「巨影都市」インタビュー。BNE 塚中健介氏とグランゼーラ 九条一馬氏に聞く,“すごく変わったゲーム”はいかにして生まれたのか
特撮作品やアニメーション作品のキャラクターが次々に登場するとはいえ,あくまでも主人公は一般人。当然,目の前に巨影が現れたら,逃げるしかない。
さまざまなキャラクターのキャスティングを実現しつつ,それらを主役に据えないという贅沢さが気になってしまう「巨影都市」。いったい,どのようにして開発が行われたのか。今回,4Gamerではプロデューサーを務める塚中健介氏,ディレクターの九条一馬氏にインタビューを行う機会を得たので,そのあたりをじっくりと聞いてきた。
「巨影都市」公式サイト
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
「巨影都市」が発表されたのは,2015年9月の東京ゲームショウでした(関連記事)。そこから2年後の発売となりましたが,開発期間を振り返っていただけますか。
塚中氏:
開発には長くかかりましたが,当初の予定よりもボリュームが増えたとか,何かに大きく躓いたとか,そういった原因があったわけではないですね。
リリースに向けて開発体制を盤石に整えていく中で,いろいろ時間がかかったのは事実です。ただ,開発中にコンセプトやゲームの内容が変わったりはしていません。
九条氏:
ええ,ゲームの内容が変更になったり,何かができなくなったりしたということもなく。本当に,これだけの期間が「巨影都市」の完成に必要だったんです。
塚中氏:
ただ,当初はPlayStation Vita版の発売も予定していましたが,PlayStation 4版に軸足を置きたいということで対応機種を変更いたしました。
4Gamer:
発表の時点では,どのくらいの発売時期を想定されていましたか。
塚中氏:
2015年当時,どこかのタイミングを考えていたということはないですね。あくまで「巨大な影が人々を脅威に陥れていく」というコンセプトのみに絞って発表しました。まずは「バンダイナムコエンターテインメントとグランゼーラのタッグで新しいプロジェクトを始める」ということをしっかりと告知したかったからです。
「さまざまなキャラクターが巨影として登場するゲーム」であることをアピールしてしまうと,どうしてもキャラクターに目線が集まります。そこで「あのキャラクターを操作するゲーム」「あのキャラクターが活躍するゲーム」という受け取られ方をすると,「巨影都市」のコンセプトとの齟齬が出てしまう。それは避けたいと思っていました。
4Gamer:
正式発表前にはファンタジー風のイラストをあしらったティザーサイトが公開されていました(関連記事)。
塚中氏:
そうでしたね。2015年の年末に公開したティザーPVでも冒頭はファンタジー風のイラストが出ていて,そこからカメラを引いていくと街頭ビジョンに表示された映像だったと分かる。PV内に登場するキャラクターも黒く塗りつぶされた状態でした。
今だから明かせますが,ステージ01の街中にある街頭ビジョンをティザーPVに登場させていたんです。
4Gamer:
発表時点で「3年間の準備期間があった」とアナウンスされていましたが,全体としては5年近く動いているプロジェクトになるのでしょうか。
九条氏:
塚中さんから最初に話をいただいたのは8年くらい前ですね。私がグランゼーラを設立する前,アイレムソフトウェアエンジニアリングにいたときです。
当時,巨影都市の前身となる企画をアイレムさんと進めていましたが,プロジェクトとして正式には成立しませんでした。その後,グランゼーラさんが設立されたので,再度お話を持ちかけた。それが5年前になります。
九条氏:
ただ,5年間,ずっと「巨影都市」を作り続けたというわけではないですよ。企画を詰めているだけで半年経ちましたし。
塚中氏:
丁寧に構想を練ったり,準備を整えたりといろいろやっていました。グランゼーラさんが本作を開発するための体制を作るところからのお付き合いです。
九条氏:
グランゼーラは当初,PlayStation Home用のコンテンツをメインに作っていたので,そこから開発の準備をするだけでも,1年くらいはかかっていると思います。
「巨影都市」のコンセプト
4Gamer:
プロジェクト発足当時から,「巨影都市」のコンセプトに変わりはないのでしょうか。
九条氏:
そうですね。主人公は一般市民で,ステージ単位の構成になっていて,次々と巨影が現れる,という設定は変わっていません。
塚中氏:
