前回の話
「コンプレックス」について、書いてみたい。
わたし自身は、高卒。
兄2人も同じく。
前提として必ずしも大卒者が優れていて、それ以下はダメだなんて思っていない。
学歴があって素晴らしい人も、そうでない人も、
学歴がなくて素晴らしい人も、そうでない人も、
たくさん見てきた。
大学に、行くか行かないか?の話ではなくて、
うっかり受け継がれる〈毒〉について、この例で解説したい。
わたしの父は、戦中戦後苦労して、
学校へ通うことが出来なかった。父母が早くに亡くなり、その後祖父も亡くなったため、生きていくために働かなくてはならなかったからだ。
父は物覚えもよく、ある種の賢さを持った人ではあった。が、中学も通えないほどの戦後の混乱期、食べ物もなくて、必死で働いたという。
そのことについては、食べるもの、寝るところに困ったことがないわたしからは、想像することしかできない、大変な暮らしだっただろうと思う。
生前父が語っていた言葉から、少し推理してみる。
大人になり、まわりの同年代も働くようになった。職場で、取引先で、あちこちで……きっとたくさんの『自分より長く学校へ通った人』に、出会っただろう。
おそらくそこで、「自分よりも長く学校へ通ったにもかかわらず、自分より能力が劣る人たち」に出会った。例えば両親が揃っていて、大学へ通えた人たち……
父の目から見たら「なんの苦労も知らないで、のほほんとしやがって、それでこんなに何にもできないやつなのか!」。
……本当はそれは個別の問題だったはず。ああ、そういう人なのね、そういう人もいるよね?という個別の問題。
父のなかに、怒りがあったんじゃないかな?嫉妬があったんじゃないかな?
辛かった環境への怒り。自分が選びとったのではない、翻弄されたように感じる運命に。
もし戦争がなくて、父の父も、父の母も生きていたのなら、きっと父は大学まで進んだだろう。比較的裕福な家庭だったそうだ。
誰かを恨もうにも、それすらできないような背景。
本人もわからないうちに、悔しかったんじゃないかな?
父の怒りが煮詰まって、結晶化する。
「大学なんて、バカが行くところだ!
そんなとこ行かなくたって、勉強なんて出来るんだ!
だからおまえらも、行かなくていい!」
そして子どもたちの『大学進学への道』を、勝手に絶ってしまった。
わたしたち3人の意思とは、関係のないところで。
当時だって奨学金制度もあっただろう。優秀であるなら公立大学に進めば、当時は学費も抑えられたはずだ。なにか方法があったはずなのだ。
1番上の兄は、進学したかったらしい。しかし我が家には「(大学へ)進学させてやれるようなお金がない」と。
じゃあ、将来裕福になったとしても、弟と妹(←わたしね)も大学へ絶対行かせるな!と、兄は両親に約束させたらしい。
この、大学へ「行かなかった」のではなく、「行けなかった」コンプレックスが、うすーく、しかし確実に個人の中で拗れていく。
「進学した人たちが、いかに劣って、
進学しなかった(出来なかった)自分たちが、
いかに優秀であったか」を証明するために、
そんな現実ばかりを収集してしまう。
わたし、自分が、
濃くはないものの、「なんでこんなコンプレックスを持っていたんだろう?」と気づいた。それでルーツを探りだしたのだ。
これは、わたし自身のコンプレックスではなかったのだ。
父の、悔しさから生まれたコンプレックス・フィルターを、
ただ受け継いだだけだった。
今回、学歴を例にお話ししましたが、わたしが語りたかったのは、「気づかぬうちに世代間連鎖させてしまう、個人のコンプレックス・フィルター」についてでした。
初めはだれかひとりのコンプレックス。それが知らず知らずのうちに家族や、周りの人に影響を及ぼして、選択と、可能性を潰していくのか、と
ちょっと恐ろしくなった。
これを〈毒〉と呼ばずになにを毒というのか。
気づけば、見つけることができれば、
このフィルターを外し、解毒できる。
あなたはどうですか?
うっかり家族の思い込み、背負ってませんか??
〈つづく〉
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