NTTドコモが2017年冬~2018年春モデルを発表した。中でもひときわ異彩を放っているのが、2つのディスプレイを搭載した「M Z-01K」だ。2画面スマホといえば、同社が2013年4月に発売した「MEDIAS W N-05E」以来だが、この機種を開発したNECカシオモバイルコミュニケーションズはスマートフォン事業からは撤退しており、後継機も登場していなかった。
ドコモだけでなく、国内の3キャリア全般、さらには世界を見渡しても、MEDIAS Wのようなギミックの凝ったスマートフォン(いわゆる“変態端末”)は、ほとんど見かけなくなった。そんな中で登場したMはドコモが主導で企画し、メーカーのZTEと共同で開発。AT&TやVodafoneなど海外キャリアへの売り込みも行っている。なぜ、ドコモはここまで強い思いで2画面スマホを再び投入することを決めたのか。10月18日の発表会で、Mの企画担当者に話を聞いた。
まず、MEDIAS Wは非常にチャレンジングな商品だったが、振り返ると「(投入が)早すぎた」というのがドコモの評価だ。MEDIAS WのOSはAndroid 4.1で、OSとしてマルチウィンドウに対応していなかった。「チップセットも非力で、マルチタスクで使えるアプリが3~4つしかなかった」(担当者)ため、2画面のメリットを最大限生かせなかった。「結果として販売も限定的になってしまった」(同)。
一方、MEDIAS Wの発売から4年以上たった今は、プロセッサが進化し、「有り余るパフォーマンスをどう生かすか」という逆の状況になった。さらに、Android 7.0からOS標準でマルチウィンドウに対応し、OSの障壁がなくなった。スマートフォンのデザインが似通ってきているという状況も重なり、新しいライフスタイルを提案するいいタイミングだと判断した。
Mで特に訴求したいのがマルチタスクだという。Mではマルチウィンドウに対応したアプリなら、1画面ずつ表示して2画面で楽しめる。2つのディスプレイを活用することで、YouTubeを見ながらSNSをしたり、マップを見ながらLINEで連絡を取ったり、といったことがスムーズに行える。
ただ、Android 7.0以上のスマートフォンなら、他のスマートフォンでもマルチウィンドウを利用できるし、最近は5.5型~6型という比較的大きなディスプレイを搭載するモデルが増えている。それでも「1つの画面を2分割するのはすごく意欲的だけど、正直、ほとんど使われていない」という。スマホの画面が大きくなったとはいえ、それを2つに割ると、当然ながら1画面は小さくなってしまうためだ。
物理的に2つのディスプレイを搭載しているスマートフォンなら、より積極的にマルチウィンドウを活用してもらえるはず――。こうしたドコモの考えは「Googleも大歓迎だった」そうで、「Google本社のテクノロジーチームと2年がかりで話し合いを続けてきた」という。
アプリ開発の障壁がなくなったのも朗報だ。OSがマルチウィンドウに対応していなかったMEDIAS Wでは2画面用にアプリを作り込む必要があったが、Android 7.0から2画面用のアプリを開発するAPIを標準でサポートしているため、M用にアプリを作り込む必要はない。
海外のキャリアも違ったカタチのスマートフォンを出したいという要望を持っていたことが分かったため、海外展開も積極的に進める。担当者は「ドコモが日本だけのためにガラケー電話を作ったわけではない」と胸を張る。
「変態端末」と呼ぶ声も聞こえるように、現在のところMは珍しいカタチのスマホだが、数年後には、かつての折りたたみケータイのように、2画面スマホが新しいスタンダードになる可能性を秘めている。
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