コンセプトはずっと一貫しています。もっとドラマチックに九条さんと揉めたとか,それが原因で一度は開発中止になったとかのエピソードがあったら,記事にしやすいかもしれないですけど(笑)。
九条氏:
私達はオリジナルのゲームを自分達が思うように作ってきたというところがあって,原作がある作品を扱ったことはありませんでした。正直なところ,今回のプロジェクトが始まる前は「バンダイナムコさんが求める方向性とグランゼーラが作れるものとで乖離があるかも?」とは思っていました。
かなり思い切ったアイデアを事前の確認を取らずに仕込んでおいて,「見てもらって怒られたら,そこでどうするか考えよう」といったこともありましたし。
塚中氏:
「まず,これを見てください」と言われることは多かったです(笑)。
「今回の提出では,ちょっとやりたいようにやり過ぎたかな」と思うときでも,塚中さんからは「いや,いいんじゃないですか」と返ってきたりして。「なんだ,もっとやりたいようにやっても良かったのか」と(笑)。
塚中氏:
初めてのタッグだったので,最初のうちは互いに探りながらのところはあったかもしれないです。
九条氏:
ただ,「こちらが提案したものでNGが出ても納得いかなかった」というようなことはないですね。
塚中氏:
グランゼーラさんがゲームを作り,我々が作品をお借りしている版権元さまとお話していく。お互いの役割をしっかり認識できていたからこそ,開発において混乱したり,二度手間が起きたりしたことは無かったです。
4Gamer:
そうした登場作品のキャラクターが登場するにもかかわらず,それらを主役に据えないという贅沢な内容に驚かされました。
塚中氏:
アニメや特撮のキャラクターが好きな方をターゲットにするなら,例えばウルトラマンを操作したり,エヴァンゲリオンに乗ったりできるゲームも考えられると思います。「巨影都市」はそういった考えをしていないゲームになっていますからね(笑)。
九条氏:
原作キャラクターそのもののストーリーを主軸にせず,かと言って巨大ヒーローが次々に出てくるだけのダイジェスト的なゲームにするつもりもありませんでした。「原作とはまったく関係ない1本のストーリーを通します」という話を版権元さまにお伝えして,承諾をいただいています。
塚中氏:
主人公が一般人である以上,能動的に原作の本筋に絡んでいくのは違うだろうと。オリジナルストーリーを描くということは,必然だったと思います。
そこにグランゼーラさんの得意分野や持っているノウハウといった長所がマッチしたという感じです。
4Gamer:
グランゼーラと言えば,「絶体絶命都市」シリーズが連想されます。その存在は「巨影都市」のコンセプトや開発に影響を与えたのでしょうか。
塚中氏:
「『絶体絶命都市』を作ってほしい」といったオーダーをしたことは一度もないですね。「九条さんに新しいタイトルを作ってほしい」という部分が強かったので。
九条氏:
私も,似せようともあえて似せないようにしようとも考えませんでしたね。
塚中氏:
もちろん,「絶体絶命都市」シリーズのスタッフが携わっているゲームなので,ベースの部分で似ているところはあると思いますけれども,実際にプレイすれば違うゲームだと感じられるはずです。
「絶体絶命都市」は静的なゲームですが,「巨影都市」は動的なゲームなんですよ。
九条氏:
「絶体絶命都市」は何も起きないところがあったり,目に見えない脅威などの表現が多かったりしますが,「巨影都市」は脅威がちゃんと目に見えるところで存在している点が大きく違いますね。
昔,作った「バンピートロット」というロボットのゲームや「パチパラ」シリーズに収録していた「パチプロ風雲録」は,「絶体絶命都市」に似ている部分がありますが,それは物語や世界を表現するために共通の手法を用いたということです。
「巨影都市」もそういう表現手法に頼っていますが,完成したゲームは,また違った作品だと強く実感しています。
塚中氏:
「絶体絶命都市」シリーズには,それだからこそできる面白さやゲーム性があります。ただ,本作はグランゼーラさんと一緒に新しいアプローチで作ったタイトルなので,これはこれとして楽しんでいただけるとも思っています。
九条氏:
「絶体絶命都市」よりも取っ付きやすいと思いますよ。
次々と現れる巨影
4Gamer:
さまざまな作品のキャラクターが登場しますが,企画段階からラインナップは固まっていたのでしょうか。
塚中氏:
最初のうちはもっと多くの候補がありました。さまざまな作品の中から「ゲームで再現したいシチュエーション」を探した結果,今回の登場作品になったということです。
