とっても久しぶりの登場となりました「だめたもり」です。
店舗流通ネットで人事業務を担当しておりますので、店通-TENTSU-内では【飲食店の人材】にフォーカスしたコラムを掲載しております。過去の投稿はこちらをご覧ください。
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年間約3万6千店舗が出店し、そしてほぼ同数の店が退店していくと言われている飲食業界。その中には、いくつもの試練を乗り越え、繁盛店に上り詰めた店舗がたしかに存在します。
(出所:総務省「平成26年経済センサス基礎調査」をもとに算出)
『繁盛店に法則はあるのか』。それは飲食店経営者にとっては永遠のテーマかもしれません。出店したからには成功したい。お店を立ち上げた方なら誰もがそう思っていることでしょう。しかし『繁盛店』の地位にたどり着ける店舗はごく僅かです。
立地が良いこと。料理が美味しいこと。接客が良いこと。ターゲットを理解していること。…ポイントとなる要素は、挙げればきりがありません。
だめたもは長年飲食業界の採用活動に関わってきましたから、今回は“繁盛店の中の人”をテーマに筆を進めてみたいと思います。自分のお店の人材や自分自身について、振り返るきっかけになれば幸いです。
繁盛は一日にして成らず
最初は、一歩ずつ着実に繁盛店への道を辿ったお店の話です。
それは、銀座の和食屋さん。空中階に位置していながら、平日はほぼ満員で、直前予約ではほとんど席がとれないという繁盛店です。
しかし、このような立地にある店舗。当然最初から上手くいっていた訳ではありません。開店して2年強ですが、最初の1年はかなり苦労したそうです。割引もクーポンの発行もおこなわず、集客でやったことは少しのウェブ告知と店舗前でのチラシ配布だけ。
口コミで徐々に集客を増やしていったそうですが、その背景には、ミシュランで星を持つてんぷら屋店主のお墨付きをもらったこと。そして出色のサービスでお客様の心を掴んだことでしょう。ここでのサービスとはパフォーマンスではなく、お客様の琴線に触れる心遣いです。
私が醤油をこぼし、どうしようか迷っていたところ、女将がすぐにおしぼりとダスターをもってきて、さりげなく処理してくれました。一体どうやって気付いたのだろう。と顔を上げて辺りを見回してみると、カウンターにいた大将が、何ともいえない笑みを返してくれました。料理を作りつつ私の食べる様子を見ていてくれたのです。細かな気配りができる店だ…と感心しました。
また、このお店は調理師専門学校の理事長に『卒業生の店』として連れていってもらったので、挨拶と共に名刺交換をしました。すると、翌日にはサンキューレターが私の元に。メニューは月替わりコース中心ということもあって、新しい味を求めて翌月リピートしたところ、「だめたもさん来店されると思っていました」と笑顔で迎えてくれました。
完全に心が読まれていたように感じました。照れくささ半分、うれしさ半分。今ではすっかりだめたもの『人に教えたくないお店』の1つです。
知識で味を楽しむ
次は、銀座の鉄板焼き店のお話です。
以前のだめたもは、『料理の美味しさ=経験・勘・センス』が基本だと思っていました。しかし、この店の調理師である1人の女性に出会ってから、考え方がガラリと変わりました。
彼女は、料理提供の際に「なぜこの料理はおいしいのか?」を論理的に説明してくれるのです。季節や瑞々しさ、産地や飼育された飼料、使用する部位など、食材の特徴を理解することで、火を入れる時間や強火、弱火を使い分けるといいます。
更に旬によっても調理法が変わることも頭に入れているそうです。それは経験でしか補えない情報で、蓄えた知識と自分の経験を組み合わせることが、"おいしいもの作り"につながっていくとおっしゃっていました。
「何故そんな考えに至ったのか?」単純に疑問に思い彼女に質問をすると、『同じレシピ、同じ調理器具や調味料を使って調理しても、味に差がでることに疑問をもったところから』とのことでした。
多くの人が体験したことがある「レシピ通りに作ったのに味が違う」という疑問に対し、「経験が足りないからだ」「センスがないからだ」と片付けてしまわずに、答えを追及するストイックさこそが、彼女にしかできない味を実現させ、繁盛店の道を切り開いたのでしょう。
彼女とのやりとりは食に関する興味を喚起させてくれます。料理に関連するあらゆるものを掘り下げ、探っていった結果、全ての味に根拠を持っているからです。また、おいしいもの・まずいものをどう体験したかも重要で、その蓄積が知恵の引出し作りになったそうです。
なにやら大変苦労した感があるのですが、本人は『美味しいもの作り探訪の旅のようですよ』と笑っていました。こちらが料理に興味あることを悟っての応答だったのですが、“味”な会話ができる調理師に感動しました。
まとめ
『食』を提供する飲食店ですから、当然、おいしさこそが繁盛店への道だと思っています。しかし、今回紹介した2店舗はおいしい料理を作るための基礎や基本がしっかりしており、さらにサービスと一言では片付けられない"ヒト"の魅力がはっきりと出ています。"ヒト"の魅力がお客様の感動を呼びます。想いを込めてひと手間かければお客様を呼び、省けばお客様を失う…。その位重要だと思っており、いわば繁盛店の法則だと思います。感動する料理との出会いは心が満たされます。リッチな気分になれるおいしい料理探訪は口福への追求であるかも知れませんね。
自分のお店を繁盛店に育て上げるためには、今一度「自分の食に対する想い」と向き合ってみても良いかもしれません。
だめたもり
【この記事を書いた人】
だめたもり
採用から逃げられない宿命を背負って云十年。未だに悩み尽きず、まだまだ成長できるかも。
いつまでも挑戦していきたい。
ちょっとした自慢、ホノルルマラソン2度途中棄権。一度は救急車で医務室直行。何しにハワイまで行ったのか。でもこういう経験が人生をもっと楽しくさせる。
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