ちょっと解説しとく。書いてみたら日産を擁護する論調になったけどまあいいや。
■おまえ誰だよ
少なくとも、今回の検査問題と商品の品質には関連がない。「検査」と「品質」、もしくは「完成検査」と「品質」をごっちゃにしている論調が散見されるので、そこを修正したく増田を書いている。
いま話題の「完成検査」は、安全に走るための最低基準をクリアしているかどうかを判定する工程であり、メーカーと国交省で取り決めがある。が、現在の技術水準でこの基準を下回る車両が発生することはゼロに等しい。「品質」は、承前の完成検査をクリアした上で、さらにその上の次元の、塗装が綺麗だとか、耐久性が高いとか、ドアとボディの隙間が何ミリ以下だとか、そういう各社の独自基準の話であり、国交省は絡んでいない。
よって、「前から日産の車は故障が多いと思ってたんだよ」的なブコメは、本件とは関係がないので各自ディーラーへご相談ください。
例えばブレーキ検査。できたての車両を、ローラー台という地面がくるくるまわる台に載せて、車両を擬似的に走らせる。ブレーキペダルの踏む量と、減速具合(負の加速度)が既定どおりに相関していれば完成検査合格、ということになる。で、このブレーキの踏む量と減速具合はどちらもコンピュータが計測していて、自動的に判定が出る。認定検査員だろうと、補助検査員だろうと、亀が踏んでいたとしても、判定にゆらぎは出ない。検査はコンピュータが判定しますということを国交省に届け出て、国交省もOKを出している。
■じゃあ何が問題なの
10月18日の出荷停止の前と後ろで問題を2つにわける必要がある。
■まず、前の問題。
これは正直、つきつめれば日産ではなく制度そのものの問題だと考えている。
既報の通り、検査は各企業で所定の講習を受けた認定検査員がやらないといけないということになっている。この検査員は国家資格の自動車整備士とは違い、単なる社内認定制度にすぎない。で、この制度のいい加減なところは、認定検査員になるための難易度が企業でかなりばらつきがあることだ。個人的予想だが、日産はこの認定検査員になるための講習の難易度が無駄に高く、検査員の確保に苦労していたのではないか。そうでなければ日産だけで問題が起きた背景の説明にならないし、実際、日産の栃木工場の品質検査の水準はかなり高い。この予想が正しければ、日産の自爆案件ということである。
翻って。せっかく苦労して取得した認定検査員の資格でも、やることはブレーキを踏む、ハンドルを回す、それだけだ。判定はコンピューターが下す。じゃあ何のための認定検査員制度なのか、ということになるが、正直私にはわからない。だから、この制度のない海外向け日産車については今日も問題なく出荷されている。
当然、日本国内向けの車両の完成検査にかかったコストは、日本のユーザーへの価格へ転嫁される。
だから上記の事情を知るジャーナリストは、日産ではなく形骸化した本制度に批判の矛先を向けていた。日産も国交省もその自覚があり、問題の早期収束を狙っていたと思われる。
■後の問題
しかし、10/18の「その後も認定検査員以外が完成検査に紛れてました」は前回の「100%大丈夫です」という記者会見に対する裏切りになってしまった。超トップダウン型経営の日産で、なぜ最高経営者の指示が徹底されなかったのか?
一般に車両は、「鉄板プレス→溶接→塗装→内装組み付け→エンジン組み付け→検査」の順に進んでいく。当然、完成検査は最後の検査工程で行われていると思うだろう。しかし、生産効率を極限まで引き上げた結果、検査工程の一部が、各工程の間に挟まって飛び地状態になることがある。完成検査の9割は最後の検査で行われており対策を完了していたが、この飛び地の部分の対策が漏れていたということである。これは当初の国交省の指摘からも漏れていたために、問題の表面化が遅れる要因になった。なお、実際の工場では「完成検査」で定められた項目以外にも、多数の社内基準の「品質検査」が行われており、「完成検査」と「品質検査」は複雑なまだら状態になっている。このうち「完成検査」は「認定検査員」が実行しないとアウト(でも海外向けならセーフ)、ということになる。マインスイーパかよ!
なので、現場の社員から見れば、確信犯的に完成検査を蔑ろにしていたわけではなく、
国交省「お前が行っていた行為が、実は完成検査の一部で、おまえは違反の幇助をしていました!」
社員「ナ ナンダッテー!! Ω ΩΩ」
という感じなんだと予想する。
■じゃあどうしたらいいの?
うーん、どうしたらいいんでしょうね。。。
某知事の「安心」と「安全」は違うんです!に通ずるものがありますね。
日産は検査をAI化してないからこうなるんだよな