ふとテレビを見てたら、売れてないアイドルがたくさん出てたので、思い出した自分の話。
アイドルやってました。売れてなかったです。地下アイドルとかご当地アイドルとか、そんな感じの位置でそこそこ活動してました。ファンさんは全員顔と名前一致するような、そういう規模感です。
幼いころから歌うことと人前でパフォーマンスすることが好きで、ミュージカル女優になりたかった。舞台や映画にも憧れてた。一応ちゃんとテレビに出ている役者さんが所属している事務所に入って、気づいたら売れないアイドルをしてた。
「売れたら女優やりたい」とか言ってるアイドルを、それは無理でしょって思ってる人や、アイドルは踏み台なのかって思ってる人は多いと思うけれど、公言するかは別としてそういうつもりでアイドルしてる子は多かった。
私も、アイドルとしての仕事は楽しくて好きで、一度も穴を開けたこともなかったけど、それは夢のための努力をしているつもりだったから。
アイドルをやめようと思ったのには特に大きな理由があるわけではなく、年齢もまだいけたし、いやな仕事があったわけでもなかった。ただなんとなく、「やめます」って言ってみて、そしたらどうなるんだろうかという、かまってちゃん的な気持ちが確かにあって、本気でエンタメの世界から消えるつもりはなかった。
周りの人にもファンさんにもすごく引きとめられて、別の枠組みのアイドルグループから誘われたりもして、自分は「アイドルとして」人から必要とされてるということが確認できて嬉しかった。
「次のステップに進むため」的なぼやっとした理由でやめると言い出して、それが今までの活動からしたら最大に話題になったから、アイドル以外の仕事のオファーがきた。
「芸能界を目指す女の子たちが働いてる」ガールズバーとかクラブとか、あと風俗のお誘いもあった。
エロ系の仕事はもともと事務所にNGを出していたので、そもそもオファーがきていても知らされないこともあったと後から聞いた。AVの話は、事務所を通さず直接オファーされた。
アイドルをやってきた何年もの間に稼いだお金よりはるかに大きい金額を、一日で稼げると知った。AVに誘われて初めて、本当に心からアイドルやめようって思った。
「アイドルをやめる」って言っても、当然ながらミュージカルや映画の女優としての仕事はこなかった。私がアイドルを続けていても、その先にある未来は歌ったり踊ったり演技したりすることじゃなくて、脱ぐことだけなんだと思い知った。だからもう、綺麗さっぱりやめようと決めた。
そのあとは普通に大学入ってサークル活動で歌ったり踊ったり舞台に立ったりをしました。芸名を使ってたからか、幸いにも表立って「元アイドル」だと言われまくるようなことはなく、たまにどこかで知った人がこっそり聞いてくる程度でした。
皮肉なことに、サークル活動で立った舞台が、今までで一番多くのお客さんの前でのパフォーマンスでした。
10代前半からずっとアイドルで、ずっと彼氏もいなかったので、大学で初めて彼氏ができました。
就活のときはどこまで言うか悩んだりもしたけど、なんやかんやで普通に今は働いています。
テレビで売れてないアイドルを見ると、やめずに続けてたらどうなってたのかなあ、と想像する。どうするのが正しかったのかは、今でも分からないけれど、とりあえず今の私は普通に幸せだ。
頑張ってるたくさんのアイドルの子たちが、一人でも多く夢を叶えられたらいいなと思う。