
男性はこう語る。
「連絡はしてくれていたので外務省の怠慢とは思いませんが、もっと告知してくれてもよかった。転出届を出した時に口頭で教えてくれたら、在留届の提出時に一緒に手続きできたら、投票できないこともなかった」
登録率を上げるために
外務省在外選挙室の担当者も、登録率と投票率を上げたいと考えている。
「現在の制度は、手続きが煩雑で登録率が低い。本人確認のため在外公館にご足労いただくだけでなく、書類の郵送にかかる時間や選挙管理委員会の定例会開催の頻度の関係で、在外選挙人証を受けるまで2ヶ月ほどかかってしまいます」
2018年、公職選挙法改正によって、日本での転出時に在外選挙人名簿への登録申請を同時にできる「出国時申請制度」が新設される。在外公館で申請する必要がなくなるだけでなく、手続きの簡素化が図られる。
男性は言う。
「たった1票ですけど、憲法などの大事なアジェンダがあります。そこで意思を表明できないというのはやっぱり残念ですね」
バズフィード・ジャパン ニュース記者
Kensuke Seyaに連絡する メールアドレス:kensuke.seya@buzzfeed.com.
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