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Jawboneとの思い出「Vol.5 終わりの始まり」

投稿者: ほっしぃ 日時: 17日(火) 23:47

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まず、このVol.5を始める前にしっかりとお伝えしたいことがあります。

この一連の記事を書いたことで、当社にJawboneについての何かをご期待いただいてご連絡いただく方がいらっしゃるようです。しかしながら、これから書くように当社理由ではないところですでに3年前以上に代理店業務を終了、移管しておりますので、現時点において当社にできる事はありません。大変申し訳ありませんが、購入された販売店、もしくはサポートまでご連絡いただくより他ありません。ご理解をよろしくお願いいたします。

さて、Jawbone UPの登場によって、Jawboneを取り巻く環境は大きく変わりました。それまでのハンズフリーヘッドセット、ワイヤレススピーカーもそれなりに知名度が上がる素晴らしい製品でしたが、Jawbone UPはそれらとは桁違いに売れましたし、有名になりました。本社の方では、莫大な資金を投入してハードウェアやソフトウェア、ビッグデータを使った大きなビジネスを拡げていきました。私が出会った頃には50名程度だった従業員も200人を超えるようになって、大きな大きな投資も受けるようになって会社の体制が変わっていきました。

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実は、この流れはQuirkyのときと同じなのですが、投資家が莫大な投資資金を投入するようになると、成長が求められ、急いで製品を作っていかなければいけない、売上を作っていかなければいけないというプレッシャーがあるのか、無理にでも大きくなっていこうという行動に出るようになります。また、本来は良いこととしてやるのでしょうけれども、現実的に良い結果にならないと思うのが、アイビーリーグ卒でMBAを持っている人材だったり、超有名大手から引き抜きをしてきた人材だったりが幅を利かせてくるのです。

昔からいた人は居心地が悪くなるのか段々といなくなり、プロダクトや未来のサービスを一緒に興奮しながら話す人はいなくなり、マーケティングのチームがものすごく強くなっていきました。元Apple、元HPとかそういう人たちが、古巣ではこうやっていたということを押しつけてくるようになりました。しかし、今までよりは大きくなったとはいえ、Appleと比べものにならないブランド力ですから、同じ事はできないのです。それなのに、それをワールドワイドブランディングということで、日本へのローカライズは許さないと、我々にローカライズをさせないようになりました。

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そんな中で、Jawbone UPに製品品質の問題が発生します。ある程度の期間を経過すると、動作しなくなってしまう。またはボタンが利かなくなってしまうということが、いろいろあった中でも大きい問題でした。正直なところ、初代Jawbone UPについて言えば、これは品質という問題というよりは構造上の問題だと思います。基板をエラストマー素材で一体成型しているのですが、装着する構造が「型」ではめるようになっているので、物理的にそこが伸縮するのですが、その影響が基板にも及んでしまうので、脱着しているうちに弱くなってしまうのです。初代Jawbone UPはiPhoneと接続するのにイヤフォン端子を使うため、必ず同期させるのに脱着が必要だったということもあり、さらに先端にボタンがあるのも良くない設計でした。ボタンスイッチの耐久性も低いものだったため、ある一定回数からはクリック感がなくなり、最終的には接点しなくなってしまいました。

6ヶ月ほどの期間における不良率は30%を越え、保証期間内である1年で考えると50%を越える不良率だったと思います。これは販売する側としては恐ろしいことで、新品を用意しなければいけないというのもありますし、当然多くのクレームが寄せられます。それまでのJawbone製品と違い、Jawbone UPのみは新しい分野の製品であるということもあったり、操作方法なども含めてこれまでとは違うレベルでのカスタマーサポートが必要だということで、Jawbone社本体によるコントロールでサポートセンターを開設しました。ここでも、我々の提案などは一切受け付けられず、どこかの会社でカスタマーサポートを統括していたという人が現われて、自分たちにすべて任せろということで我々の知らないところで進められました。

しかし、最初はほとんど日本語が上手く通じないどこかの海外のコールセンターに繋いでしまい、絶対にこれはダメだと途中で日本の会社に無理矢理変更してもらったりと、最初から波乱の幕開けでした。そして、問題が発生してからはものすごいことになっていきました。我々は販売をしているため、販売店からのクレームの方は我々の方で対応しなければなりませんし、販売店経由で返品が来ることも多くあります。また、交換品が足りないということで当社の在庫から出したりしていましたが、元々販売の方は爆発的に売れていたので在庫もありません。さらに悲しいことに、交換品もそんなに長く持たずに壊れてしまうため、交換を繰り返すというユーザーの方もいましたので、本当にヒドイ状況でした。そして、アメリカでも日本よりもたくさん販売していた(在庫配分はアメリカ、ヨーロッパ優先でした)ので、もっと多くの問題が起き、販売中止という自体にもなりました。

その後に、ある程度の期間を経て、構造を変えた上で、ワイヤレスにもなって帰ってきたのですが、こちらも当初堅牢性をかなり強くアピールしていたものの、初代よりは大分少なくなったとはいえ、壊れてしまうということはかなりの割合で発生しました。これは、構造上というよりもテスト不足だったのか、早く売上を取り戻さないといけないとなったのかは分かりません。いずれにせよ、UP2でも通常考えられない不良率は続いたため、これももう一度しっかりと製品を改良してから、あらためてローンチしようということを言い続けたのですが、次回ロットから直るといって実際には変わらなかったり、段々と我々の方でもこのまま販売し続けることができないと考えるようになり、販売店を拡げる要望を受けつつも、やんわりとかわしていました。

それでももっと販売を拡げていけ、発注を増やせ、というプレッシャーが強くなってくるため、我々の目指すところと、メーカーの目指すところに乖離が大きくなってきてしまったと強く感じるようになりました。本当に製品のコンセプトやデザインは良いものの、このままだとJawboneというブランド自体が崩れるし、それを販売している当社としても信頼を失うようになってしまうということで、我々としても決断を下すしかありませんでした。


[Jawboneとの思い出 バックナンバー]
・Vol.1 出会いから、日本へ導くまで
・Vol.2 ローカライズとビジョン
・Vol.3 驚きの新製品JAMBOX
・Vol.4 驚きを超えた衝撃のUP登場
・Vol.5 終わりの始まり

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