なんでもない私の、ひとつひとつ。

5歳と2歳の男の子を育児中。夫のこと、息子たちのこと、趣味のこと、思いついたこと。どこにでもいる主婦の徒然。

使えない社畜だった、あの頃の私。

こんにちは。元社畜のりかです。

 

今から15年くらい前に、賃貸の不動産を管理する仕事をしていたことがあります。正確にいうと、アパートやマンションを作ったり補修工事をする工務店の中にある、不動産管理部に勤めていました。

 

今日、私が何を書きたかったのかというと、「私は社畜経験があるよ」ということです。

wikipediaによると社畜とは

会社に飼い慣らされてしまい自分の意思と良心を放棄し奴隷(家畜)と化した賃金労働者の状態を揶揄したもの。

そうそう。これ。私は、自分の意思と良心を放棄していました。

仕事ってこんなものなのかなぁ、と悩んだものです。

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仕事の内容はというと、賃貸借契約に関わる書類の作成、家賃が毎月支払われているかの確認、大家さんへの収支報告、部屋で起こる不具合の補修手配、解約清算とかそんな感じです。

こんな簡単な仕事そうなものに、どこに良心を捨てなくてはならないようなことがあるのか。って思うでしょうか。

 

家賃を滞納する人の水を止める作業で胃が痛くなる私

家賃が遅れる人は、自分が思うより世の中にはたくさんいました。その人達に、督促状を出すのも私の仕事の一つなのですが、督促状があったって払えない人は払えないんですよね。

2ヶ月分、家賃を払えない人には●月●日までに支払らわなければ、水を止めるよ!という赤文字の文を添えた督促状を送ります。この何日まで、というのは上司のさじ加減で決まります。3ヶ月になると錠前交換をして部屋に入れないようにしてしまいます。全て、本社にいる一人の女性が仕切っていました。

 

水を止めるといっても、私の会社は水道局ではありません。その頃の賃貸マンションは、親メータがあってマンションの水道料は一括して大家さんが支払っていました。そして、戸メータを管理会社が計測して各戸に按分して請求するんです。

ですから、各部屋の水道を止める方法は、ただ各部屋の水道のバルブを締めて、それを開けられないように鉄でできた器具で覆って外されないように南京錠をつけるというものでした。

 

その督促状を受け取った人は、電話をよこします。担当の私のところに。

「●日には支払えるから、待って!」

とかいうのは当たり前ですが、いろんな交渉がありました。

「お墓を売るからお金が入るまで待って。」→お墓を返還して、お金が戻るなんて聞いたことないけど。むしろ、お金がかかるんじゃ?これは、はったりのパターンです。

「年金を担保にお金を借りる手続きをしているから待って。」→そんなお金の借りかた、初めて聞いた!でも、そんな方法があるそうですよ。

「週末にフリマするから待って」→そんな入金が不確定な方法で交渉してくるのもすごいと思う。

 

私はそれらを、ダメです!って突っぱねることが、苦手でした。どの人も、水を止められたら困るのはわかります。自分で判断することは禁じられれいましたから、私はワンマン女性に電話をするんです。

「●日にこういう理由で支払えるそうですが、待ってもいいですか?」

ワンマン女性の機嫌がいいと、理由にもよりますが何日かは伸ばしてくれることもありました。

 

