もちろん新幹線などセレブな乗り物には乗れないので社用車での移動だ。
20時ごろには撮り終えたが、宿をとるなど贅沢なことは言えないから日帰りである。
先輩が「疲れて寝たい」と言うので、帰りの運転手は運転歴(正確には免許取得から)3ヶ月の同僚となった。
同僚にできることはないか聞いてみたところ、寝ないために助手席で話し相手となって欲しい、と言われたので、助手席に乗車していた。
はじめは初心者の運転に心臓が慌ただしく鳴っていたが(免許を持っていないヤツが偉そうに申し訳ない)、慎重な安全運転をする人で、すっかり気が緩んでいた。
パンッ
爆発したような音が車の後方から聞こえてきたのは東北高速道に乗って、1時間ほど経ったころ。
何の音か分からずただただ驚いていた私たちなどお構いなしに、車は失速していく。
幸い走行車線(追い越し車線ではない方)を走っていたので、なんとか路肩に寄せた。
「ガス欠じゃねーか」
普段から運転する人には信じられないと思う。しかし、初心者(うち一人は免許すら持っていない)が運転に気を取られてしまい、ガソリンのランプが点灯していたことに気づかなかったのだ。
といわれた。
発煙筒はアクシデント発生地点よりも50m以上後方に置くよう指示されていたので、ガードレール沿いに走って置いた。
やるべきことはすべておこなった。あとは、JAFを待つのみである。
東北道路、日付が変わるころ。外気温はー1度。
日帰りの日中撮影だと思いコート1枚しか用意がなかった。寒さが染みる。
することがないので、ただ星を眺めていた。
ロケ中、道の駅でお土産として買った鮭とばを4人で貪りながら、救助を待った。
誰かの提案で、しりとりをすることになった。大人がしりとりをしたとき、何かのしばりがないと延々と続くのだと学んだ。そして、飽きるのだ。
時計を見た。まだ15分程度しか経っていない。寒空の下もう45分待つのは、非常にしんどい。
発煙筒が消えてきた。
カーブで止まってしまっている。発煙筒もない。ハザードの光も弱い。後ろから来る車にとって認識しにくい状況だ。
うつらうつらで運転している人がいたら……あらゆるネガティブな想像が頭のなかに浮かぶ。無理やりかき消す。
そうこうしているうちに、黄色いパトランプが見えた。高速道路の見回りをしている人たちだった。
我々の前で停車したので、ワケを話す。もしかして、助けてくれるかなと期待をしながら。
しかし、彼らにできることはないとのことで、あと30分くらい、JAFを待つしかないという。
鮭とばはもうなくなってしまった。冷たさのあまり手足の感覚がなくなる。震えが止まらない。
こんなことなら、残っている原稿持ってくればよかったなどと考えていたとき、JAFが到着した。
無事、ガソリンをある程度いれてもらい、最寄りのSAまで同行いただいた。
SAの自販機でホットコーヒーを買った。温かい飲み物がこんなに美味しいのかと感動したことは今でも覚えている。
停車要因がガス欠という、完全に自業自得な話なのだが、もし誰かの役にたてば幸い。
これガソリン代払いたくない先輩が仕組んでそう