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モンキー的映画のススメ

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映画「あゝ荒野後篇」感想ネタバレあり解説 衝撃のラストに呆然。真実は?

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10月21日

あゝ、荒野 後篇

 

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はじめに

2週間限定で前後編、上映終了後すぐDVD販売、しかもU-NEXTにて独占配信と、映画興行の方程式を無視した短期戦略展開中の「あゝ、荒野」

前篇後篇合計5時間以上の長編映画となってるわけですが、前篇を観賞した際に感じたのは、あっという間の2時間半だったということ。それだけ、のめりこんで見てしまうのは、新次とバリカン2人を始めとした登場人物それぞれが魅力的で、全ての役者が非常に好演していることが、一番に考えられます。

メインストーリーとサブストーリーが同時進行してく今作ですが、後篇でどのように繋がっていくのか。

また、クライマックスでの新次とバリカンの明暗から。どのような展開を見せていくのか。

 

とりあえず前篇の感想はこちらです。

 

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前篇のおさらい

核心を伏せてのおさらいをさくっと。

 

 

 舞台は東京オリンピックを終え、どこか悲壮感漂う東京・新宿。

奨学金を国が肩代わりする代わりに、社会奉仕して返金するという社会奉仕プログラムの是非、いまだ解決しない原発問題、東日本大震災から10年という節目を迎えても何も変わらない現状、都心のど真ん中で爆破事故が起きるなど、表向きは何も変わらないが、国民にとって少しずつ心身や懐に負担のかかる辛い現状が差し迫っていた。

 

 詐欺グループの一員として荒稼ぎしていた新次は、仲間の裏切りによって兄貴分に重傷を負わせ、半身不随にさせた裕二に復讐を誓う。

裕二がボクシングを始めたと聞き、単身乗り込むも一網打尽に遭った新次を、たまたまジムの前でティッシュ配りをしていた、吃音と赤面対人症の青年健二と出会う。

 

二人はその場でボクシングジムの会員募集のビラ配りをしていた謎の男にスカウトされ、行き場のなかった二人は翌日ジムを訪れる。

 

復讐に燃える新次と、内気な性格を克服しようともがく健二の間はやがて、プロという大きな目標を立て、友情を育みながらがむしゃらに特訓の日々を送るのだった。

 

 

同じ頃、近しい人物を自殺でなくした学生達で結成された自殺防止サークルの面々は、どうすれば自殺が亡くなるかを真剣に考えるため、街に出て死にたいと思っている人たちを施設で保護し、観察することをもくろむ。

 

その中には、健二の父・建夫もいた。健二と二人で暮らしていた建夫は、妻が亡くなった後、ずっとしょぼくれていた健二に虐待をし続けていた。しかし、健二が家から出て行った後、常に死ぬことばかり考え、彼らと出会うことになる。

 

 

ラーメン屋で働く芳子は、売春と置き引きを繰り返していたが、たまたま喫茶店でであった新次と意気投合し、ホテルで一夜を明かす。しかし新次が朝目覚めると彼女の姿はなく、所持金を盗まれていたのだった。

後日ラーメン屋に行くと彼女が働いていることを知り、新次は彼女と付き合うことになる。

彼女は福島出身で、母親もまた売春をして生計を立てていた。震災が起き、母と避難場所で暮らしていたが、やがて大人になった芳子は、故郷を離れ、ひとり東京・新宿で、必死に生きようともがいている。

 

新宿という荒野で、生きようともがく人たちのさまざまな葛藤と苦悩、そして希望へと向かう姿勢が溢れた前篇。

一体後半はどんな展開へと進むのでしょうか。

 

 

ここから観賞後の感想です!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感想

怒りと喪失の後篇!!過去に捉われた男と過去を変えたい男がつながりを求める怒涛の展開。結末は一体どっちなんだ!?

