英国のスコットランドといえば、風光明媚なハイランド地方とタータンチェックのキルトを着た人々を思い浮かべるかもしれない。だが、もうひとつ名物が加わった。浮体式洋上風力発電による海上発電所が世界ではじめて営業を開始したのだ。ピーターヘッドという町から約25キロ沖の北海の洋上に、大型の風車が浮かび、発電を行っている。(参考記事:「世界最大の水上メガソーラー、日本で建設」)
この風力発電所を構成しているのは、高さ約250メートル、海中に沈んでいる部分の深さは約80メートルという巨大な5基の風車だ。
再生可能エネルギーの推進派は、「ハイウインド・プロジェクト」とも呼ばれるこの取り組みが、同じ技術を導入できる他の地域のモデルになればと期待を寄せている。(参考記事:「日本はどう?再生可能エネルギー普及、世界で加速」)
水深700mでも設置できる
この巨大な風車は、ノルウェーの石油会社スタトイルが自国で組み立て、1600キロほど南のスコットランドに運んできたものだ。スタトイル社は、アラブ首長国連邦(UAE)のマスダール社と提携してこの巨大な構造物を作りあげた。風車は、高さ約16メートル、直径約5メートルの巨大な3つのアンカーによって海底に固定され、洋上で直立する仕組みになっている。
洋上風力発電所の建設は1990年代から行われてきたが、これまでは水深約60メートルまでの海底に固定する「着床式」だった。しかし、スコットランドの浮体式風車は水深120メートルより深い場所にも固定されており、水深700メートル以上にも設置できるという。
一度直立して運転が始まれば、風車と町の電力網をケーブルで接続し、スタトイル社によると、風車5基で2万世帯の電力をまかなえるという。(参考記事:「データで見る再生可能エネルギー」)
「風車は海上に浮いていますが、一度直立してしまえば、とても安定します」とスタトイル社の担当者エリン・イザクセン氏は話す。