ある時、

「子供が生まれたばかりなんです。水を止められると困ります。」

と泣いた女性から電話がかかってきました。赤ちゃんの泣く声が聞こえます。私はこの家庭の水を止めるのできないと思いました。

上司に相談するためには、支払いの目処を話さなくてはなりません。

「いつまでなら払えますか?」

そういう私に、女性は

「わかりません。」

というばかり。

「それなら止めます。」

と言い切れなかった私は、赤ちゃんがいる家庭なのですが……とワンマン女性に相談しあました。想像していましたが

「ダメ。水止めて!」

の一点張りでした。水道を止める期限の日、私は会社にバイトできているおじいちゃんに水を止めてくるよう伝えました。その時に

「実は、赤ちゃん生まれたばかりだっていうんです。かわいそうなんですけど……。」

と伝えました。おじいちゃんは

「だめだ。俺には止めらんねぇわぁ。赤ちゃんの声聞こえてくるんだもんなぁ。」

と言って、何もせずに戻ってきました。私は困ってしまいました。本当に困りました。

こんなこと、ワンマン上司に言ったら怒られるし、かといって無理やり

「水止めてきてください!」

って私も言えない。困っていた私に、おじいちゃんが

「俺が、止められなかったってあの人に話すからぁ。」

と、女性に話をしました。ワンマン女性は、怒り狂いました。女性が自ら、別な人を手配して、水を止めました。私はおじいちゃんにどんな声をかけていいか、わかりませんでした。ただただ、胃が痛くなりました。

 

何が正しいのか、考えもしなかった若かりし頃の私

後から、水を止めることは法に違反していることを知りました。考えてみると当たり前なんです。命を繋ぐものですから。

私は何も考えずに、上司の命令に従いました。それでも、私は会社の中の「できない子」でした。

あのワンマン女性に怒鳴られてばかりいた自分を思い出し、今でも嫌な気分になります。

「あなたはどうして、滞納者に毅然とした態度が取れないのよ!話が毎度長引いて、こっちも困っています!!」

おっしゃる通りなんですが……。できなかったんだもの。

家賃を支払わない人にはさっさと家を出て行って欲しいと願う、上司や大家さんの気持ちだってわかるんですよ。ビジネスですから。

上司の言ってることもわかるんです。彼らにとって、大事なのはクライアントの大家さんであって、エンドユーザーの入居者はその次の次元でしたから。(それはそれでどうかと思うけど。)

 

そんな状況で、不動産について私は何も学んできませんでした。入居者への良心だけではビジネスが成り立たないのは知っていますが、今でも滞納者にはどう対応するのが正しいのか知りません。

毅然とした態度をとるには、自分の信念が必要だと思うのですが、私にはそれがありませんでした。

 

いろんなことがあったけど

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ブログに書くなら、まだまだたくさんエピソードはあります。

会社の前に人糞をされ続けた話や、居室として貸していたはずの部屋がアダルトDVDの撮影現場になっていた話(ピンクチラシの印刷場になっていたこともあった)、入居女性からしつこくかかってきた「あなたがスパイなのは知っている!」等の意味不明な電話、ヤクザだと自慢しているくせに保証人の親に連絡をするというと「とーちゃんには電話すんじゃねぇ」と激高する公務員の息子、隣の部屋の女性の下着を盗み続けた男子学生、部屋で命を絶った学生とパトカーや救急車に「変な噂が出ると入居者がいなくなるからマンションの目の前に車を停めるな」と言った一見優しそうな大家さん、水を止められても1階のコンビニでトイレや洗面を済ませた洋服やの女性……。

 

ずっと振り返りたくない過去でした。人生で一番「使えない人」扱いされた時期だったし、嫌いな仕事でした。

 

退職が決まったとき、たくさん電話をやりとりしていた滞納の常連さん達に担当が変わることを伝えました。

「あんたにはよくしてもらった。今までの担当の中で一番優しかった。あんたがいなくなったら本当に困るなぁ。涙が出てくるよ。今までありがとう。」

と言ってくれた、入居者がいました。

 

私は、あなたたち滞納者に甘かったお陰で仕事ができない人間だって怒られ続けたけどね!(でもちょっと嬉しかった)

 

社畜でいてはいけないよ。つまらないもの。

その後に働いたところは、どこも楽しかったです。この状況をよくするためにはどうしたらいいか、自分の意見を言うようになればおのずと勉強をするようになります。

誰かに期待されれば、頑張っちゃうものです。いつの間にか、できない私ではなくなっていました。

 

次に働いた会社には10年近くいました。気がつけば周りは皆年下ばかりでした。ミーティングで、それぞれの意見がぶつかりあったりすることがあります。

そんな時、あの会社では誰も意見をぶつけ合うことなんかなかったなぁ。って思うんです。

 

嬢王蜂と、何も考えられない働き蜂だった私。