「働き方改革」で何が変わるのか実践してみた

時間に余裕ができたら消費は増えるのか

早く帰れたら何をしますか?(写真:A_Team / PIXTA)

働き方改革の重要な論点の1つは、新たな需要を生み出すことができるかどうかである。7月21日に内閣府が発表した「平成29年度 年次経済財政報告」の「第2章 働き方の変化と経済・国民生活への影響」では、働き方改革による労働生産性への影響や国民生活への影響が58ページにもわたって議論された。長時間労働の是正などによって生産性が向上するといったすでに幅広く議論されている内容に加えて、働き方改革による余暇時間の増加についても議論されていることが特徴である。たとえば、下記のような記述がある。

「日本では一人当たり労働時間は減少してきたが、国際的にみると、いまだ総労働時間は相対的に長く、その反面として、いわゆる余暇時間は短い」(P102)

「労働時間の変化は家計の消費行動にも影響を及ぼすと考えられる。働いている主体は買い物をする時間が短い。勤め人の女性と無職の女性を比べると、買いものをする時間帯や長さが異なる。勤め人の女性は、夕方などの会社帰りの時間帯に買い物をする傾向にあり、無職者の女性のおよそ半分の時間を費やしている。ただし、休日でくらべれば、無職者(女性)と勤め人の女性では買い物の時間帯や時間の長さは大きくは変わらない。通勤時間等が変更され、労働時間が短縮されれば、勤め人の買い物時間帯の幅や長さも伸びる可能性もある」(P132)

需要が増えなければ経済全体のパイは拡大しない

この連載の過去記事はこちら

働き方改革の議論については、労働者のスキルアップなどの改革を行ったとしても、結局は需要が増えなければ経済全体のパイは拡大しないという点が重要である。

そのためには働き方改革によって労働時間を減らすことだけではなく、上記のように増えた余暇をいかに需要増に結びつけるかといった視点が重要である。

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  • NO NAME41edd8833c0a
    時間があるから家族の介護や教育、健康に力を入れる事が出来るので社会保障費を抑制できる。

    社会保障費が抑制できたら増税しなくてすむし、成長が少なくても国が維持できるという面の利点が大きい。

    なにより過労死や精神疾患が減るのが最大の目的です。

    過労死や精神疾患で働かなくなる事で家族の悲しみや経済的な負担は大きいです。
    up19
    down1
    2017/10/20 07:28
  • 松田ゆたかe039b15fe956
    時間があってもお金がなければ,お金は使えない。
    余暇が増えても収入が増えなければ,消費は拡大しない。
    きわめて単純明快な事実だと思いますが。
    余暇が増えることによって特定分野(旅行とか)の消費が増えることはあるにしても,総収入が増えなければ,別の分野の消費を減らさないと収支の勘定が合わないわけで,総消費はプラスマイナスゼロになるはず。
    up13
    down1
    2017/10/20 07:06
  • NO NAMEd094a04c8b82
    働き方改革で余暇の時間が増えても、1人あたりの消費は拡大しないという見方には賛成。そもそも人口減の社会で個人消費の拡大によって持続的な経済全体のパイ拡大を実現するというのが無謀だと思います。
    働き方改革で友人や家族と過ごせる時間を増やす。それが直接消費に結びつかなくても、家族、子供を作るという行動に結びつけば、そのほうがよいのでは?
    up8
    down0
    2017/10/20 08:07
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