つまり「ガメラを出そう」ではなく,「『ガメラ2 レギオン襲来』のあのシチュエーションを再現したい」「そのシチュエーションで一市民を操作してインタラクティブに体験したい」から,『ガメラ2』のキャラクターをお借りしよう」ということです。
九条氏:
「ガメラ2」のソルジャーレギオンを出したい。なぜなら,こういう場面が作れるから,という考え方ですね。
塚中氏:
ウルトラマンとにせウルトラマンは,スケール差がある一般人の視点からすぐに違いが分かるのかって,やっぱり気になると思うんですよね(笑)。巨影都市にマッチしているシチュエーションがある作品だから,「『ウルトラマン』のキャラクターをお借りしよう」という流れです。
さらに「巨影都市」はステージ制のゲームなので,1本のストーリーに沿って並べたときに,それぞれのステージでどんな体験ができるか,ということも考えました。
九条氏:
ステージごとに変化を付けたかったんです。だから,にせウルトラマンだけでなく,人間と同じサイズのダダを出したい。「ウルトラマン」という括りではなく,「こういう場面でこういう怖さを出したいから,このキャラクターを出したい」という話を積み重ねて,キャラクターが揃っていった感じですね。
4Gamer:
それぞれの登場作品における設定は,どのくらいゲームに引き継がれているのでしょうか。
塚中氏:
原作の舞台や演出をそのまま登場させているところは一切ありません。逆に言うと,それをしてもしょうがないんですね。主人公は一般人なので,特車2課や科特隊などのキャラクターとすれ違うことはあるかもしれませんが,能動的に絡みにいくような狂言回しのポジションではないですから。
4Gamer:
あくまでも野次馬のような立ち位置ですね。
九条氏:
そうです。舞台となる都市も,現代の日本にありそうな雰囲気になっています。シチュエーションが似ている場面はあるけれども,原作と同じビルを再現しているということはない。原作では,にせウルトラマンがビルにぶつかって正体(ザラブ星人)を露わにしますが,「巨影都市」では歩道橋に尻餅をつきます。
塚中氏:
キャラクターの設定はしっかり守っていますが,演出という部分ではむしろきっちり再現しないようにしています。
九条氏:
先ほども言いましたが,原作のダイジェスト集を作るつもりはなかったですし,キャラクターの詳細な設定やデータも主人公の立場では知る由もないことなので,ゲームでは描かれません。
塚中氏:
あくまで一般人である主人公の視点でストーリーや登場人物達のドラマが展開し,そこに舞台装置のような形で巨影が脅威を振り撒いていきます。キャラクターの表現としては,かなり特殊ですよ。
九条氏:
贅沢な使い方ですね。
こういう切り口は特撮やアニメでも,よく描かれてきた部分だと思います。ただ,映像作品では,逃げ惑う人々,一人ひとりにフォーカスするのは難しいでしょう。その点,ゲームであればそれが可能だし,むしろゲームとの親和性が高いと着目しました。
特撮やアニメが好きな方であれば,こういう切り口のゲームを遊んでみたいと,誰もが考えるのではないでしょうか。だから,これは発明的な話というよりは,皆さんが夢見るものをゲームという形で表現したということではないかと思います。
九条氏:
実際,プレイヤーの立場であれば,選ばれしヒーローのウルトラマンより,一般人のほうが感情移入しやすいですよね。通勤通学の帰りに巨大な宇宙人に出くわして,どうしようと思っていたら銀色の巨人も出てきて……。プレイヤー自身と主人公を重ねてゲームを進められることには,十分にニーズがあると思っています。
映像作品なら作り手が用意したカットの角度でしか見られませんが,ゲームならば見たい方向を見られます。追われているときに一生懸命逃げてもいいし,振り返って巨影を見上げてもいい。でも,見上げている間にやられちゃうかもしれないというのは,ゲームだからできる表現です。
塚中氏:
本作のポジションとしては,3D空間におけるカメラの位置を俯瞰からあおりに変えてみた,という発想に近いですね。
九条氏:
それを試作したら,ものすごく新鮮で「これはいい!」と感じました。
塚中氏:
そうですね。ただ,実際にプロモーションを見てもらうまでは,どれだけの人に共感してもらえるか分からなかったのですが。
九条氏:
ええ,「変身したい!」と思われるかも……という懸念はありましたが,結果的に好意的な反響をいただいたので自信になりました。
