こんにちはユレオです。
世の中には時間をテーマにした漫画や映画作品がたくさんあり、時間という不思議な現象をコントロール出来ればどうなるのかという想像を掻き立てられます。
時間を巻き戻し過去に行ったり、時間を進めて未来に行くという「タイムワープ」や、時間を何度も繰り返すと「タイプリープ」というものをテーマにした作品が多くありますが、本日ご紹介する漫画は時が止まった世界である「タイムストップ」をテーマにした漫画です。
タイトル:刻刻
作者 :堀尾省太
連載期間:2008年~2014年
巻数 :全8巻
表紙からはどんな内容の漫画かは想像がつきませんが、時間をテーマにしているのでタイトルロゴがデジタル時計の表記デザインになっています。
【この記事の目次】
[表示]
スポンサーリンク
漫画「刻刻」のあらすじ
この漫画は「時が止まった世界」で繰り広げられる「時を止める力」を巡る奪い合いの物語です。
主人公の佑河樹里は幼少の頃に飼い犬が寿命を迎えた事に対して受け入れることが出来ずにいたところ、祖父が「止界術」と呼ばれる力を使い、樹里と「止界」という時が止まった世界に入ります。
「止界」は時が止まった世界なので、永遠に飼い犬は死を迎えることはありませんが、時が止まっているので飼い犬は動くことは無く、祖父の説得もあり樹里は飼い犬の死を受け入れることができました。
そうした「止界」での不思議な出来事は祖父により全て夢だと思い込まされ、そして時は過ぎます。
大人になり就職活動に追われるようになった樹里は祖父と両親と兄と妹と妹の甥の大家族で平凡な生活を送っていましたが、ある日兄が幼稚園に甥を迎えに行ったところ、誘拐事件に巻き込まれて二人とも誘拐されることになります。
犯人は身代金500万円を要求して受け渡し時間までに来なければ人質を殺すと伝えます。
受け渡し時刻まで30分もなく、間に合わない事を悟った樹里は誘拐犯と刺し違える覚悟で二人を助けに行こうと身代金の受け渡し場所に向かおうとしますが、それを見ていた祖父が樹里を止めて、居間に置物として扱われていた「止界術の石」に手を置き「止界術」を発動させて、祖父と父と樹里の3人で時が止まった世界である「止界」に入ります。
「止界」に入った父と樹里は時が止まり全てが静止した世界に驚き慄きますが、樹里は幼少の頃に飼い犬との別れ際に見た夢が現実であったことを思い出しました。
3人は誘拐犯との身代金の受け渡し場所に向かい、兄と甥を救出しようと誘拐犯たちがいる部屋に入ります。
時が止まった世界なので犯人たちも兄と甥も静止しており、そのまま二人を運んで帰ろうとしたところ、「止界」に自分たち3人以外に動いている複数の人間が現れます。
時が止まった世界で当然のように動いている彼らは「止界術」を崇める「真純実愛会」という宗教団体で、「止界術」を熟知しており佑河家にある「止界術の石」を手に入れる為に誘拐犯を雇い、受け渡し時間に余裕を与えず「止界術」を使わせて石の在りかを探っていました。
祖父と父と樹里の3人は「真純実愛会」の罠にはまり、「止界術の石」の在りかを知られることになります。
止界術の石を巡り「真純実愛会」との戦いが「止界」で繰り広げられます。
漫画「刻刻」の見どころ
この漫画は堀尾省太のデビュー作で漫画家の水木しげるや小説家の伊坂幸太郎が賛辞を送っていることや、マンガ大賞2011ノミネート作品であることなど非常に高い評価を受けています。
単行本第1巻の帯では水木しげるが80点(同氏の近年最高点)と点数を付け賛辞を送っている。また、第2巻の帯では小説家の伊坂幸太郎が「最近、『何か面白い漫画ありますか?』と質問されると、まっさきにこの作品のことを口にします」とコメントしている。
時が止まった世界の表現がすばらしい
この漫画は「時を止める力」と「時が止まった世界」を巡り奪い合いを行うSF漫画なのですが、この特殊な時が止まった世界の表現がとても素晴らしく、日常の1シーンを切り出したかのように描かれています。
作中で止めた時間帯が夕方の日が沈む直前で、変化が一番大きな時間帯で静止しているということもあり、物語を通してずっと夕方が続くことで「時が静止した世界」を強く意識させられます。
特に水に関する描写が面白く、樹里が顔を洗うために公園の噴水設備の溜水を両手ですくうと、その部分が水面から掘り起こされて穴が開いたままになります。
また煙草を吸おうとしてライターに火をつけようとしても時が止まった世界ではガスが噴出せず化学反応が起きず着火することはなく、「時が止った世界」というものを生活に身近な物や現象で分かりやすく表現されています。
時間を止める「タイムストップ」をテーマにした映画や漫画は世にたくさんありますが、この「刻刻」での「時が静止した世界」の表現は非常に細かく描写されており、リアルに感じることが出来ます。
スポンサーリンク
時が止まった世界のルールと制約
祖父を始め佑河家の血筋には「止界」で使うことが出来る特殊な力があり、祖父は5~10mと短い距離ですが瞬間移動が使えて、樹里は「止界」で自由に行動できる者から「時が止まった世界に”戻す”」ことができる特殊能力を持ち、こうした能力を使い止界術を熟知した「真純実愛会」と戦います。
「止界術」を巡り争う中で「止界」に関する秘密やルールが次第に明らかになり、その中でも大きなルールは「時が止まった人」に殺意を向ることで「管理人」と呼ばれる奇怪な怪物がどこからともなく現れ、ルールを犯そうとする者に容赦なく制裁を加えます。
「止界術」は誰がどういった目的で作ったのか?「管理人」は何者なのか?そういった謎が読者を物語へと引きずり込みます。
2018年1月よりアニメ放送開始
「刻刻」は2018年1月よりアニメ放送が始まり、インターネットではAmazonプライム・ビデオにて独占配信予定となっており個人的にかなり期待しています。
漫画では夕焼けの世界が白と黒と陰影のみで描写されていましたが、アニメはカラーなのでまた違った印象を受けます。
「モーニング・ツー」にて連載されていた堀尾氏によるタイムストップSF「刻刻」。監督は「ギャラクシーエンジェル」の大橋誉志光、シリーズ構成は木村暢、キャラクター原案は梅津泰臣、アニメーションキャラクターデザイン・総作画監督は「HUNTER×HUNTER」「神撃のバハムート」「牙狼」などの日向正樹が担当。そして、主題歌は「MIYAVI vs KenKen」による「Flashback」に決定した。
また、メインキャラクターの声を担当する声優陣も決定。本作の主人公・佑河樹里役を務めるのは、「クズの本懐」の安済知佳。そして瀬戸麻沙美(間島翔子役)、山路和弘(じいさん役)、郷田ほづみ(佐河順治役)。そのほか、辻谷耕史、野島裕史、岩田龍門、内田夕夜、吉野裕行が出演する。
なお、アニメ公式Webサイトもオープンし、主題歌もいち早く聴くことができるPV第1弾が公開されている。
最後に
非常にまとまりが良く完結した漫画で、最後まで間延びすることなくテンポよく楽しむことが出来ます。
派手な戦闘やアクションや超能力バトルのような展開もない為、この手のSF漫画の中ではかなり地味な印象を受けますが、そういった演出が時が止まった世界という「非日常な空間」でのリアリティを生み出すようにも思えました。
週末の一気読みには最適な巻数ですので、是非とも読んでみてください。