衆院選は後半戦に入った。

 報道各社の情勢調査で共通しているのは、自民党が堅調に議席を伸ばしながら、安倍内閣の支持率で厳しい数字が出ていることだ。

 この乖(かい)離(り)をどうみたらいいのだろうか。

 小選挙区制では当選者は1人しか出ない。与党の自公が推す候補に対し、野党の候補が乱立しては票が分散し、勝利することは難しい。

 衆院解散前後に、民進党が分裂し、希望の党や立憲民主党が誕生した。合従連衡の末、「野党共闘」は一部にとどまり、政権の批判の受け皿が分散しているのである。

 自民党の議席予測と内閣支持率の齟齬(そご)は、「安倍1強政治」に対する批判である。

 それは今回の衆院解散の在り方が象徴している。野党が憲法に基づき要求した臨時国会召集を3カ月間もたなざらしした揚げ句の冒頭解散である。所信表明演説も代表質問もなかった。

 「共謀罪」法の審議では参院法務委員会の採決をすっ飛ばす「中間報告」という禁じ手を使って本会議で採決を強行した。

 国有地が格安で払い下げられた森友学園問題、獣医学部新設が事実上1校だけに認められた加計(かけ)学園問題は、いずれも安倍晋三首相や昭恵夫人に近い人が関わっており、行政の公平性や公正性がゆがめられた疑いが消えていない。

 加計学園の理事長は国会で一度も説明したことがない。国会招致も、関係省庁の情報公開も、安倍首相が指示すれば済むことだ。

 国会軽視というほかない。

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 小選挙区制が抱える根本的な弊害もある。民意を正確に反映しないことである。

 前回2014年12月の総選挙で、自民党の小選挙区における得票率は約48%だったにもかかわらず、議席占有率は約76%に上った。

 選挙時にはアベノミクスなど経済問題に重点を置き、選挙が終わるや、数を頼みに国論を二分するような法案を強引に通すのが安倍首相のやり方だ。

 特定秘密保護法、安全保障関連法、「共謀罪」法しかりである。今度は憲法改正に向けた議論を加速するだろう。

 安倍首相は今回の不意打ちのような解散総選挙を消費増税の使い道の変更と、北朝鮮情勢への対応を挙げ、「国難突破解散」と位置付けた。

 消費税の使途や北朝鮮情勢が「国難」というのであれば、国会で熟議を尽くすのが筋である。取って付けたような理由と言わざるを得ない。

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 安倍政権で行政府が肥大化し、国会は三権分立によるチェック・アンド・バランスの機能を失いつつある。

 行政府の「暴走」を止めるには、与野党を問わず監視機能の強化が必要だ。だが、小選挙区制の下、首相(総裁)の権限が強まっている。異論は排除され、自民党内でも活発な議論が失われている。

 国会が行政府を監視する機能を回復させることが何よりも重要だ。私たち有権者も試されていることを忘れてはならない。