4Gamer:
「皆,それが見たかった」といったところですね。
日本のどこかで繰り広げられるオリジナルストーリー
4Gamer:
PVでは巨影の至近距離まで接近していくシーンが確認できます。一般人にしてはものすごく危険な状況に置かれるようですね。
九条氏:
作っている側からすると,「何でこんなに危ないところに行かなきゃいけないの?」とも思いますが。危ない状況に飛び込んでくれたほうがゲームとしては面白いので,何かの理由をつけています。やっぱり,キングギドラの足下には行きたいじゃないですか(笑)。
塚中氏:
逃げるなら離れていけばいいだけですが,それではゲームとして美味しくないんですよ。
九条氏:
あえて危ないところに行ってもらうためには,ストーリーが必要。ということなので,エンターテイメントとしてはベーシックな作りだと思います。
塚中氏:
ヒロインに会いに行かなくてはいけないからって,あんな危険なところに飛び込まないで遠回りしようよっていう(笑)。
九条氏:
まあ,自分なら帰ります(笑)。
一応,「行きたくない」という意思もヒロインに伝えられるようになっています。「こんな状況でも,あなたは来いと言うのか?」みたいな。
塚中氏:
プレイヤーが抱くであろう素直な疑問を選択肢に託した形ですね。「ゲームだから」と言ってしまえば,そういうものなのかもしれないですけど。
九条氏:
「行きたくないけど,しょうがないから行ってやる」といった感じで,なるべくプレイしている人の気分を反映できるようにしました。
塚中氏:
「必然性を持たせたい」というほどではありませんが,自然に物語を受け入れてもらいたいですから,そういったところにも気を配りました。
巨大なキャラクターの足元を駆け抜けていくというゲームのアプローチに対して,オリジナルの部分がある種の緩衝材になっている部分もあります。
九条氏:
緩衝材でもあるし,さまざまなキャラクターの接着剤にもなっていますね。
4Gamer:
登場作品のうち,最後に発表されたのが「機動警察パトレイバー」でした。ほかのシリーズと並ぶと「現実寄りの設定」という点で異質に感じました。
九条氏:
レイバーは敵も味方も人間が操縦していますからね。
塚中氏:
エヴァンゲリオンも人間が操縦しているので,個人的には違和感はありません。
先ほど「再現したいシチュエーション」を探していったという話をしましたが,そこではタイトルにもある「都市」が1つのテーマになっていました。我々が生活する身近な場所に巨影が現れる。その脅威や恐怖を演出したかったので,都市との親和性が高い作品を選出しているんです。その意味でもパトレイバーは「巨影都市」のコンセプトにすごく馴染んだ作品だと思います。
九条氏:
異質というところでいえば,ステージごとの変化を付けたいという点でも必要だったのかもしれません。
4Gamer:
異質なものがあってこそ,ゲームとしてのバリエーションが増えるということですね。
九条氏:
ほかのキャラクターと違うからこそ変化が生まれます。比較的,レイバーが小さいとはいえ,主人公の視点からだと「イングラムは大きいんだ」とあらためて感じられます。
塚中氏:
約1.7メートルの人間に対して,イングラム1号機は8.02mですからね。
九条氏:
ちゃんとレイバーのスケール感というのは実感できますし,それに合ったシチュエーションも用意しています。
それぞれ異なるキャラクターのスケール感が一般人の視点で体験できるのが面白いところです。ステージ制のゲームとしては,それぞれに変化を付けていかないとプレイヤーに飽きられてしまうので,異質だと思っていただいたところは狙った部分でもあるんです。
4Gamer:
舞台になる都市は架空ですか。
塚中氏:
シチュエーションはさまざまですが,舞台は「日本のどこかにありそうな,とある都市」です。ゲームでは「宮都(みやと)県」と呼ばれています。
一般人である主人公達が暮らしている普通の街並みに,次々と巨影が現れる。その面白さを重視しているので,あえて原作の設定を再現しようとしていないんです。
九条氏:
主人公は運悪く,さまざまな巨影に遭遇してしまう。当然,一般人ですから,それがどこから来たのか,どこの組織に属しているのかをまったく知りません。
イングラムは例外的に警察だと分かりますが,どの機体に誰が乗っているのかまでは知る由もないですよね。アルフォンスに野明が乗っているのか,グリフォンにバドが乗っているのか,そこまでは表現していません。なぜなら一般人には知り得ない情報だからです。
