3 Lines Summary
- ・導入済みのパネルを使う電子投票は集計が圧倒的に早い
- ・ネット投票で投票率があがり政治が全く変わる可能性がある
- ・ネット投票の最大の問題点は「投票の秘密が保護できるか否か」
今週末に投票が行われる衆議院選挙。
選挙に関する「なぜ?」「どうして?」に、政治取材を長年続けてきたフジテレビ解説委員が座談会形式で解説する。
第二回は「どうしてネット投票って始まらないの?」
今の時代、スマートフォンやパソコンで投票をしても良いと思う人もいるのではないか。
始まらない理由は何なのだろうか。
ネット投票に高齢者は抵抗がある
岡野俊輔:
ネット投票っていうのはスマホでどこでも投票出来るっていう形のこと?
平井文夫:
それは最終型なんだけど、今はタッチパネル式の電子投票をやっているところがあります。
使っている理由は集計が早いから。
そのスピードは全然違いますよ、圧倒的に。
20時の時点で当選がわかりますから。
山本周:
埼玉でもやってましたよね。
平井:
それだと20時にパンっと結果が出るじゃないですか、ネットを利用してるので。
最終形はスマホとかで投票出来るのが良いと思うんですけど。
岡野:
電子投票は昔からありましたもんね。
平井:
政治評論家の宮川隆義さんが昔から言ってましたよね。
反町理:
選挙予想をよくやっていた宮川さんですね。
ネット投票が出来ないのはやはり個人認証の問題じゃないですか?
岡野:
電子投票の時に問題になったのは“検証が出来ない”っていう話でしたね。
紙に書く場合だと、何かあった場合に立会人が「これは違いませんか?」と言ったりできるじゃないですか。
でもネット投票だと、何時から何時の間に何人来て、その人数と投票した人数が一緒かどうかとか、そういう検証ができないんです。
紙の投票の場合はそういう検証ができるという風に言われていました。
平井:
セーフティーネットが理論上はできてるんだけど、電子の方に踏み切るのが怖いんじゃないですか?
アナログのほうがミスが無いというか。
山本:
昔埼玉の方で実験として電子投票を導入した時に、集計はどうしたかというと、フロッピーディスクにいれて車で運んだんですよね。
インターネットは危ないからという理由で使わないの。
平井:
でもやはり、紙よりはいくらか早いですよね。
反町:
手で開くよりは全然早いですよ。
小林泰一郎:
でもわかんないですよ。
例えば国会の投票だって、参議院はボタン式でやってるけど、衆議院は手を上げなきゃだめじゃないですか?
要するに政治っていうのは政(まつりごと)なんですよ。
儀式みたいなものだから、どうしても抵抗感のある人が特に高齢の方たちにあるわけですよ。
ピピっとやるというのは、危ないんじゃないかと。
「どこかにハッカーっていうのがいるみたい」とか、そういう気持ちがやっぱり大きいと思います。
その考え方が変わらないとダメだと思いますね。
あと、本当にみんな自宅でネットで投票すればやればいいっていうふうになっちゃうと、もしかすると政治自体が全く代わってしまうかもしれないですね。
最大の問題点は投票の秘密の保護
平井:
エストニアはネット投票やってるんですよね。
日本みたいに人口が1億人を超えてるような国はなかなか出来ないんだけど、ヨーロッパでそういうのが進んで、じゃあ私の国もって広がれば、日本人も真似をして、じゃあ日本でもやるかってなるんじゃないですか?
反町:
シンガポールとかってやらないんですか?
ああいうIT先進国だったらやれると思いますけどね。
“投票所に行く”というコストをかける事が民主主義なんだって言う人もいますよね。
それは違います。
投票所に行けない人には投票する権利がないのかっていうそういう話になってしまいますから。
特別養護老人ホームに車で迎えに行って、みんなを乗せて「はい◯◯さんって書くんですよ」って言われて書く、というように投票所に行けるからそれが投票なのかっていったら違いますからね。
それだったら投票所に行けるか行けないかというコストよりも、投票する意思があったら、そういう人はだれでも投票出来るようにするべきだっていう制度的な話だと思います。
だから個人認証の話とかコストの話とかは違うと思いますよ。
小林:
インドでは投票は動物とかの印でやるんですよね、字をかけない人が多いから。
やはりそれぞれの国の伝統などによって選挙って違うんだけど、選挙って言うものがどういうものなのか。
日本の伝統の場合は字を書きたいんじゃないんですか?
岡野:
投票用紙に人の名前をですね。
山本:
一番最初の頃の選挙って、投票する時に候補者の名前を筆で書いて、書き間違ったらアウトだったんですよ。
岡野:
え?書き間違いなしなの?
山本:
そうだったんです(笑)。
平井:
ネット投票にしたら、投票にこれまで行かない人が行くわけだから、絶対に導入したくない党もあるでしょうね。
小林:
それは間違いないですね。
岡野:
政治的にはそうかもしれないですね。
反町:
ネット投票で投票率が激上がりしたら変わりますもんね。
岡野:
ただ、ネット投票の最大の問題点っていうのは、投票の秘密が保護されないことですよ。
だって例えば組合の人をみんな集めて、「じゃあ今からみんなで投票するから」って言って投票終わったら確認するっていうのができちゃう。
逆に電子投票ならできるかなっていうのは、電子投票は投票所に行って投票する所を見られないようにできるからなんです。
ネット投票で、いつでもどこでも投票できるという風にやると、投票の秘密が保護されないっていうところがクリア出来ないとむずかしいんじゃないかなと思います。