デキる人は「他人は別の惑星の人だ」と考える

ドイツ人が、自分に誇りを持てるワケ

労働者の権利に重きを置いているドイツに学びます(写真:Rawpixel / PIXTA)
「ドイツ人に生産性の高め方を学ぶ」シリーズ記事の第3回。ドイツで通算20年のビジネス経験を持つ隅田貫氏(著書に『仕事の「生産性」はドイツ人に学べ』がある)が「ドイツ人の働く意識」を紹介します。

日本の銀行でドイツ支社に勤務していたときの話です。部下だったドイツ人女性から、彼女のミスでトラブルが起きているという報告を受けました。トラブルの内容は、彼女がある顧客との間で、ルールで定められている書面を交わさないままに仕事を進めてしまったということでした。

その報告を受けて、私は開口一番「なんでそんなことをしたの?」と言ってしまいました。すると彼女は、

「ミスター・スミタ、あなたの仕事は『なぜ?』と聞き返すことではない。事後処理にベストを尽くすのが、あなたの仕事だ」

と言い返してきたのです。

それだけでも「失敗した人間が何を言っているんだ」と思うところですが、さらに彼女は、「ミスター・スミタ、もう1つ言わせてもらうけど、私が今報告しなかったら、私がルール違反をしたことはわからなかったはず。私に対して、『報告してくれてありがとう』と感謝すべきだ」と続けました。

私はしばらく言葉を失ってしまいました。「なんて図々しいんだろう」と一瞬思いましたが、彼女の言い分は実に筋が通っています。これはとてもよい学びの機会になりました。

失敗したときは、まず報告してくれたことに感謝するくらいでないと、悪い報告は容易に上がってきません。それから対処法を考えてフォローする。それが終わった後で、なぜこういうことが起きたのかを議論し、分析をするというのがあるべき手順なのだと学びました。

それは決して責任逃れをしているわけではなく、すぐにリカバリーしたほうが問題を解決しやすいので、合理的な考え方といえます。

失敗したら「次はどうしたらいいか」

私が働いていたメッツラー社でも、誰かが失敗したとき、個人を非難したり犯人探しをしたりしません。

仕事がうまくいかないときは、上司は部下に「なぜできないんだ?」とできない理由を聞くのではなく、「できるようにするには何をしたらいいか?」を考えさせて議論します。

次ページ一方、日本人は…
関連記事
トピックボードAD
人気連載
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

  • NO NAME44fd47292271
    郷に入っては郷に従えという言葉があるように、
    それぞれの国、場所に合った、それぞれの良い特徴があると思う。
    ドイツの働き方をいきなり日本に持ってきたところで、
    生まれてからの育成環境からして異なるのだから馴染まない。

    とはいえ、日本の社会に馴染ませながらも、
    海外の考え方を取り入れてゆくことは、決して無駄ではないだろう。
    少なくとも同調圧力による過労死などは、未成熟な社会の弊害だと思う。

    個人と企業は同等に、責任と権利と自由のバランスを見直すべき時代であると考える。
    up62
    down1
    2017/10/18 09:41
  • 純日本人d4ccf45e2bcb
    ごもっともですが、何でも海外が優れているとは思わない。西欧圏の人は確かに失敗があった時に「原因」じゃなくて「対応」を考えるが、その失敗自体よく聞いてみると日本人だったら未然に防げるようなもので下らないことが多い(連絡ミスとか、担当者のたらい回しとか)。
    また個人主義がものすごく発達しているせいか、他人のやり方に口出しするのがタブーなのか、問題のあるやり方の人でも誰も直接に注意しないので、問題を起こしながらやっていける。周りは迷惑を被るが、致命傷にならない限り放置される、ので繰り返す。だから日本では起こり得ないような小さな凡ミスが次々に起こる、でも放置。
    それでも良いのかも知れない(日本は小さなことで目くじら立てすぎなのかも知れない)し、それがないからこそ、日本の品質は世界で評判なのかも知れない。どちらにも一長一短あると思います。
    up49
    down6
    2017/10/18 09:40
  • I am Japanese.ab16cfe0ca2a
    この手の記事にどう意見し、どうコメントすれば良いのか分からない。日本人として生きて来て、多少なり海外を知っていても私は日本人的発想から抜け出せていない気がしてならない。

    私から発信しようとする言葉や考え方が、ドイツやフランスなどの考え方には表面的にしか寄り添えていないように感じてならない。故に、こういう働き方や人生観について取り込んで変えようと思うものの、現実や根本的な何かが伴わずいつも挫折する。

    非常に素晴らしいとは思うものの、どうすればこの状況から脱却できるのか…。
    up31
    down6
    2017/10/18 09:09
  • すべてのコメントを読む
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • いいね!
トレンドウォッチAD
発電所のアキレス腱<br>盲点の火山灰リスク

「電力の大問題」最終回は火山灰がテーマ。地震や津波と比べて、社会インフラへの影響は見過ごされがちだったが、発電設備への被害が予想外に大きくなる可能性がわかった。