過激派組織IS=イスラミックステートが「首都」と位置づけるシリア北部のラッカが、アメリカなどの支援を受ける地元の部隊によって制圧され、ISが標ぼうしてきた「イスラム国家」は事実上、崩壊しました。しかしISの過激な思想の影響を受けたテロ事件は世界各地で相次いでいて、長期にわたる過激派対策が求められることになります。
シリア北部のラッカで軍事作戦を続けてきたクルド人勢力を主体とする「シリア民主軍」は17日、ISの戦闘員が最後まで抵抗を続けていたラッカ中心部にある病院とスタジアムを制圧し、「ISのテロリストからラッカを完全に解放した」と発表しました。
NHKが委託したシリア人のカメラマンがラッカ市内で撮影した映像では、ISがかつて住民たちを処刑していた中心部の広場で、軍事車両に乗った兵士たちが旗を振って制圧を祝う姿が見られます。
「シリア民主軍」はこのあと地雷の除去などを終えたうえで、記者会見を開いて正式に勝利を宣言することにしています。
また、シリア民主軍を支援しているアメリカ主導の有志連合は、17日、引き続き市内に潜伏しているおそれがあるISの戦闘員の掃討にあたると強調しました。
ISが3年前から支配し「首都」と位置づけてきたラッカが制圧されたことで、ISが標ぼうしてきたシリアとイラクにまたがる「イスラム国家」は事実上、崩壊したことになり、各国が進めてきた対IS軍事作戦は大きな節目を迎えました。
その一方で、ISの過激な思想の影響を受けたテロ事件はヨーロッパやアジアなど世界各地で相次いでいて、長期にわたる過激派対策が引き続き求められることになります。
シリア難民からは喜びの声
過激派組織ISが「首都」と位置づけるシリアのラッカが制圧され、ISが標ぼうしてきた「国家」が事実上崩壊したことについて、隣国トルコに逃れているシリア難民からは喜びの声が聞かれました。
ラッカの出身で、脱出を試みてISに拘束されたこともあるという18歳の若者は、「ラッカでは生きた心地がしませんでした。これで殺人も破壊もなくなるのでうれしい。日常の暮らしが戻ってきます」と喜んでいました。
また人道支援団体に所属する37歳の男性は、「ISはラッカを首都だと考えていたが、いなくなってうれしい。ISは本当のイスラムではなく偽物だ」と話していました。
一方で、トルコに逃れている難民はアサド政権の退陣を求める反政府派の人が多く、「ISという悪は取り除かれたが、それより悪いアサド政権が残っている」という、冷めた見方も聞かれました。
米軍主導の有志連合「90%以上が解放」
過激派組織IS=イスラミックステートが「首都」と位置づけるシリア北部のラッカについて、アメリカ軍が主導する対IS作戦の有志連合のディロン報道官は、17日、記者会見で「90%以上が解放された」としてラッカの大半が奪還されたという見方を示しました。
そのうえで、「ラッカにはISの戦闘員およそ100人が残っているとみられるほか、各地に爆発物が仕掛けられている」と述べ、完全な解放に向けて慎重に作戦を進め、ISの壊滅を目指す考えを強調しました。
一方、トランプ大統領は17日、地元のラジオ局の取材に対し、「わたしは完全にアメリカの軍を変えた」と述べ、政権の最優先課題の1つに掲げてきたISの壊滅に向け大きな成果をあげたとアピールする狙いがあるものとみられます。