立憲民主党 枝野幸男代表 演説全文(10月21日新宿)
<政治の国民離れ>
あいにくの天気にもかかわらず、たくさんの皆さんにお集まりをいただき、本当にありがとうございます。立憲民主党代表の枝野幸男でございます。皆さんに背中を押していただいて、記者会見をしてから、まだ20日も経っていません。想像を超える多くの皆さんからのご期待とご支援を頂きながらの選挙戦でありました。
この国の政治が国民から離れている。そんな思いで、何とかその受け皿になりたいと、旗を立てました。でも、こんなに短期間で、こんなに多くの皆さんにご期待を頂いて、私は反省をしています。私自身も含めて、この国の政治がいかに国民の皆さんから遠くに行ってしまっていたのか。そのことに、多くの皆さんが苛立ちを感じておられたのか。多くの皆さんからご期待を頂けば頂くほど、そのことを痛切に感じる選挙戦でありました。
国民の暮らし、草の根の声から離れて、政治が上の方に行ってしまって、上から国民の皆さんを、国民の暮らしを見下ろしている。だから暮らしの足下が見えない。こうした政治の流れを変えていく。こうした政治の流れにおかしいと思っている人たちの声を受け止める。そんな存在に、立憲民主党はなりたいと思っています。
<暮らしの足下に目を向ける政治>
ずっと選挙でも訴えてきました。強い者だけに光が当たる。強い者をより強くする。この政治の流れ。5年経ちました。格差は拡大をし、貧困の問題が更に深刻になり、社会が分断をされ、遠心力が働いている。本当にこれで私たちの社会はこれから前に進んでいけるんでしょうか。
ただでさえ少子化で若い人の数が減っています。そんな中で、奨学金という名の多額のローンを抱えなければ進学ができない。そんな若者をたくさん作って、意欲も能力もあるのに、諦める子供たちが出ている。これで誰が日本の明日を、この社会の明日を、支え、引っ張って行くんでしょうか。
高齢化が進む中で、少子化がいつになっても止まらない中で、保育所が足りない。介護サービスが足りない。意欲を持って職場に入ってきて、でも、重労働で、責任も重くて、しかし人手不足で、人手不足なのに賃金が安くて、意欲を持っていても、志を持っていても、長く続けられない人が少なからずいる。ますます増える高齢者の皆さんを、誰が支えていくんですか。少子化、歯止めをかけるために、誰が子育て支援の現場を担うんですか。
限られた予算です。限られた財源です。すぐにバラ色のようなことができるとは言いません。しかし、ちゃんと優先順位を見極めましょうよ。暮らしの足下に、皆さんの生活に、しっかりと目を向ける政治を進めていこうではありませんか。
<支え合う社会>
競争ばかりがあおられ、自己責任が強調される、そんな社会になってしまっています。確かに、競争は、社会のベースの一つかもしれない。でもそのためには、公平、公正なルールがなければいけない。公平、公正なルールが守られなければならない。その中で競争するから、社会は発展をする。何でも自由にすればいい。それは政治の責任放棄であり、そのことが、働き方のルールをはじめとして、格差を拡大させているんじゃないか。過労自殺とか、あるいはサービス残業とか、あってはいけないおかしな日本語を生んでしまっているんではないのか。
公平、公正なルールを、しっかりとみんなが暮らしていける、そんなルールをちゃんと作る中での競争だ。自由をあおるだけの、競争をあおるだけの政治から、変えていこうではありませんか。
確かに社会は、人生は自己責任。私も、皆さんに背中を押していただいて、その声に押されて、でも、最後は自己責任で、立憲民主党を立ち上げることを決意しました。でも、一生を通じて、自己責任だけで貫ける人がどこにいるんでしょうか。人生、誰にでも、どなたにでも、自分の力だけではどうにもならないときがある。そのときのためにあるのが政治なんじゃないでしょうか。
政治が自己責任をあおるなんていうのは、政治の自己責任(責任放棄)以外の何物ではない。
互いの違いを認め合い、困った時に寄り添い、お互い様に支え合う。これが日本の社会だったんじゃないんですか。取り戻していきましょうよ。高齢者の皆さんも、若い皆さんも、お互いの立場を乗り越えて支え合う。そのことによって、社会の活力が生まれてくるんだ。私はそう信じます。
<いかなる権力も、ルールに基づいて使われなければならない>
政治の在り方そのものが問われている。政治の姿勢そのものが問われているんだと改めて感じています。
安保法制の話、福山さんからもありました。今皆さんは、衆議院議員を選ぶ選挙。衆議院議員が、国会議員は、法律を作る権限を委ねていただいているのはなぜですか。どういう根拠ですか。総理大臣が総理大臣であるのは、その権限を使うのは、どういう根拠ですか。権力を持っていたら、何をやってもいいなんていうのは、18世紀の人類の歴史です。
いかなる権力も、ルールに基づいて使われなければならない。この立憲主義というのは、右も左も関係ない。主義主張イデオロギー関係ない。近代社会であれば、当たり前の大前提です。総理大臣の、国会議員の権限も、その範囲も、全て憲法というルールで決められている。国民の皆さんが、憲法を通じて、この範囲でと決めて委ねている。
集団的自衛権は憲法違反だ。誰が言ったんでもありません。アメリカから押し付けられたわけでも、当時の野党の人たちが強く押し込んだわけでもありません。歴代自民党政権自らが、集団的自衛権は行使できない。日本の領土や領海が攻められたときは、個別的自衛権で日本を守るけれども、日本が攻められてもいないのに、外国のお手伝いで戦争はしない。自民党自らが決めてきたルールじゃないですか。それを、国民投票のような国民の声も聞かずに、勝手に変えてしまう。自分たちの持っている権限を勝手に広げてしまう。こんな立憲主義違反は、18世紀ですよ。今日本は何世紀ですか。