以下、核心に触れずネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずは総評。

友情を築き上げながら、互いの人生に活路を見出していくまでを描いた前篇に比べ、後篇は、執拗に過去に捉われた新次の怒り、今の自分を変えようともがき自分の道を歩んでい行く建二の別れ、そして決闘へと流れていくといった、前篇とは打って変わてシリアスな内容でした。

 

全編通して言えるのは、死と生について。

この星の名のもとに生まれたことで、人は一生を決められてしまうのか。それに従わなければいけないもの、従うしか選択の余地がない者、それに必死に抗っていく者。

主人公の二人は抗うことを決め、ボクシングにひたむきに打ち込んでいくわけですが、周囲の人物たちは思うようにはいかず、黙って死を待つ老人たちや、生きていく上で自分に危害を加えたものに縋るしかない現状、血のつながった子を捨ててでも生きていくと決めた者など様々。

生きていくことがこんなに辛いのになぜ生きていかなければならないのかという大きなテーマを、登場人物を通じて描いていたように思えます。

 

新次に関しては、孤独同然だった自分の周りに次々と仲間が増え、ボクシングが楽しい、もっと真剣にやりたいと思えたのに、後篇では建二が去った途端、畳みかけて押し寄せる周囲の人たちの離別が物悲しかったです。

少し前まで裕二とのリング上でのリベンジに怒りに燃えていた新次でしたが、そのギャップに唖然としました。

ネカフェでの魂の抜けた顔が辛かったですね。

 

建二に関しては、自分が持つ障害と病気、そして父に抗うことができず、自傷行為にまで走るほど心のコントロールができなかったわけでありますが、新次とボクシングに出会うことで心も体も強くなりたいと思うようになり、また唯一無二の親友に出会うことで、彼のようになりたいと一念発起し、旅立つ前に手紙を書く姿は涙モノでした。

 

そしてクライマックスでの新次との試合は熱かった。

繋がりたいと願う彼に応えるべく、必死にボディに顔にパンチを打ち込む新次と、それをこらえながらもどこか笑みを浮かべていそうな建二の姿は、誰にも介入できない二人だけの世界を生み出しているようでした。

 

こんな二人を見たら、日常での生活に嫌気が指したり、生きていくことが嫌になるといった後ろ向きな感情がバカバカしく思え、今という時を生きる彼らにあやかって自分も何か突っ走りたくなる衝動にかられてしまう、エネルギーをもらった気がします。

 

 

後篇は色々大雑把。

さて、前篇での食い入るように見てしまうほど楽しく鑑賞した勢いが後篇で続くのか。

そこまでいいコンディションで臨めなかったのは仕方ないとして、それを打破できるようなパッションが散りばめられているのか期待していたわけですが、後篇での急展開やシリアスなエピソードが続くことで、若干中弛みが続き、前篇ほどの楽しさはありませんでした。

 

理由はいくつかあります。まずは全編でのサイドストーリーが全く主軸に絡んでこない。

後篇になると前篇で尺を使ってまで描いた自殺防止サークルや、社会奉仕活動プログラムの義務化といった主人公たちとは全く関係のないエピソードが全く活きてこず。

 

自殺防止サークルはリーダーの自決によりどうやら解散したのか存続してるのかあいまいなまま描かれています。恵子に至ってはリーダーとの間に子を授かるも流産。破水したところに出くわした建二とつながりを持ちますが、それっきり。

 

社会奉仕活動プログラムも希望性から義務化へと進む動きに反発するデモ行進が描かれてるだけでそれっきり。あくまで少し先の未来はこれだけ息苦しくなってきているのかもしれないというだけのものなのかもしれませんが、せめてメインに絡めてもよかったように思えます。

これに関してはせっかく新次と建二が熱い試合をしている最中に、挟んでくるので非常に邪魔でした。

 

また、今野杏南がせっかく女優として気合の濡れ場を披露したのに(モンキー的にはごちそうさまでしたwでも好きなおっぱいじゃないw)、そこまで意味のないシーンや、ただ茫然と性行為に励む新次と芳子のベッドシーン、また片目と芳子の母とのカラミなど、とにかくその濡れ場意味あるのか?と思えてしまう描写。

前篇で生きていく上で必然だ、なんて豪語して感想をお述べた自分がいるにもかかわらず、後篇では全く活きてこない濡れ場の無意味さに少々がっかりです。

 

芳子の突然の失踪にも謎です。いくら追いかけても振り向いてくれない、ようやく追いついて忘れ物を渡しても愛想のない態度に、新次と今後関わっていく上で、自分は不必要な人間だと悟ったのか。

それとも、彼を近くで見ていて自分も前を向いて歩もうと決意したのか。これに関しては再び売春に走っていたのでたぶんないと思いますが。

 

