内部留保をわかってない人に教えたい超基本

希望の党だけでなく政党すべてが五十歩百歩

企業にとって意味があることは、資金を調達して利益を生み出すことであって、借金も株の発行も内部留保も資金を調達する手段の1つでしかない。それを一部だけ取り上げて無駄とかため込みすぎと批判されたところで、なんら意味がない。

内部留保に課税するとどうなるか?

さて、希望の党が公約に掲げる内部留保への課税が実現したらどうなるか。できるかできないかでいえば、課税自体は可能だ。ただし、すでに説明したように給料を上げたり設備投資をしたりしても内部留保に影響はなく、結局企業がやることは課税を避けるために配当や自己株買いだろう。

これによって起きることは企業経営の不安定化だ。株主還元が増えることは決してマイナスではなく、それどころか経済全体でプラスの効果も見込めるかもしれないが、課税を避けるために配当を払うことは歪んだインセンティブを生む。

先に挙げた不動産業界のように、業績悪化のバッファー(緩衝剤)となる手元現金は減り、倒産リスクが上がるかもしれない。また、マイクロソフトのように成長期には配当を出さず再投資に回して資金を外部流出させない、といった資本政策が採りにくくなる。内部留保を手厚く持つほど税金が増えてしまうのであれば、配当を払わなければ投資家に損をさせてしまうからだ。

本当に内部留保課税を行うのであれば、配当の非課税化くらいはやらなければ資金調達で混乱をきたすと思うが、おそらくそういった対策はまず行われない。内部留保課税や内部留保で給与アップといった話は必ずといっていいほど「大儲けしている企業を懲らしめて庶民を守る」といった文脈で語られるからだ。「消費税の増税をやめて内部留保に課税を」という希望の党の公約にもその傾向は強く見て取れる。

今回の公約は与党自民党からも批判を受けているが、内部留保で給与アップや設備投資を行って経済成長、といった話は与野党問わず過去に多数の議員がたびたび発言しており、社民党も内部留保課税を公約に挙げている。希望の党が突出して問題があるわけではなく、すべての政党が五十歩百歩という状況だ(内部留保課税は二重課税、という批判が麻生太郎財務相からなされているが、そうであれば配当への課税は利益に法人税を課した後への二重課税となる)。

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  • 一般国民も409ed76392f4
     株を買えと、政府は誘導したいっぽいですが、まさにこれは麻薬のようなもので、一旦ある程度の資金を出して、株を買ってしまうと、株高を望んでしまう訳ですから、政府が大量に株を買って、株高にしている現在においては、株を買った人間は自動的に現在の政府支持になってしまう訳です。まさに、麻薬ですね。

     それでバブルになっても、いずれバブルははじけますが、普段やっている方々は「その直前に売り抜けられるさ」と思っている賢い方々の集まりです。素人が手を出すと、ババを引かせるための格好のカモになります。
    up89
    down21
    2017/10/21 09:29
  • NO NAMEf471adef79dc
    紋切型の内部留保解説は読み飽きました。
    「内部留保=現金」ではないと分かってない人がどれだけ居ますか。希望の党がどうだかは知りませんが。
    事の本質は、労働者、特に中小企業の従業員の所得が上がっていない中で内部留保を大幅に積み上げている企業があるということです。
    言い換えれば、株主が納得するだけの配当を支払ってなお内部留保を増やすだけの利益を上げているということであり、利益を増やすには売上を増やすだけでなく人件費や下請けを買い叩くことで実現しています。
    その結果がこの現状であり、だから内部留保が注目されるのです。

    企業が内部留保を減らしたいと思っていないことなど当たり前。だからこれは政治の仕事なのです。
    内部留保を全て吐き出せとは誰も言いません。今この国で起きていることをよく見て手当をするのが政治です。そのための税制です。
    法人税を強化すべきです。
    up101
    down34
    2017/10/21 14:29
  • NO NAME042c7e56b4b9
    安倍政権のアベノミクスにより法人実効税率はが7%も減税されたことも後押しして、内部留保が四割も増えて400兆円になったのです。
    トリクルダウンは起きないのです。
    減らしたからったら増税すればよいのです。
    直ぐに消費税上げる必要もありません。
    up93
    down27
    2017/10/21 12:52
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