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オートマチック車をうまく操り、楽しく乗りこなす方法

トヨタ・ヴィッツのシフトレバー

オートマ車を運転し、シフトレバーをがちゃがちゃと操作することを、どのように捉えているだろうか。別段格好を付けているわけでもなく、れっきとした意味合いがあるのだ。その理由なども交え、オートマ車を上手に操作し、堪能できる乗り方をご紹介したい。

日本におけるオートマ車普及の推移

斜め前方から見た青色のトヨタ・ヴィッツ

日本国内の乗用車販売おいて、オートマ車*1の占める割合が実に99%にもなるという昨今。マニュアル車*2に乗っているのは、それこそスポーツカー*3好きか、ご年配の方くらいしかいなくなってしまった。

自販連こと日本自動車販売協会連合会などのデータによると、1985年には約51・2%だったオートマ車比率である。1991年にオートマチック限定免許ができ、1995年にはオートマ車比率は約80・8%まで上昇。そして、2011年になると、オートマ車98・3%、マニュアル車1・7%という圧倒的な数値となった。

  MT車比率 AT車比率 乗用車総販売台数
1985年 51.2% 48.8% 289万2894台
1990年 27.5% 72.5% 408万5005台
1991年 オートマチック限定免許の導入
1995年 19.2% 80.8% 318万1286台
2000年 8.8% 91.2% 271万840台
2005年 3.4% 96.6% 309万6683台
2010年 1.7% 98.3% 271万4319台

(出典:一般社団法人日本自動車販売協会連合会

オートマの普及を少なからずけん引していると推察されるのが、女性の免許保有者の増加である。オートマ限定免許ができた1991年の免許保有者男女比率は、男性62%・女性38%であったが、2013年の警察庁統計では男性55.5%・女性44.5%となっている。ほぼ半数といっていいだろう。

今では、新しく販売される車種にオートマ車しか設定いなことも多く、スポーツカー以外でマニュアル車の設定があれば、「良心的」と評価される。オートマ車の一番の利点は、何といっても運転が平易なことである。マニュアル車離れに拍車を掛ける「難点」は次のようなものがある。

  1. ギアシフト*4に視線や神経を奪われ、運転に集中できない。
  2. 坂道発進などで半クラッチ*5操作が難しく、車がずり落ちる。
  3. 渋滞時のクラッチ操作が面倒。

オートマ車の種類と利点

側方から見た若草色のスバル・ジャスティ

オートマ車と一口に言っても、構造的にはいろいろな仕組みがある。

  1. オートシフト式
    FIAT 500や現行のスズキ・アルトなどが採用している。構造上はマニュアル車用トランスミッションギア*6の、クラッチ操作だけを機械が代行する方式。構造が比較的簡単・製造費も抑えられる利点もあるが、ギアチェンジ時の円滑さに少々欠ける難点がある。
  2. ギア式オートマチック
    最も普及している方式で、4速が一般的だったが最近は多段化が著しく、10速オートマなども存在する。多段化によって馬力をより効率的に引き出すことができるようになり、マニュアル車よりも事実上速く走れるものも多い。
  3. CVT*7式オートマチック
    知る人ぞ知る、スバル・ジャスティが1987年に世界初の技術として世に送り出した無段変速機である。二つの輪に鉄のベルトを引っ掛け、輪の外径を変化させることで変速する。エンジン回転だけ先に上昇、その後に実際の加速が付いてくるという独特の感じがある。

以上、三つのオートマ車の仕組みについて簡略な解説を行った。運転席に座れば、どれも2ペダル式のため、運転方法は類似しているといえる。オートマ車の何よりの利点は操作が簡便であるということだ。しかし、簡単過ぎる故に、ペダルの踏み間違えに起因する大事故も多発しているから注意が必要だ。

オートマ車をうまく操る方法

トヨタ・ヴィッツのシフトポジション

オートマ車の運転がたやすいのは誰もが知るところだ。車庫を発車したら、D*8レンジ*9に入れっぱなしでかなたこなたを走行できる。

では、冒頭に触れた、オートマ車でもギアを適時動かしているのは、何のためにやっているのだろうか。最近では国産コンパクトカー*10もマツダ・デミオを除き、おおむねCVT式オートマチックを搭載するようになった。

ここではトヨタ・ヴィッツの2WDガソリン車を実例として、オートマ車をうまく操る仕法をご紹介する。ヴィッツのCVTは上の画像のように六つのシフトポジション*11がある。「D」のみで日常の運転領域を全て穴埋めできる。しかし、より安全な運転を心掛けるためには、特に「S」も積極的に使用するとよい。「B」は傾斜が急な長い下り坂用なので、常日頃における使用の機会は少ない。

