日経新聞は2017年9月27日に「金融庁が証拠金倍率(レバレッジ規制)を10倍以下に引き下げる検討に入った。」と報じました。このニュースについて詳しく解説していきます。
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FXレバレッジ規制10倍への報道
日本経済新聞 電子版
2017/9/27 18:45
FX証拠金倍率を引き下げ 10倍程度に、金融庁検討
リスク管理を懸念、最大25倍の規制見直し金融庁は外国為替証拠金取引(FX)の証拠金倍率(レバレッジ)を引き下げる検討に入った。現行の最大25倍から10倍程度に下げる案が有力だ。外国為替相場が急変動した際、個人投資家や金融機関が想定を超える損失を抱えるリスクが高まっていると判断した。国内の取引高は約5千兆円に上る一方、FX業者への規制は銀行などに比べ緩い面がある。規制見直しで日本発の市場混乱を防ぐ。
金融庁はFXの業界団体、金融先物取引業協会と規制見直しに向け協議を始めた。早ければ来年にも内閣府令を改正して実施する可能性がある。
この報道を受けて
この今度は、株式会社マネーパートナーズグループが「金融庁にこの報道を確認した。」というプレスリリースを発表しています。
株式会社マネーパートナーズグループ
本日の一部報道について
本日、日本経済新聞において、FX(外国為替証拠金取引)の証拠金倍率引き下げに関する報道がなされておりますが、金融庁に確認したところ以下のとおりでありましたのでお知らせします。
記
(1) 証拠金倍率引き下げについては、個人投資家保護や金融機関が想定外の損失を被るリスク等の観点から様々な議論があるのは事実である。
(2) 証拠金倍率の引き下げを行う場合は、業者や業界に働き掛けて意見を聞き、手順を踏んで行うものであり、金融庁が一方的に行うということはない。
つまり、
金融庁はレバレッジを下げようとしていた。
↓
日経新聞がそれをすっぱ抜いた。
↓
FX会社は株価が落ち、顧客からの問い合わせが増えて、慌てて確認した。
↓
金融庁は「いきなりはやりませんよ。確認してからやりますから安心してください。」と回答した。
ということです。
金融庁は何をしたいのか?
平成28年10月に発表されている「金融行政方針」ではこう書かれています。
金融庁は
①金融システムの安定/金融仲介機能の発揮
②利用者保護/利用者利便
③市場の公正性・透明性/活力を確保することにより、企業・経済の持続的成長と安定的な資産形成等による国民の厚生の増大を目指す
金融を取り巻く環境が急激に変化する中、市場メカニズムを適切に発揮させつつ、上記を実現するためには、以下の変革が必要
(1) 金融当局・金融行政運営の変革
Ⅰ.金融行政運営の基本方針金融を取り巻く環境変化に遅れることなく、また将来を見据えて金融サービスの質の向上や市場の発展を実現していくために、まずは金融庁自身や金融行政運営のあり方を変えていく必要
・検査・監督のあり方を環境変化に適合する形に見直し
・金融機関による開示の促進等により、良質な金融商品・サービス提供に向けた金融機関の競争を実現
・金融庁の組織自身を、環境変化に遅れることなく不断に自己改革する組織に変革(2) 国民の安定的な資産形成を実現する資金の流れへの転換
人口の減少や高齢化が進む中、これまで蓄積された国民の貯蓄(資産)を安定的に増大させることが重要であり、以下の観点から取組みを推進
・家計における長期・積立・分散投資の促進
・金融機関等(運用機関/販売会社)における顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)の確立・定着
・機関投資家(年金基金等)における運用の高度化(3) 「共通価値の創造」を目指した金融機関のビジネスモデルの転換
世界的に長短金利の低下が進展し、また、テクノロジーの進化が金融業に大きな変革を迫るなど、金融を取り巻く環境は大きく変化
