ひふみ投信、「世界の株つかみ取り」外株比率1割へ-レオス社長

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  • 6月から米株投資、今後は米以外にも拡大「日本株の成長不足補う」
  • 運用残高現在5000億円、将来は倍の1兆円目指す、銘柄選択にAIも

独立系の公募投資信託で運用資産残高が日本一のひふみ投信を運用するレオス・キャピタルワークスは、外国株式の組み入れ比率を現状の3%から10%程度に高める方針だ。成長率の低い一部の国内大型株に替えて、外国株を買い増す。

藤野英人社長
藤野英人社長
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  ひふみ投信は日本の成長株投資でリターンを上げており、9月末のリターンは2008年10月設定時からの累計で355.3%、直近3カ月で7.7%。それぞれTOPIXの85.6%、4.7%を上回る。ただ、藤野英人社長は「日本の大型株の成長不足を米国の一部大型株で置き換えるのが元来の主戦略」と述べ、6月から米国株への投資を開始、マイクロソフトとアマゾンの2銘柄を組み入れた。今後は米以外にも海外大型・中小型株を投資対象とする考えを明らかにした。

  ブルームバーグのデータによると国内大型株上位5社の年初来上昇率は5.6%に対し、米上位5社は32.7%。国内は10位のうちテクノロジー企業はソフトバンク1社にとどまり、NTTNTTドコモ日本たばこ日本郵政ゆうちょ銀行など政府出資(間接出資も含む)企業が半数を占める。一方、米はアップルやアルファベット、マイクロソフト、フェイスブック、アマゾンとテクノロジー企業が多く、同氏は「日本の大型株と成長率が違いすぎる」と話す。

  レオスの運用残高が2月の2000億円から現在5000億円まで急増する中、企業調査に予算が充てられるようになり、同氏は「ここから存分に力を発揮できる」と語る。アナリストやファンドマネジャーに業種や国を割り当てず自由に銘柄を選ばせ、「世界の株をつかみ取りする」と言う。銘柄選択には人工知能(AI)の導入も予定しており、スクリーニングにESG(環境・社会・ガバナンス)的観点などを取り入れることも検討している。

  来年1月にスタートする積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)については、長期的にはとても期待しているという。経営の安定のためには、毎月安定的な資金流入が重要で、顧客にとっても最適な資産形成方法とみている。同社の直販における積立金額から推測すると、個人型確定拠出年金(iDeCo)とつみたてNISA合わせて早いうちに月100億円、年間1200億円を見込む。

カリスマ

  カリスマファンドマネジャーと言われた藤野氏は03年にレオスを創業。世界金融危機で経営環境が悪化、09年にはISホールディングス(株式の75%を保有)に身売りし、一時は取締役から退いたが、15年に社長に復帰した。同社の公募投信の運用額は7月末時点でさわかみ投信を抜き、独立系公募投信としては日本一となった。

  運用残高を現在の倍の1兆円にする経営目標はあるが、過去の金融危機時のようにマーケット次第では減る可能性もある。現状で資金的には困っていないが、万が一の事態に備えて「上場も選択肢の1つで視野に入れている」と話し、経費をむやみに膨張させず「スパルタンな経営」を続けたい考えだ。

  同氏はまた、運用規模が急拡大したのに伴い、きめ細かな対応が続けられるかが鍵とみて、運用部隊の増員は抑制し、営業部隊の採用、教育、研修を強化する考えだ。

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神戸製鋼:不正行為の期間も拡大か-納入先企業に影響広がる

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Kobe Steel Ltd. Plants And Headquarters As Scandal Expands To Its Core Business

Steel pipes sit on a truck as it leaves a Kobe Steel Ltd. plant in Kobe, Hyogo, Japan.

