“過剰適応国家”は短命、ゆとりこそ長命の秘訣

「あそび」のなさが破滅を呼ぶ

2017年10月19日(木)

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「ゆとり」は悪ではない

 歴史を学ぶことで様々な真理が理解できるようになり、それが人生を豊かにする源となりますが、今回のコラムでは「ゆとり」について見ていくことにします。

 「ゆとり」といえば、近年「ゆとり教育」の弊害が表面化して社会問題となりましたが、じつのところ「ゆとり」自体は企業にも社会にも国家にも必要不可欠なものであって、それ自体が「悪」というわけではありません。

 もっとも、物事には“適度”というものがあり、「ゆとり教育」はそこのところを履き違えた感は否めませんが…。

1998年改定(2002年度以降実施)の学習指導要領で教育を受けた「ゆとり世代」は、年長者からひとくくりに批判されがちだが、「ゆとり」自体は必要不可欠なものだ。

「ゆとり」なき覇権国家の末路

 たとえば、歴史を紐解けば、その時代その時代を代表するような“覇権国家”というものがあります。古代ヨーロッパなら「ローマ帝国」、中世西アジアでは「イスラーム帝国」、近代では「大英帝国」、20世紀であれば「アメリカ合衆国」。

 しかし、どれほどその時代に覇を唱え、我が世の春を謳歌しようとも、これらの国がその栄華を長つづきさせることはできません。詳しくは拙著『覇権で読み解けば世界史がわかる』(祥伝社)に譲りますが、「覇権国家」になるためにはひとつの“絶対条件”があるためです。

 この“条件”を満たした国家だけが覇権国家たり得ますが、その“条件”自体が永続できない理由となります。その条件とは、「その時代の特性に国家体制を特化させ、ぴったりとマッチさせる」こと。

 歴史を振り返ると、それぞれの時代により社会的な特徴があります。

 たとえばヨーロッパ史を紐解いてみると、中世なら封建体制が浸透して、土地所有者が絶対的な権力を振るった時代。

 近世に入ると、商業資本家が発展して王権が絶対的な権力を振るった時代。

 近代に入ると、産業資本家が発展して議会主権が浸透した時代。

 そして19世紀に入ると、金融資本家が発展して行政府が実権を握り、無制限に軍事力がモノを言った時代。

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「“過剰適応国家”は短命、ゆとりこそ長命の秘訣」の著者

神野 正史

神野 正史(じんの・まさふみ)

予備校世界史トップ講師

予備校世界史トップ講師、世界史ドットコム主宰、歴史エヴァンジェリスト。誰にでも分かるように立体的に、世界の歴史を視覚化する真摯な講義は、毎年受講生から支持されている。近年はテレビや講演会でも活躍。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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