そして、芳子に関しては、すぐ近くにまで姿を見せていた母と何の絡みもなく物語が終わってしまうというやっつけぶり。震災での仮設住宅から逃げ出し新宿を訪れた芳子は、母から買ってもらった靴を大事に持っていましたが、海へ遊びに来た際に、過去との決別を込めて靴を海へ投げ捨てるのですが、結果寄せては返す波によって砂浜へ戻ってきてしまい、自宅へ再び持って帰るわけで。

そこから感じたのは過去はそう簡単に切り離せないことへの暗示なのかなと思ったので、母との再会は必須だろうと思っていたのに、全く絡まないのはどういう意味なのか。

 

色々と決着をつけず終わってしまった後篇への疑問は膨らむばかりです。

 

 

結末について

こっからは核心に触れますのでご注意を。

 

 

 

新次とリングの上で繋がりたかった建二。自ら心の声で殴られる回数をカウントするのですが、計80回以上殴られます。一度はダウンし、ドクターストップになるほどの重症でしたが、観客席に座っていた宮本社長がゴングを奪い、場内は騒然。

馬場と片目の必死の声掛けにより、意識を取り戻し立ち上がりますが、新次の一発で再び倒れます。

試合は終了し控室。寝ている誰かの上に白いシーツを被せ、ドクターによる死体診断書(だっけか?)の氏名欄に「二木建 」まで書かれ、放心状態の新次のカットで物語は幕を閉じます。

 

まさかここで終わるのか?

衝撃のシーンで幕を閉じたので、このインパクトが後編の中で一番大きかったです。

 

もちろん死んだのはバリカンだと思いました。何も考えずに見たら、リングの上であれだけ殴られたのですから、死んでもおかしくありません。

しかも書類の氏名欄に二木建・・・とまで書かれてたので、必然的にバリカンじゃねえかよと。というか建二まで書いていなかったか?と自問自答までしてました。

 

ひとたび落ち着くと一つの疑問が生じます。

新次と建二の試合にはあらゆる登場人物が会場に姿を現してました。

いなくなったはずの芳子、社長と新次の母、馬場、片目、芳子の母、そして、自殺防止サークルの一員で建二の父の介護をしていた学生が、建二の父建夫を連れて来ていました。生きるということはどういうことなのか息子さんを通じてわかるかもしれないと、末期がんに加え失明中の彼を連れて訪れていたのです。

 

建二がリングで倒れたと同時に、火のついていないタバコを加え下を向いたまま動かない建夫が映ります。その時手に持っていた爪を集めた缶を落とすのです。

 

そう建二の父建夫もここで死んだものと思われます。

 

はいもうわかりましたね?建二と建夫。建の字は一緒なんです。

そして死体診断書の氏名欄には「二木建 」まで記されていました。

要するにどちらの診断書かわからないんですね。

 

そうなってくると、放心状態の新次を見ているのは誰なのか。視線に気づいた新次の前にいるのは誰なのか?ってことになってくるんです。

 

確かに、試合で疲労困憊な新次に建二の死を伝えに来たのかもしれないし、新・・・ちゃん・・・と体を引きずって彼の前に現れた建二かもしれない。

 

明確な答えはわかりませんが、どちらのエンディングがいいか我々が決めてもいいラストなのかもしれません。

 

いや~生きててくれよ!!バリカン!!

 

 

最後に

前篇が凄く好きだったので、後篇がとっ散らかった内容だったのが少々がっかりでした。ぶっちゃけ試合のシーンも裕二との試合が自分はボルテージマックスで、ペースをかき乱す新次のいかれた眼が最高に危うくてしびれたんですよね。

 

そうなると、クライマックスの試合では、熱いことは熱いですが、裕二との試合と比べると見劣りしちゃうんですよね。こちらが見ていて辛くなってきてしまうのは、彼らを見てじゃなくて、彼らを見て泣いている登場人物たちのせいで、こういう演出は好きではありません。

 

人間模様をなるべく少ないカットで描くことで人間模様がよりリアルに見えるのに、試合になると急にカメラワークが変わり、急なズームアップとか入るから、一気にフィクションにも感じてしまう。

 

そう言った意味でも後編はだいぶ足を引っ張った感じがしました。

せっかくいい題材なのに、という思いが強いです。

というわけで以上!あざっした!!

満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10