Think Labには、あえてコミュニケーションを遮断することでアイディアを創出したり個人が考えを深めたりできる空間を造る。Think Labの監修を務めるキャンサースキャン イノベーションディレクターで予防医学研究者の石川善樹氏は、「イノベーションを起こすには“知の探索”と“知の深化”の2つの要素が不可欠」と話す。つながりを生み出して多くの人と共同作業を行うシェアオフィスのような環境が知の探索の場であるのに対して、Think Labは知の深化を促す場にする狙いである。
石川氏は、平安時代の僧である空海を例に挙げ、イノベーションに知の深化が欠かせないことを強調する。「空海は中国に渡って知の探索を行った後、おそらく情報過多の状態を整理するためにあえて都から離れた高野山に金剛峯寺を建てて知の深化を行った」(同氏)。しかし、多くのオフィスでは知の探索に適した環境は整えられているものの、知の深化を促す環境はほとんどないのが実状だ。そこで、「Think Labを知の深化に特化した“現代の高野山”にしたい」と石川氏は意気込む。
集中を計測するメガネがきっかけ
今回のプロジェクト始動のきっかけは、ジンズが2015年に発売したセンシング アイウエア「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」を使って数千人に対して実施した実験である。JINS MEMEは眼電位センサーと加速度センサー、ジャイロセンサーを搭載し、まばたきの回数と強さ、利用者の姿勢から集中の度合いを計測することができる。
実験から分かったのは、「現在のオフィス環境では、多くの人が集中できていないこと」(ジンズ 代表取締役社長の田中仁氏)。そこで、生産性を追求するために集中を促す空間造りが必要だと考えたのだ。
なお、Think Labのプロジェクトでは、集中できているかどうかを評価する際にJINS MEMEを活用する。希望者はThink Labで仕事を行う際に自分がどれだけ集中できているかを確認するためにJINS MEMEを借りることもできる。