認知症は高齢者の15%? - 地域医療日誌 につづきます。
フラミンガムから
米国の有名なコホート研究 Framingham Heart Study(1948年から調査が開始され、現在も継続中)から、2016年に認知症に関するひとつの興味深い研究が発表されています。
コホート研究(Satizabal, 2016年) *1
研究の概要
フラミンガム研究に参加している60歳以上の地域住民について、10年ごとの自然経過を観察すると、認知症発症率 *2 は多くなっているのか、を検討した予後に関するコホート研究。
主な結果
60歳以上の地域住民、5205人が対象。認知症発症は371人(うちアルツハイマー病 264人、血管性認知症 84人)。
5年ごとの年齢、性別で調整した認知症発症の累積ハザード比
1970年後半から1980年前半 3.6/100人(1)
1980年後半から1990年前半 2.8/100人(0.78)
1990年後半から2000年前半 2.2/100人(0.62)
2000年後半から2010年前半 2.0/100人(0.56)
年齢調整では認知症は少なくなっていた
年齢・性別調整した認知症発症数は、10年ごとに減少しつつあることが明らかとなりました。
このようなリスク低下は、最終学歴が高校卒業以上に限って有意に認められましたが、心血管リスク低下だけでは説明がつかず、このような傾向となった原因については特定されていません。
日本の傾向はどうなっているかわかりません。しかし、この大規模コホート研究の結果から、少なくとも年齢・性別調整では認知症が時代とともに多くなっていることはなく、むしろ少なくなっている、という結果となります。
もちろん、年齢調整発症数が少なくなっているとはいえ、対象となる高齢者が増加すれば、認知症発症の実数は大きくなるはずです。
日本の実態を把握できるデータも、検討してみたいところです。
*1:Satizabal CL, Beiser AS, Chouraki V, Chêne G, Dufouil C, Seshadri S. Incidence of Dementia over Three Decades in the Framingham Heart Study. N Engl J Med. 2016 Feb 11;374(6):523-32. doi: 10.1056/NEJMoa1504327. PubMed PMID: 26863354; PubMed Central PMCID: PMC4943081.
*2:Cox proportional-hazards models adjusted for age and sex to determine the 5-year incidence of dementia during each of four epochs.