横並びで単純な量的拡大競争に集中するような銀行のビジネスモデルは限界に近づいており、他の金融業でも従来型のビジネスが競争力を失う可能性。金融機関は、現在のビジネスモデルが環境変化の下で持続可能か検証が必要
その際、金融機関が顧客本位の良質なサービスを提供し、企業の生産性向上や国民の資産形成を助け、結果として、金融機関自身も安定した顧客基盤と収益を確保するという好循環(顧客との「共通価値の創造」)を目指すことが望まれる
これはあくまでも推測ですが・・・・
注目すべきは
「家計における長期・積立・分散投資の促進」
です。
つまり、金融庁は
「国民全体の貯蓄を増やすことが目的。」
「長期投資、積み立て、分散投資を推奨。」
しているのです。
日本人は、ほとんどの方が資産運用と言えば「貯金」と教育されてきましたが、それを金融庁は「投資(証券、株式、FX・・・)」にも、分散投資させながら、全体で貯蓄(資産)を上げていくことを目指しているのです。
この視点でいえば
「国内FX業者は、相対取引なので「FX初心者の負け=FX業者の利益」になるため、FX投資家全体で見たときのの貯蓄(資産)は増えない!」
その割に
出典:日経新聞
(買付額は伸びているものの、1年単位では変動がない)
出典:金融庁
結果として
「金融庁は、金持ちを作って、貧富の差を広げたいわけじゃないし、
規制しないと国民全体の貯蓄額(資産)の増加は見込めないから
安定した分散投資に資産を振り分けるように誘導したい。」
「FXは徐々にレバレッジ規制を強めて、長期投資・分散投資の一つとしてあればいいでしょ。」
というのが本音ではないでしょうか。
FX投資で一攫千金を狙う投資家にとっては
「長期投資と分散投資で儲けられるのは、元から金があるお金持ちだけだろっ!」
と思ってしまいますが
これは「金融庁の意向」と「投資家の意向」は、立場が違うのでどうすることもできないのです。
「レバレッジ規制は投資家保護のため」
というのは「完全な建前だ」ということです。
金融庁もど素人ではないのですから、レバレッジ規制が投資家保護につながらないことぐらいはわかっています。
レバレッジが規制されれば、同じポジションを持った時に耐えられる逆行pipsが狭くなるだけです。
投資家からすれば「リスク増えているよ。」ということなのですが
金融庁が目指しているのは
「投資家保護」ではなく、「国民全体が分散投資して少しずつ財産(資産)を増やす状態」ですから
FXのレバレッジ規制というのは妥当な解決策なのです。
実際に
2017年2月には法人口座のレバレッジ規制が導入されています。
法人口座は、最大200倍のレバレッジ設定が可能だったのですが、2017年2月から変動制に代わりました。
変動制というのは
であり、
金融先物取引業協会が算出する「為替リスク想定比率」を見ると
だいたい、レバレッジは30倍~70倍になっています。
考察
このことから考えると
FX業界を発展させる気はさらさらなく
投資家のリスク保護をする気もさらさらない
のですから、「FXレバレッジ規制:10倍」は当然のように実行するはずです。
金融庁が望んでいる世界は
という世界であり、
ではないようです。
FXレバレッジ規制の抜け道
外為どっとコムのアンケート調査では
実効レバレッジ | 構成比 |
---|---|
1倍 | 10.7% |
2倍 | 15.4% |
5倍 | 21.9% |
10倍 | 24.7% |
15倍 | 6.8% |
20倍 | 7.1% |
25倍 | 13.4% |
となっています。
今回の、レバレッジ規制で割を食う投資家というのは、27.3%、4人に1人です。
このような投資家にとっては、レバレッジ規制を回避しなければ、今までの運用スタイルでFXトレードを続けることはできません。
FXのレバレッジ規制の抜け道としては
海外FXの一択です。
法人口座のレバレッジ規制が適用されるまでは
- 法人口座でレバレッジ規制を回避する
- 海外FX口座でレバレッジ規制を回避する
の2つの選択肢があったのですが
2017年2月の法人口座のレバレッジ規制によって
- 法人口座でレバレッジ規制を回避する
