Webページの読み込み速度が、収益化における悩みのタネになっている人たちがいる。
Googleの「AMP(アンプ:Accelerated Mobile Page)」でのページ閲覧数あたりの収益が、自社サイトでの同収益より低くなっていると、Googleを怖れて匿名を条件に答えてくれたパブリッシャー6社が述べている。理由はAMPでは広告の読み込みがコンテンツと比べて遅いからだという。たとえばAMPの1ページあたりの収益は、パブリッシャー自身が保有し運用しているサイトでの同収益とくらべると半分以下だそうだ。実際のところ、ユーザーからするとAMPははなはだ快適だ。コンテンツの読み込みは実に速く、広告の読み込みが終わるまえにスクロールできてしまう。これでは広告を閲覧したと見なすことはできない。
また、コンテンツの読み込み速度がAMPによるパブリッシャーの収益低下にどれくらい大きな要因を与えているのかもはっきりしない。AMPには標準化のための制限がある。たとえばページデザインや記事の再循環、パブリッシャーが使用可能な広告ユニットの種類などであり、いずれもパブリッシャーにとって同プラットフォームでの収益化を難しくしている。AMPが20カ月前にローンチして以降、Googleはこの問題に取り組んではいるが、上記のパブリッシャー各社は、AMPにおけるコンテンツと広告の読み込み速度の違いは、これからも残り続けるだろうと考えている。
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「AMPでの広告はたくさんの問題を抱えている。なかでもAMPの読み込みが『速すぎる』ことは、間違いなく問題だ」と、あるパブリッシャーの幹部は漏らす。
速すぎるAMPの問題点
いままでパブリッシャー各社は、AMP上の広告の読み込み速度をコンテンツと同じくらい速くしようと取り組んできた。Googleも広告の読み込み時間を改善するため、AMP内での広告リクエストの処理を調整したばかりだ。
JavaScriptを調整することでAMPの広告表示を速くするわけだが、Googleはこの仕様を広告主やテックベンダーに強制しているわけではない。そもそもGoogleのメディアやマーケティングにおける影響力はあまりにも大きく、AMPの広告やコンテンツについてGoogleがどの方策を選ぼうと、結局誰かが不満を覚えることは避けようがない。
もしトラッキングのコードを制限することでクリエイティブのサイズを小さくしたり、AMP広告に特殊なタグを埋め込んだりすれば、Googleを通じて総計で数十億ドルにおよぶ広告を届けているクライアントは怒るだろう。だが、コンテンツの読み込みが広告より速くなっていることで、パブリッシャーのAMP上での収益化が難しくなっていることは間違いない。Facebookもインスタント記事でパブリッシャーを苛立たせており、Googleにとってパブリッシャーの苛立ちを鎮めることは、ライバルと差をつける機会ともいえる。
Google「広告は二の次」
だが、Googleはあらかじめ、ユーザー体験とページ速度の改善が、AMPにおける最大の目標であり、収益化は二の次と表明している。
「AMPの最大の狙いはコンテンツの読み込みであって、広告は二の次だ」と、Googleの広報担当。「そのうえで当社は、広告の読み込みを速くすることについても取り組んでいる。速度の重要性はコンテンツだけではなく、広告にとっても同じだが、エコシステムとして実現するのは容易ではない」。
精細な画像や複数のトラッキングタグが埋め込まれた広告の読み込みを速くするより、テキストの読み込みを速くするほうが単純に簡単なのだ。あるパブリッシャーは、問題の原因はGoogleではなく、重いクリエイティブを作りAMP内での読み込みを遅くしている広告主だと語る。
思い通りにはならないもので、AMPのコンテンツの読み込みが速くなるほど、広告の読み込みの遅さが目立つようになっているのが現状だ。影響を受けるのはパブリッシャーだけではない。もしGoogleが販売した広告をユーザーが見ることなくスクロールすれば、Google自身も収益の機会を逃すことになる。
検索トラフィックがすべて
だが、Googleにとって、読み込みの速い記事でのCPM以上に重要な関心事があるのだ。長期的に見て、検索における支配を続けることこそがGoogleにとって最優先事項だ。誰に対しても開かれたWeb空間で支配を続ける方策のひとつとして、Webページの速度向上が位置づけられている。たとえそれが短期的な収益で犠牲を伴ったとしても。
パブリッシャーはすでに検索トラフィックに依存しており、たとえ読み込みが間に合わずユーザーが広告を見ないとしても、パブリッシャーはプラットフォームの主の意向に逆らうのを恐れていると語るのは、テック企業ニューラネット(Neuranet)のCEO、ポール・ビンセント氏だ。同企業は、インタラクティブ広告協議会(Interactive Advertising Bureau:IAB)が定める、読み込みの速い広告の仕様にパブリッシャーが取り組む支援を行っている。
「パブリッシャーがAMPに流れている理由はただひとつ。Google検索でAMPが上位表示されるよう優遇されているからだ」と、同氏は語る。
Ross Benes(原文 / 訳:SI Japan)