日活ロマンポルノ製作開始45周年記念「ロマンポルノリブートプロジェクト」の一環として4月4日に『恋の狩人・欲望』(1973)がDVDリリースされます。
主演の田中真理さんは、当時、出演作2本が猥褻図画として警視庁に摘発されたことで時の人に。さらに裁判の最中に、“女優が取り調べ後に警視庁から出てくる”オープニングにはじまり、事件をなぞるような内容の本作に主演して“エロスの女闘士”と呼ばれました(被告となった監督らは1980年、高裁での判決で無罪が確定)。
その後、予定されていた続編が中止となり、自身もロマンポルノの世界から去った田中さん。いわくつきの本作の初DVD化にあたり、思いを口にしました。
◆“女だから”という言葉が大嫌いだった
――今、ロマンポルノが女性にも人気だと言われていますが、「本当に?」と思う人もいると思います。でも田中さんの出演作を拝見すると、本当に美しいですし、色気とそこはかとない儚さがあるセックス描写が官能的で、『恋の狩人・欲望』(監督:山口清一郎)も、実際に女性に支持される作品だと感じました。
田中:そう言っていただけるとすごく嬉しいですね。実は私は子供のころから、“女だから”という言葉が大嫌いだったんです。子どもの頃、ベーゴマがやりたかったんです。でも女は入れてもらえないんですよ。私は男の子と遊んでいるほうがおもしろかったし、女だからというのが嫌で嫌でしょうがなかった。だから強くなりたいと思っていました。そこを刺激されて、ずいぶん損もしましたけど。
――“女だから”が嫌だったところから、ロマンポルノで女性としての美しさを見せる強さへと向かったのはおもしろいですね。
田中:そうですね。映画に出たかったし、やりたい仕事だったので。
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――本作をご覧になったのは、いつ以来ですか?
田中:公開以来です。何年か前にレイトショーがありましたが、その中にもこの作品はなかった。外に出さないんだろうなと思いましたね。今回ソフト化ということで、やっとお許しをいただけたんだという思いがあります。
◆殴られたら殴り返したくなる
――出演作『ラブ・ハンター 恋の狩人』、主演作『愛のぬくもり』(共に1972)が立て続けに猥褻図画として警視庁に摘発されたあとに公開された本作には、完成台本がなかったとか。
田中:余白がいっぱいあって、自分たちの考えを入れていいよと。私はヒロインの真子をどうやって作っていこうかということと、裁判と向き合っていきたいという本音との中にいました。被告ではないのだけど、自分の作品を罪に問われてしまった形なので、そこは向き合わなきゃいけないと頑なに思っていましたから。そこを避けると、もう少し楽な生き方もあったと思うんだけど(苦笑)。
私には見てみぬふりはできなかったのと、映画を知らない人が映画を裁くというのがすごくいやだった。だから向き合いたかったんです。イキナリ殴られた感じですよね。そうするとどうしても、殴り返したくなる。私って、そうなんです。
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――ヒロインが本編で読み上げる、瀬戸内晴美(瀬戸内寂聴)さんの本『遠い声』は、田中さんから、監督に「こんな本があります」と提案されたとか。
田中:そうです。生まれて初めて調書を取られて、まだ記憶も生々しかったときに、偶然、書店で見つけたんです。帯に「日本で明治期に最初に処刑された女性革命家」と書かれていて。読んで、しばらくはまりましたね。当時の裁判記録とかが残っていて、瀬戸内先生がそのやりとりをきちんと書いてらっしゃるんだけど、私の体験とまったく同じなんです。なんだ、少しも変わってないんだなと思いました。
――当時、田中さんは「女闘士」として象徴的な存在になりました。
田中:でも、わたしだけではなくて。(故)山口監督も、ほかの女優さんや俳優さんの調書を見る機会があったそうで、頑張って作ってきた作品が摘発されたことへの怒りがあったのが読み取れたと。それが本作を作っていく起爆剤になったということが雑誌なんかで書かれていました。わたしだけの問題ではなくて、みんなが熱いものを持っていたんです。
――熱いお気持ちはいまも。
田中:ありますよ。還暦も過ぎましたが、もうちょっと何かしゃべりたいなと思っていますね。やっとそう思えたんです。親の介護もしたりしていて、ちゃんと見送って、それも肩の荷が下りましたし。
初DVD化はタイミング的にもよかった。ちょうど私自身が前へ向き出した、外へ出ようと思ったタイミングで声をかけていただけたので。もう1回命をいただけたと思っています。当時のことを全く知らない人たちも、ぜひ観たままを感じ取ってください。そこに理屈や説明はいりません。
<TEXT&PHOTO/望月ふみ>
『恋の狩人・欲望』4月4日(火)DVDリリース
(C)1973 日活株式会社
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