~「残業」や「休日出勤」のとらえ方を整理しましょう~
1.パート従業員にも残業手当や休日出勤手当は支給される
「自分はパートだから、残業しても手当はつかない」と考えている人はいませんか? そんなことはありません。パート従業員も、労働基準法で定められたルールに基づき、一定の時間を超えて働いた場合、または休日に働いた場合には、通常の時給に割増増賃金を加えた残業手当または休日出勤手当が支給されます。
それでは、どんな場合に残業手当や休日出勤手当が支払われるのでしょうか?
2.残業手当は1日8時間、1週40時間を超えて働いた場合に支給される
労働基準法第32条では、1週間については40時間を超えて、1日については8時間を超えて労働させてはならない、と定めています(これを「法定労働時間」といいます)。この法定労働時間を超えて働かせた場合、会社は残業手当を支給しなければなりません。
例えば、「時給1000円、1日7時間労働」のパート従業員が、1日に8時間働いたとしましょう。この場合、通常の労働時間を超えた1時間は、その分の時給(1000円)が支給されます。一方、この人が1日に9時間働くと、法定労働時間(8時間)を超えることになり、超えた1時間分に対して、時給に割増率(一般的には25%)を乗じた残業手当(1250円)が支給されます。また、このパート従業員が月曜から土曜まで6日間勤務した場合、週42時間(=7時間×6日)働くことになります。この場合、1日の労働時間は8時間以内であっても、1週については法定労働時間(40時間)を超えますから、超えた2時間分の残業手当(1250円×2時間=2500円)が支給されます。(なお、規模が大きい会社は、1ヶ月に60時間を超えた場合、その時間に対する割増率を50%以上としなければならないというルールもあります。)
3.祝日に出勤しても休日出勤手当が支給されるとは限らない
パート従業員でも、休日に働いた場合は、休日勤務手当が支給されます。
一般的に「休日」というと、日曜日や祝日を指しますが、労働基準法上は、毎週少なくとも1日、または4週間を通じ4日以上の休日を指します。(これを「法定休日」といいます)。この法定休日に働いた場合に、休日勤務手当が支給されます。
毎月、勤務シフトを定めて働いているパート従業員の場合、4週間を通じて4日以上の休日が設定されていれば、日曜日や祝日に働いたとしても、休日出勤手当は支給されません。しかし、4日設定した休日のどこかで働くと、その日は休日出勤となり、その日の労働1時間につき、通常の時給に割増率(一般的には35%)を乗じた休日出勤手当が支給されます。
4.午後10時以降の勤務にも、割増賃金が支給される
労働基準法では、残業や休日勤務のほかに、深夜の時間帯(原則として、午後10時から午前5時まで)に対しても、通常の賃金の25%以上の割増賃金を支払うことを定めています。もし、パート従業員が1日に8時間を超えて働いて、さらに残業時間が午後10時以降に及んだ場合、残業手当の割増率(25%)に深夜勤務に対する割増率(25%)が加算されて、その割増率は「50%(以上)」になります。
求人広告等では、午後10時以降に働くパート従業員の時給は、ほとんどの場合、深夜勤務の割増賃金を含んだ金額で表示されています。時給に深夜勤務の割増賃金が含まれているかどうかがはっきりしない場合は、会社に確認するとよいでしょう。
5.残業手当などの未払いは、2年前のものでも請求できる
ここでは、残業手当などの支給について一般的な例を示しましたが、会社によっては、この説明とは異なる方法、割増率で残業手当などを支給していることがあります。詳しくは、ご自身の労働契約書や就業規則等で確認してください。
パート従業員も、「今月は残業や休日出勤がありそうだ」というときには、働いた日や時間を記録しておいて、給料が支給されたときに、残業手当や休日勤務手当等が支払われているかどうかを確認し、不明な点があれば、会社に問い合わせてみることをおすすめします。
なお、残業手当や休日出勤手当などが支払われていない、あるいは間違った方法で支払われているという場合は、最大で2年前まで遡って請求することができます。「済んだことは仕方がない」とあきらめずに、残業手当等について「おかしいな」と思うことがあれば、まずは会社に確認してみてください。