2017-10-14
■[企業法務][知財]「高品質」神話の果てに。
連休中日に公表する、という王道の広報戦略で、ハレーションをできるだけ小さくしようとした努力もむなしく、燎原の炎のように燃え広がる一途になってしまっている神戸製鋼所の「品質データ改ざん」問題。
これまでの断片的なプレス発表や報道だけでは、全容をはかり知ることはできないし、そのうちに、第三者委員会の報告書等で原因究明も図られるだろうから、この件に特化して、軽々しく語ることは今は難しい。
ただ、日本の製造業の生産現場の生の姿に触れることも多い身としては、既に一部で語られているように、これを「神戸製鋼所」という会社特有の問題として片づけることには、大いに疑問を感じている。
これまで日本のメディアも有識者も、政治家も役人も、時には産業界の人間でさえ、「日本の工業製品は『品質』では世界のどこにも負けない」という神話を信じてきた。そして、今や生産規模では日本を追い越し、あるいは肉薄している新興国も「価格は安いが、品質はまだまだ」と嘲笑されることが多かった。
だが、ここ数年、日本のメーカーが直面しているのは、「価格では到底勝負できないから、品質を売りにするしかない」という現実。そして、その「品質」ですら、もはや前世紀やミレニアム前後の時代と同じレベルを保つことが難しくなっている、という現実だったのではなかろうか。
高コストを嫌う発注者から、利益が出るかどうかのギリギリの部分まで価格を削られ*1、それでいて、スペック的にはずば抜けたレベルで仕事を引き受ける。一方で、現場は、作業員の質・量の低下により、机上で示された納期や品質数値のレベルを保つこと自体、決して容易なことではなくなりつつある。
そういった悪いスパイラルに陥った結果が、まさに今回の問題、と考えると、どこの会社にも同様のリスクはあるというほかない。
そして、そのうちに他の分野でも半製品メーカーや、部品・素材メーカーから「調べてみたら実は・・・」という話が出てこないか、戦々恐々といったところだろう。
そして、今回の一件は、どんなに高度な開発力があっても、長年蓄積された生産管理ノウハウがあっても、結局、最終的に出荷する製品を作る過程をきちんとコントロールできなければ、製品の品質が保てない、という当たり前のことを世に晒してしまうことになった。
ここから、どこまで問題が拡大していくのかは分からないのだけれど、今必要なのは、日本の会社が「優れた品質」という自縛を解き放つこと、そして、既に「技術でも負けている」という現実を直視して、勢いのある国々から謙虚に学ぶこと。
巷ではいまだに根強い「技術を盗まれないように営業秘密保護法制を強化する」という発想が、もはや時代遅れのものになってしまっている、ということに良識ある人々が気付いた時、ようやく復活に向けた道程が始まる、と自分は思っている。
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