塚中氏:
野明や太田がイングラムを操縦していて,付近の指揮車に後藤隊長や遊馬がいる。こうした情報を知っているのは原作を知っているプレイヤーであって,巨影都市の主人公ではないということです。
そのリアリティを追求するほうが,巨影都市のコンセプトに合っているという判断ですね。
4Gamer:
主人公は一般人ではありますが,非常に波乱万丈なようですね。
九条氏:
ひどい目に遭い過ぎです(笑)。
塚中氏:
主人公は本当に一般人ですが,とある現場を目撃してしまい,事件に巻き込まれてしまう。開発側の手の内を明かしてしまうと,そうした要素がないと巨影に対して,ただ逃げればいいことになるんですね。巨影から遠く離れて避難するのが最も安全で,ゴジラに近づくなんて危ないですから(笑)。
九条氏:
巨影はステージをまたいで主人公を追いかけてくる存在ではありません。巨影とは関係なく,その足元で登場人物達のドラマが展開していくという構造ですね。
4Gamer:
主人公に特別な能力が備わっていたり,追いかけてくる連中が巨影と関係していたりすることはないと。
塚中氏:
そういうことです。ただ,主人公が行く先々で,なぜか次々に巨影が現れる……。その理由は何でしょうね(笑)。
九条氏:
主人公を追う連中も「お前についていくと,いつも巨影に遭うんだけど?」と思っているでしょうね。
4Gamer:
気になる発言ですね。
ちなみにTGS出展バージョンでは,主人公から紫の光が放たれていましたが……。
九条氏:
緊急回避時のエフェクトですね。主人公に特別な能力があるから,そうなっているというものではないんですが,まったく物語に関係ないとも言い切れないというか……。
塚中氏:
ステージ01の冒頭,紫の閃光が走るシーンがありますが,それとは関係があるかもしれませんよ。
「細かく突っ込まないのが,華なんじゃないかなと(笑)」
4Gamer:
個人的な質問ですが,ゴジラやキングギドラがVSシリーズのデザインなのに対し,メカゴジラが「3式機龍」のデザインとなっている理由を教えてください。ファンの人気を考慮したのでしょうか。
九条氏:
いや,人気ではないですね。そこも完全に“シチュエーションありき”です。3式機龍が登場する“あの場面”を人間の視点で描きたい,だからこの選択になったということです。
塚中氏:
今回の作品に登場しないキャラクターは,意図して選ばなかったのではなく,ゲームに登場させたいシチュエーションに合わせてキャラクターを決めていった結果が,今のラインナップになったということです。
もちろん,ステージの構成や順序を考えていくうちに取捨選択も行っています。似ているシチュエーションが続く構成は避けて,さまざまな状況や脅威に遭遇することを重視して選んでいます。
九条氏:
ステージの構成を作っていく過程で,「ここではこういう要素があったほうがいいんじゃないか」と気づいて,新たなシチュエーションを用意したところもあります。
4Gamer:
なるほど。原作のシチュエーションを知っている人なら,それに遭遇したときにニヤリとできそうですね。
塚中氏:
そうでしょうね。登場作品が多岐にわたっているので,すべてを把握しているという人は極めて少ないと思いますが,知らないからといって,楽しめないということはありません。キャラクターは舞台装置的に扱っていますので,純粋に「サバイバル・アクションアドベンチャー」として楽しんでいただけるのではないかと思います。
おっしゃるとおり,原作を知っていれば「これ,あの場面だ!」と気づいてもらえると思います。逆に,原作を知らないほうが“得体のしれなさ”がありますから,新鮮な驚きは強くなるでしょう。
3式機龍が登場するシチュエーションにしても,その一場面だけを切り取ってゲームに落とし込んでいますから,3式機龍の“その後“が気になったら,ぜひ「ゴジラ×メカゴジラ」をチェックしてください。
塚中氏:
どのステージでも一貫して,原作のストーリーを結末まで描いていません。繰り返しになりますが,一般人の主人公が知るはずがないからです。
だからこそ,キャラクターの活躍や物語の結末が気になる人は,原作の映画やアニメを見てほしいですね。
九条氏:
ウルトラマンがザラブ星人を倒す場面が描かれるのは,ウルトラマンが主人公である作品だからですよね。しかし,そこから逃げなくてはいけない一般人にとっては,それどころじゃありません。
4Gamer:
確かにそうですね。
ところで,ウルトラマンベリアルが登場しますが,地球でのベリアルの戦いは原作でも明確には描かれていないシーンではないでしょうか。