「D」で走行している場合、特に40km/hあたりを超えると、アクセル*12を離しても車両はすうっと進み続け、減速する意思は微弱にしか感じられない。この空走感がとても怖い。ヴィッツに限ったことではないが、オートマ車は燃費を向上させるため、「D」だと極力エンジンの回転数を下げようとコンピュータが勝手にギヤ比を高く制御するのだ。それも手伝って空走感が顕著に現れるのだ。

「D」で走行中、先行車が急ブレーキを突然かけた場合、当然自車もブレーキを踏もうとするはずだ。平坦路であっても、ペダルをアクセルからブレーキに踏み換える間、コンマ何秒の「空走」で、自車は一気に先行車に接近してしまう危険をはらんでいるのだ。

ところが、これが「S」ならばエンジンブレーキがかかるため、自車を減速させつつ、アクセルからブレーキに踏み換えることができるのだ。このコンマ何秒かの「空想」と「エンジンブレーキ」の差は看過すべきでないはずだ。だから、「ちょっと混みあっている」「この先は赤信号」の状況判断とともに、「S」にシフトするとよい。「S」は何もスポーツ走行だけのものではなく、平素でも使うべきだ。カメラや機械任せではない、運転手が自ら行なえる予防安全である。

まとめ

トヨタ・ヴィッツの内装

言うまでもないが、走行中にギアを「P」や「R」に入れてしまったら車は壊れてしまう。しかし、「D」「S」「B」間は頻繁にがちゃがちゃとしても壊れてしまうわけではなく、そうするために造られているのを覚えておきたい。

中級者になれば「S」は平坦路カーブ手前の減速時にも有用だ。エンジンブレーキによって自然な減速感を生み、ブレーキパッド*13・ブレーキシュー*14の延命にもつながる。さらにはアクセルを離してエンジン回転数がアイドリング*15に戻ろうとする間は、燃料を節約する仕組みになっているので、環境にも優しいのである。

余談だがメーター部分に常に表示される平均燃費は、運転していると気掛かりで仕方ない。自ずとアクセルを極力踏み込まないように意識してしまう。加速時に燃費を上げるには、その方法しかない。また、巡航速度に達して周囲の危険度も低いなら、「D」でアクセル開度をできるだけ一定に保つのが燃費向上のこつだ。

ドライブ*16に出掛けるときは、目的地や景色だけでなく、運転中も含めて全ての時間を満喫したいものだ。マニュアル車には遠く及ばずとも、オートマ車でも人馬一体の「自分が車を巧みに操作する」感覚を玩味できる。

装備はどうであれ「運転を楽しむ」ことが自動車に対する究極の愛情だと思うのだ。

(出典:トヨタ自動車株式会社株式会社SUBARU

*1:オートマチック-トランスミッションを装備した自動車。AT 車。ノークラッチ車。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:手動で変速装置の操作を行う自動車。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*3:【sports car】運転すること自体を楽しむために作られた車。実用車に比べ車高が低く,加速性能にすぐれている。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*4:【gearshift】変速機の変速段を変えること。ギア-チェンジ。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*5:【clutch】自動車などのクラッチを操作するペダル。踏み込むとクラッチは切れる。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*6:【transmission gear】自動車などの歯車式変速装置。トランスミッション。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*7:【continuously variable transmission】無段変速機。ギアを用いずに無段階で車のスピードを変えることができる。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*8:【drive】オートマチック車で,変速装置のレバーが走行(ドライブ)の位置にあることを示す記号。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*9:【range】機械などの,作動するべき範囲や条件。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*10:【compact car】小さなサイズの乗用車。アメリカでエンジンや車体を小さくした乗用車につけられた呼称。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*11:【position】位置。場所。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*12:〔アクセレレーター-ペダル(accelerator pedal)の略〕自動車の加速操作に用いるペダル。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*13:【brake pad】ディスク-ブレーキに用いられる板状の部品。ブレーキ-ディスクを両側からはさみ付けて,摩擦力で車輪の回転を止める。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*14:【brake shoe】ブレーキ-ドラムなどに圧接して,制動をかける部品。ブレーキ片。制動片。制動子。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*15:【idling】機械・自動車などのエンジンに,負荷をかけず低速で空転させること。暖機運転。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*16:【drive】自動車を運転すること。また,自動車に乗って郊外・観光地などに遊びに行くこと。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)