(英エコノミスト誌 2017年10月14日号)
スロバキアの首都ブラチスラバ市内の公園に展示された、英国人アーティスト、ルーク・ジェラム氏の作品「月の博物館」(2017年10月7日撮影)。(c)AFP/JOE KLAMAR〔AFPBB News〕
しかし、賃金の中央値の70%相当というのは、やり過ぎか?
全泰壱(チョン・テイル)が自死を遂げてから、韓国ではいろいろなことが大きく変わった。この弱冠22歳の若者が劣悪な労働環境に抗議して焼身自殺した1970年、彼の国は数千万ドルの援助を外国から受け取っていた。
それが今では、世界第11位の経済規模を誇る国に発展している。首都ソウルの、彼を追悼する像の周りには高層ビルが立ち並び、その傍らを通り過ぎる人々はスマートフォンでゲームに興じている。
だが、活動家や政治家は彼についての記憶をしばしばよみがえらせ、この国の普通の労働者には経済発展の分け前が公正に分配されていないと主張している。
「偉大な人物だった」
全泰壱の像の隣で休憩時間にたばこを吸っていた露天商はそうぶつやいた。「ずいぶん良くなったけどね、我々の賃金はまだお粗末だよ」
左派の文在寅(ムン・ジェイン)氏が大統領選挙に勝利したのは、この状況を変えると公約したためでもあった。今年5月に就任した文氏の経済政策の目玉は、最低賃金の引き上げにおける大胆な実験だ。
まず、来年これを16.4%引き上げる。最低賃金の上昇率としては2000年以来の高い値だ。2000年当時との違いは、経済が今の3倍のペースで拡大していたことだ。
それ以上に野心的なのは、このハイペースな増額がその後も続くことで、計画では、2020年までに計55%引き上げることになっている。
もちろん、最低賃金を引き上げている政府は韓国だけではない。しかし、これほど大幅な増額を進めているのは、米国のシアトルやカナダのアルバータ州など、豊かな国の中でも裕福だとされる都市や州であるのが普通だ。
国全体でここまで高い伸び率を目指すケースは珍しい。その国が輸出に依存しているなれば、なおさらだ。