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
  • 米国顧客に販売した製品の仕様不適合に関する書類提出を求められる
  • データ改ざんの製品供給を受けた企業では品質調査など対応進める

神戸製鋼所によるアルミニウムや銅製品の一部での検査データの改ざんなどの不正行為が、10年以上前から行われていた可能性があることが分かった。従来は10年前からと説明しており、不正がより長期にわたって行われていたとすれば、問題となる対象製品の出荷先への影響が拡大する恐れもある。

  また、同社は17日午後、米司法当局から米国の顧客に販売した製品の仕様不適合に関する書類の提出を求める書面を受領したと発表した。米子会社が現地時間の16日に受け取った。神戸鋼は当局の調査に真摯(しんし)に協力するとしている。同社によると、本件による業績への影響は現時点では不明。

  今回のデータ改ざん問題が発覚した当初、神戸鋼はアルミ・銅事業での不正は約10年前から行われていたと説明していた。同社幹部は16日、10年以上前から不正が行われていた「可能性はある」との見解を示した。現在、10年以上前にさかのぼって保有する製品データの調査や当時の担当者などからの聞き取りを進めている。

  品質不正の対象製品はアルミ・銅に加えて、自動車のギアなどに使用される鉄粉や液晶材料となるターゲット材だったが、さらに新たに銅管やアルミニウム合金線、線材などの鉄鋼製品においても不正が見つかった。出荷先は当初の約200社から500社へと拡大したことが明らかになっている。

  新たに品質不正の製品が見つかったことを受けて、自動車部品大手のデンソーはこれまでの調査対象を拡大して品質への影響の確認に乗り出した。アイシン精機は、神戸鋼製品について自社には直接的な影響がないことは判明しているとした上で、新たに発覚した素材についても仕入れ先などを含めて調査を継続しているとした。SUBARU(スバル)は、データが改ざんされた鉄粉などが部品に使用されていたかを確認中としている。

  また、東京メトロによると、地下鉄の千代田線120両と東西線30両において、データが改ざんされたアルミが使われていた可能性がある。広報担当の吉田基輝氏によれば、車両を製造した日立製作所から16日に説明を受けた。車両の安全性に問題はないとして、継続して使用する方針。

  西武鉄道の広報担当、川口寛氏によると、同社もデータが改ざんされたアルミを車体に使用した可能性があり、メーカーの日立から対象車両は36両と説明があった。車体の骨組み部分に使用された可能性があり詳細を調査中だが、安全性に問題はないとの説明を受けていると同氏は述べた。

  阪急電鉄は、最新型車両の一部に神戸鋼のデータが改ざんされたアルミが使われていた可能性があると日立から説明を受けたことを、広報担当の吉井伸一氏が電話取材で明らかにした。最新型は152車両保有しており、現在何台が対象かを日立が調査している。安全性には問題ないと認識していると同氏は述べた。

  JR西日本の来島達夫社長は12日に都内で会見し、新幹線車両の台車の一部にデータが改ざんされたアルミが使われている部品があると車両メーカーから説明を受けていることを認めた。その上で「瑕疵(かし)のある納入であり、契約に基づく費用負担は当然」としてメーカーに部品差し替えに伴う費用などを請求する考えを示している。 

株価は上昇

  17日付の日経新聞は、アルミ・銅製品の不正は数十年前から続いてきたことが分かったと報じた。顧客の了解を得ずに、工場の独自判断で不正な製品を出荷していたケースもあったという。また、不正のやり方が事実上「裏マニュアル」化されていたもようで、担当者が代わるたびに不正行為が引き継がれていたとも報じた。

  同報道に対して神戸鋼の広報担当者は「現在調査中であり、原因究明に努めている」とコメントした。     

  17日の神戸鋼株終値は前日比26円(3.1%)高の853円。川崎博也会長兼社長が16日午後に投資家向け説明会を実施した。野村証券の松本裕司アナリストはリポートで、同説明会で当面は資金面での不安がないことを確認できたと指摘。その上で、データ改ざん製品の売上高が年間120億円前後とアルミ・銅事業部門の4%、売上高全体の1%以下にとどまることを確認できた点で、現状の株価に対してはややポジティブな内容との見方を示していた。

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