今年4月、韓国国内の仮想通貨取引所「YAPIZON」から3800ビットコインが消えた。当時の市場価格でおよそ55億ウォン(現在のレートで約5億5000万円。以下同じ)に相当するカネが、ハッキングにより一夜で吹き飛んだのだ。米国のセキュリティーベンダー「ファイアアイ」は、このハッキング攻撃の黒幕として北朝鮮に目を付けた。ファイアアイは最近、報告書で「北朝鮮のハッカーは今年4月以降、韓国の仮想通貨取引所を少なくとも3カ所攻撃した」と指摘した。仮想通貨が世界的に広く通用するのに伴い、北朝鮮ハッカーの「餌食」になっているのだ。
北朝鮮は銀行口座のハッキング、特定のサイトをマヒさせて金を要求するランサムウェア攻撃、ゲームマネーや仮想通貨の奪取などのハッキングを主な外貨稼ぎの手段として活用している。また、核実験に伴う北朝鮮制裁で資金源が断たれたことにより、さらにハッキングに熱を入れている。ニューヨーク・タイムズ紙は15日、北朝鮮がハッキングによって年間10億ドル(約1135億円)を稼ぎ出していると報じた。
■「追跡不可能な仮想通貨を集中攻撃」
最近、取引規模で世界第3位レベルになる韓国国内の仮想通貨取引市場へ、まるで自宅に出入りするかのように北朝鮮のハッカーが自由に通っていた状況が捕捉された。米国のセキュリティー専門企業「レコ―デッド・フューチャー」も「今年5月以降、北朝鮮内部でビットコインを確保するための動きが急激に増えた」と指摘した。今年6月に韓国最大の取引所「bithumb」からおよそ3万人分の個人情報が流出した事件も、捜査の過程で北朝鮮の仕業だと判明した。韓国国内の仮想通貨取引所「coinis」から508ビットコイン(およそ21億ウォン相当=約2億1000万円)が消えた先月の事件も、北朝鮮の仕業と推定されている。
北朝鮮のハッカーが仮想通貨を狙う理由は、追跡が困難だからだ。韓国の場合は実名認証が必要だが、開発途上国では偽名や偽の電話番号でも仮想通貨の口座を開設できる。したがって、政府当局で口座の閉鎖措置を取ることもできない。ハッカーは仮想通貨を確保した後、口座の管理が不十分な開発途上国や世界の租税回避地でドルに換えるという手を使う。闇取引市場で金を買ったり、武器取引にも使われているという。セキュリティ企業「ハウリ」のチェ・サンヨン室長は「仮想通貨は現金化が容易なので、世界のハッカーが集中攻撃している」と語った。