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経済政策でみる「希望の党」のあまりに露骨なポピュリズム

今回は「喜劇」かもしれないが…

有権者に見透かされている

いよいよ衆院選の投票日が近づいてきた。投票日当日は、台風接近の影響から日本各地で大雨が予想されている。

大雨によって投票率が低下した場合には組織票が有利とされるため、自公の政権与党(もしくは共産党)に有利に展開になると予想するメディアもある。一方で無党派層の「風」を期待する勢力には不利に働くといわれている。ただ、雨が降る時間帯などによっても左右されるため、細かくみれば、雨と選挙の関係はそれほど単純でもないらしい。

余談はさておき、今回の衆院選は、衆議院の解散前から「風向き」が激しく動いている。

現在、主要メディアはこぞって自公の政権与党が300近い議席を獲得し圧勝する見通しを報じているが、かつて、選挙戦中に与党圧勝の見通しが報じられながら、実際の投票結果では、与党が大苦戦を強いられたこともあるので、まだ結果はわからない。特に小選挙区の場合にはなおさらである。

その選挙戦の「風」だが、衆議院の解散直後は、小池百合子東京都知事率いる「希望の党」がメディアの注目を一心に集めた。このとき「希望の党」は、自公政権に対抗する「保守野党」としての期待が高かったが、現時点では当初の勢いを失いつつある。

理由は論者によって様々だが、経済政策面では、「あまりにポピュリズム過ぎた」というのが筆者の率直な感想である。

 

「ベーシックインカム」は可能か?

当初、「希望の党」は与党の「消費税率引き上げで得た税収増分の一部を教育・子育て支援に向ける」という増税を財源とした再分配政策に対抗し、消費税率引き上げの凍結とベーシックインカムの導入を打ち出した。この政策メニュー自体を個々にみると素晴らしい(と筆者は思った)。だが、希望の党の経済政策の提案には、2つの重大な問題点があった。

1つめは、「現在の日銀の金融政策スタンス(量的質的緩和)を見直す」という立場をとった点である。そして、もう1つは、「ベーシックインカムの財源として通貨発行益を用いる」という「財源案」である。しかも、この2つの問題点は相矛盾する側面と、ある意味、整合的な側面が共存するという不思議な関係にある。

まず、「現在の金融政策スタンスの見直し」というのは、「日銀は、むやみやたらに国債を購入して量的緩和を行うスタンスを見直し、そろそろ『出口政策』を検討すべき」ということだと思うが、現在の日本経済の置かれた状況を考えると、このタイミングで、金融政策が量的質的緩和政策から出口政策の策定に転換するのは早すぎると考える。

日本経済の現状は、過去数回到達した「デフレ脱却の入り口」にようやく達しつつあると考えた方がよいと思うが、そのタイミングで出口政策についての言及が日銀から出されると、マーケットを中心に、世の中は、出口政策の実施を前提に行動を開始することになる。その場合、デフレ脱却が十分に実現する前に金利の上昇や円高などが発生する懸念があり、それによってせっかくいい所まで来ていたデフレ脱却自体が頓挫するということにもなりかねない。

一方、「ベーシックインカムの財源に通貨発行益を用いる」というのは、まずは長期の(もしくは恒久的な)金融緩和が前提となる話ではないかと考える。もし、インフレ率が目標の水準に到達し、出口政策を実施する局面では、通貨発行益をベーシックインカムの財源にすることは基本的には困難なのではなかろうか。

もし、このような状況で通貨発行益を出し続けるような政策を採るのであれば、インフレ目標政策と矛盾する金融政策を政府が強いることになりかねない。これはそれこそ深刻なインフレをもたらす懸念がある(あるいは、AIの普及でもうインフレにはならないという前提があるのだろうか)。

以上より、2つの政策は、一方では(いますぐではないにしろ)将来的な量的緩和の縮小を現時点で織り込ませ、出口政策の策定を前倒しで行うことを提案しながら、もう一方では長期の金融緩和を(インフレ目標とは独立に)要請するという点で相矛盾するものではなかろうか。