九条氏:
鋭いですね(笑)。
塚中氏:
「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」のシチュエーションにヒントを得ているステージですね。
九条氏:
ウルトラヒーローが集結して,ウルトラマンベリアルと対峙する。宇宙で繰り広げられた豪華なシチュエーションが,一般人にはどう映るのかを描きたかったんです。
塚中氏:
ええ,こんな豪華なラインナップを前にして,逃げるしかない。贅沢な話ですよね(笑)。
4Gamer:
「原作同士のクロスオーバーはない」とのことですが,主人公が暮らす同じ世界にさまざまな巨影が現れるという設定になっているんですね。
塚中氏:
ことさら「同じ世界」であることを強調していませんが,そのように見える工夫をしています。
九条氏:
別々の作品が同時に現れることはないけれども,あたかも同じ世界でつながっているように感じられる。そこが「巨影都市」の新鮮なところだと思います。
塚中氏:
正直なところ,原作の設定の整合性を重視すると,現実に引き戻されると思うんですね。それよりも,ゲームとしての面白さや楽しさを優先しています。
九条氏:
細かく突っ込まないのが,華なんじゃないかなと(笑)。
いろいろなことを実現するうえで,落としどころを探って,1つのゲームとして形にする。何よりもそれを最優先しました。
とにかく「登場させたいもの」「見てほしいもの」「体験してほしいもの」を集めて,さまざまなシチュエーションを楽しんでもらう。そこに注力しています。
塚中氏:
設定を重視しようとすると,「巨影都市」のコンセプトではないところの説明や寄り道が増えてしまうんですね。プレイヤーには,巨影に怯えて逃げ惑ってほしい。それなのに,設定の説明のためにプレイアブルではない時間も増えてしまうと,この作品らしい体験が損なわれてしまうと判断しました。
4Gamer:
複数の選択肢を選んでいくスタイルですが,エンディングは1つでしょうか。
塚中氏:
そうです。結末としては1つです。ただ,エンディング中のキャラクターのリアクションが,それまでの行動によって変わります。
九条氏:
エンディングを迎えたときに,「あのとき,あれを選んだ甲斐があったな」と思えるようになっていますね。ちゃんと“自分の物語”として感じられると思います。
実は,これまでに自分が作ってきたゲームには「周回してほしい」という考えはなかったんですが,今回は違いますね。
4Gamer:
初回のプレイでは脅威に対して余裕がないので,見落としているシーンがありそうです。
九条氏:
それはあるでしょうね。
塚中氏:
最初は巨影に注目する余裕がないかもしれませんね。巨影にカメラ視点を固定するシステム(巨影カメラ)を用意していますが,進行方向ではないほうを見ることになれば,当然,逃げにくくなります。
九条氏:
巨影を常に捉えるサブ画面を表示させるアイデアもありましたが,すごく客観的な視点になるので冷めるんですね。演出上,第三者のカメラ視点はありますけども,なるべく主人公の立場から見えるものに絞っています。
4Gamer:
巨影は見たいけれど,逃げなきゃいけない。ファンならではのジレンマですね。
九条氏:
見たいものをはっきりと見せない。工夫して見てもらう形になっています。何というか,すごく変わったゲームだと思います(笑)。「変わったゲームを作ろう」「何かひねったゲームにしよう」と考えたわけではないですが,結果的にそうなりましたね。
4Gamer:
ステージにはサブイベントが用意されているそうですが,1回のゲームプレイですべて確認できるのでしょうか。
塚中氏:
初回のプレイでノーヒントであれば難しいでしょうね。ステージでサブイベントやアイテムを見つけると,リザルト画面のニュースサイトに反映されるのですが,これがコレクション要素になっています。コンプリートしようとすると,1回のプレイでは集まらないかもしれません。
九条氏:
主人公の性別を選べるので,周回プレイはおすすめですよ。
塚中氏:
周回する場合は,巨影の動きに注目したりステージを探索したりと,繰り返し遊んでもらえるバリューはあると思っています。
4Gamer:
お話を聞いてみて,ますます期待が膨らみました。発売の暁にはさっそく巨影から逃げまくりたいと思います。
本日はどうもありがとうございました。
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