は、使えなくなりました。
- 海外FX口座でレバレッジ規制を回避する
のが唯一の回避法と言っていいでしょう。
海外FX業者の最大レバレッジ比較
FXのレバレッジ規制の抜け道として海外FXを検討する前に知っておくべきこと
海外FXはハイレバレッジではあるが、追証がないのでリスクは証拠金の範囲内に収まる
レバレッジが高ければ高いほど、損失が拡大する
というのは、その通りなのですが・・・
海外FXでは追証ゼロ(ゼロカットシステム)を採用しています。
追証がある国内FX業者の場合は、強制ロスカットが間に合わずに口座残高がマイナスになったら、その分は後から投資家に請求が来て、支払わなければ投資家の借金ということになります。
しかし、海外FX業者の場合は、強制ロスカットが間に合わずに口座残高がマイナスになったら、その分は海外FX業者が負担してくれるため、すぐに残高はゼロにリセットされます。
つまり、海外FXの場合は
ことになるのです。
海外FX業者の最大の問題点は「業者選び」
海外FX業者は
- 日本人スタッフがいて
- 日本語対応ができているため
多少の不具合はあるものの、日本の企業のサービスを利用しているのと、それほど変わらない形でFXトレードをすることができます。
しかし、レバレッジ規制が規制対象外であるのと同じように
国内FX業者に義務付けられている信託保全も、規制対象外ですので、導入している業者と導入していない業者にわかれることになります。
信託保全が導入されていなければ、海外FX業者が倒産したとしても、預託している証拠金が戻ってきませんし、どこに連絡していいのかもわからなくなってしまいます。
安全な業者選びのポイントは
- 金融ライセンスを保有している
- 日本人スタッフがいる
- 営業年数が3年以上
- 日本人の顧客数が多い
- 世界展開して、世界各国にオフィスを持っている
- 信託保全(上限付きの信託保全)を採用している
- 世界のサッカークラブなどのスポンサーになっている
などがあります。
注意しなければならないのは、海外FX業者への金融庁の規制も強まる可能性が高い
金融庁がレバレッジ規制10倍を導入したら
当然、国内FX業者は反発します。
それでも、導入を強行する場合には
「こっちだけ規制されて、海外FX業者は規制なし、では戦えない。顧客がみんな海外FX業者に流れてしまう。」
と国内FX業者が言うのは当然です。
結果として、今でさえ
金融庁は、優良な海外FX業者がある国の金融監督庁にも圧力をかけて
日本人向けのサービスを行っている海外FX業者の排除
に勤しんでいます。
結果的に、世界展開している大手の海外FX業者であっても、「日本人向けのサービスだけは、マイナーな国の子会社でサービス提供を行う。」形に切り替えざるを得ない状況になっているのです。
投資家にとっては
以前よりも、メジャーな国(例:オーストラリアや英国)の金融ライセンスを持った海外FX業者が激減していますが、金融庁の圧力がある事情であると理解する必要があります。
まとめ
金融庁がレバレッジ規制10倍を導入しようとしている理由には
「大金持ちを増やすことが目的ではない。」
「国民全体の貯蓄を増やすことが目的。」
「長期投資、積み立て、分散投資を推奨。」
という金融庁の方針があるからなのです。
FXは
「初心者が負けやすい」
「勝てる人と勝てない人の差がはっきりしてしまう」
「口座が伸び続けている」
という状況があるため、規制のターゲットになりやすいのです。
金融庁のは、FXのレバレッジ規制をすれば
- その分、FXへ回していた資金が株や投資信託に流れる
- FXも長期投資が増える
- 一攫千金に引っ張られて、参加する初心者が減る
と考えているので
遅かれ早かれ、「レバレッジ規制10倍」は導入される公算が高いのです。
レバレッジ規制を回避するためには
- 海外FX口座を利用する
のが、唯一の選択肢になってしまいます。
「これ以上、レバレッジ規制をすることになんのメリットがあるの?」
「レバレッジ規制しても、投資家のリスクは変わらないよ。」