今、もっとも注目を集めている美術ジャンルといえば、「江戸絵画」。入館待ちの長蛇の列が上野公園を埋め尽くした昨年の若冲展の狂騒も記憶に新しいことでしょう。
では、「江戸絵画」の本物は、4時間も5時間も並ばなければ見られないのでしょうか? 答えは「否」。並ばずに見ることのできる若冲もありますし、そもそも、江戸絵画は、有名・無名問わず面白い画家の宝庫なのです。
そんな魅力溢れる江戸の画家。どの画家の作品が、どこの美術館が所蔵しているのかを、網羅的に紹介するのが『作家別 あの名画に会える美術館ガイド 江戸絵画篇』。府中市美術館の名物学芸員・金子信久さんを著者に迎え、全国各地の美術館・博物館から選りすぐりの江戸絵画をピックアップ。あの画家のあの「名画」というような作品から、知る人ぞ知る画家の驚くほど魅力のある「名画」までを、読み応えのある解説と合わせて紹介する一冊です。
収録作品は、120人の絵師による約250点にものぼりますが、ここでは、そのユニークな内容の一端を画家ごとにご紹介します。
*作品は現在見られるとは限りません。展示時期については、事前に各館にお問い合わせください。
伊藤若冲
享保元年(1716)—寛政12年(1800)
1970年の辻惟雄『奇想の系譜』、2000年の京都国立博物館「若冲展」によって、すっかり日本美術の大スターとなった若冲は、江戸中期の京の画家。青物問屋に生まれ、中国絵画の研究や写生の努力を経て、溢れかえるような造形力を数々の作品に発揮した。