立憲民主党という名前、古臭いんじゃないか。堅苦しいんじゃないか。「憲」の字が書きにくいんじゃないか。いろんなこと言われましたけれども、そして何よりも、21世紀の先進国で、今更立憲主義を言わなきゃならないなんていうのは、本当に情けない時代だと私は思います。でも、言わなければいけない。取り戻さなければならない。主義主張、政策以前の問題として、ルールに基づいて使え。このまっとうな政治の在り方を取り戻そうではありませんか。
<まっとうな民主主義>
既に期日前投票をしていただいている方もたくさんいらっしゃいます。明日投票所に行かれる方もいると思います。できれば立憲民主党の候補者の立っているところでは、その名前を、そして、比例代表立憲民主党と書いていただきたいと思いますが、埼玉5区の皆さん、枝野幸男と書いていただきたいと思いますが、枝野幸男と書いていただいた皆さん、明日書いていただく皆さん、「当選したら枝野好きなようにやっていいよ。」白紙委任するつもりで投票するんですか。違いますよね。自分たちの思いを、自分たちの暮らしを、自分たちの声を、しっかりと聴いて、それを踏まえて政治をやってくれ。そんな思いで皆さん投票するんじゃないんですか。
選挙は、白紙委任ではありません。限られた候補者の中から、自分により近い人を選んで投票する。だから、当選をしたら好き勝手やっていいんじゃない。国会でいくら数を持っているからといって、好き勝手やっていいんではない。本当の民主主義は、選挙で選んでいただいた人間が、主権者である、主役である、民が主の考え方が民主主義なんですから、皆さんの声に耳を傾けながら進んでいく。これがまっとうな民主主義じゃないですか。
残念ながら、「選挙で勝って数を持っているんだから、何やろうと勝手だ。」国民の声に「こんな人たちに負けるわけにはいかない。」こんな人たちに集まっていただいています(笑)。これは民主主義ではない。私は思います。
もちろん、今いろんなもののスピードが速まっている時代ですから、即断即決、強いリーダーシップというものも、ある意味必要かもしれません。でも一方で、社会が多様化しています。価値観も多様化しています。都市と地方、豊かな人とそうでない人、高齢者と若者、正社員と非正規。社会が多様化していて、いろんな暮らしがある。いろんな意見がある。いろんな価値観もある。そんな中でこの国を前に進めていく。お互い様に支え合う社会を作っていく。そのためには、できるだけ多くの皆さんの声を聴いて、できるだけ多くの皆さんが納得するようにものを決めていく。それがまっとうな民主主義であると私は思います。
私自身も、数は力という永田町の俗説に、24年さらされて、勘違いをしていたかもしれない。反省をしています。しかし、国会議員の数が問題なのではない。問題は、いかに国民の皆さんの声に寄り添うことができるのか。それが本当の民主主義なんだということを、私は、改めて、改めてその原点にかえって、立憲民主党を前に進めていきたい。そう思っています。
<民主主義の主役>
明日、いよいよ投開票です。本当に多くの皆さんにお支えをいただいて、ここまできました。せっかくこんなにたくさんの皆さんに今日もお集まりをいただいている。全国でSNSなどを通じてご覧いただいている方もいる。全国どこに行っても、たくさんの皆さんにお集まりをいただきました。こうした皆さんの声を、これまでの上からの政治がはびこっている中で、しっかり届けていって、上か、それとも草の根からか。今までの、右か左かではない、新しい軸をしっかりと打ち立てて、前に進んでいくために、是非とも皆さん、もうあと一押し、一緒に戦ってくれませんか。
選挙は、「お願いします」なのかもしれません。ずっと24年そう言ってきました。でも、それは、政治家の側の勘違いだと、今回の選挙で、立憲民主党を立ち上げて皆さんに、様々声を掛けていただく中で、改めて感じることができました。選挙の主役は、民主主義の主役は、我々候補者や政党ではありません。皆さんお一人お一人が、民主主義の主役です。選挙の主役です。明日の主役です。
だから、皆さんの思いが少しでも通じる、そんな選挙結果にするために、私たちも一緒に戦わせてください。皆さん一緒に戦いませんか。一緒に戦いましょう。一緒に戦いましょう。ありがとうございます。
<新しい民主主義のスタート>
そして福山さんが言ったとおり、選挙運動は今日で終わります。でも、立憲民主党の挑戦は、そして国民の皆さんの新しい民主主義は、明日からスタートです。明日皆さんと一緒に、できるだけ大きな大きな第一歩を踏み出させていただきたい。踏み出していきましょう。
2017年10月22日。この日から、日本の民主主義が変わり始めた。後から言ってもらえるような、そんな歩みを私は進めさせていただきたい。そう決意をしています。是非私と一緒に、私たちと一緒に歩んでいただけませんか皆さん。上からではない、暮らしの足下からの、草の根からの、右でも左でもない、新しい軸を、前に進めていく。その歩みを、皆さんと一緒に進めていきたい。そのことをここで皆さんに、力強くお約束をさせていただきます。
私がこんな思いにならせていただいたのも、私の背中を押していただいた、枝野立てと言っていただいた、多くの国民の皆さんのお力です。これからも立憲民主党が、私たちが、まっとうな政治に向かってまっすぐ歩いていくためには、私には、あなたの力が必要です。あなたの力が必要です。あなたの力が必要です。あなたの力が必要です。是非一緒に新しい民主主義のステージを、第一歩を踏み出していきましょう。一緒に頑張りましょう。一緒に頑張りましょう。一緒に頑張りましょう。ありがとうございます。
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