『Wake Up, Girls! 新章』
自身のブログでは「通告」というタイトルをつけたエントリにて、自身が作詞した楽曲のクレジットを本編中に掲載しなかった件についてコメント。
掲載しなかった理由として、「理のかなった」回答(本文ママ)がなかった場合、山本寛さんの作詞名義「辛矢凡」が制作した楽曲を使用することを認めないという。
明日10月16日までに、『Wake Up,Girls!(新章)』♯1において、『タチアガレ!』『7 Girls War』の楽曲クレジットを本編中に掲載しなかった件について、放送媒体であるテレビ東京、及び制作責任者たる「Wake Up,Girls!3製作委員会」からの「理のかなった」回答がなかった場合、私(辛矢凡)名義の全ての楽曲(歌詞)を、10月17日以降において『Wake Up,Girls!(新章)』本編、及び作品派生ユニット「Wake Up,Girls!」「Run Girls, Run!」他が使用することを、一切認めません。
法的手続きは今後迅速に進めて参りますが、ひとまずここでの告知とさせていただきます。
よろしくお願いいたします。 山本寛オフィシャルブログ「通告」より
ヤマカンとWUG、一体何があった?
問題となっているのは、10月9日から放送された『Wake Up, Girls! 新章』の第1話。劇中で、山本寛さんが監督時代に作詞した「タチアガレ!」「7 Girls War」が使われたが、EDで楽曲情報に関するクレジットが掲載されなかった。山本さんは放送翌日、Twitterで「劇中歌すらクレジットしないというのは驚いたなぁ」とツイート。11日には、テレビ東京ミュージックを通じて、本件について問い合わせたことを明かしていた。
しかし、回答を得た様子はなく、15日には『Wake Up,Girls!』における辛矢凡の作詞楽曲すべての使用停止を示唆。
およそ2時間後、改めてクレジット非掲載についての回答を求めると同時に、回答がなかった場合は楽曲(歌詞)使用を認めないと宣言。ほぼ同じタイミングで冒頭のブログを更新している。
さらに、製作委員会内の1社であるエイベックス・ピクチャーズをグループ会社にもつ、エイベックス・グループ・ホールディングスの代表取締役社長CEOの松浦勝人さんにリプライを送り、対応を求めた。
期日とされる16日17時時点で、製作委員会サイドから回答を得た様子はない。
もし使用停止となった場合、劇場版やTVシリーズを彩った楽曲を歌ったり、挿入歌として流したりすることができなくなる可能性もある。
「17日以降」というのは、言うまでもなく第2話から(日付的には17日の放送)。法的な手続きを進めるとしている山本さんだが、どのような結末を迎えるのだろうか。劇場版『Wake Up, Girls! 七人のアイドル』主題歌「タチアガレ!」
TVアニメ『Wake Up, Girls!』OP主題歌「7 Girls War」
続・劇場版 前篇『Wake Up, Girls! 青春の影』主題歌「少女交響曲」
続・劇場版 後篇『Wake Up, Girls! Beyond the Bottom』主題歌「Beyond the Bottom」
ほか、「リトル・チャレンジャー」「レザレクション」など
『Wake Up, Girls!』とは?
2014年1月、劇場版と同日から放送されたTVシリーズとして始まった『Wake Up, Girls!』。2015年には2本の劇場版『Wake Up, Girls! 青春の影』『Wake Up, Girls! Beyond the Bottom』が公開され、山本寛さんはそのすべてで監督をつとめていた。東日本大震災を受けて、東北地方を舞台にした同作は、脚本に待田堂子さん、キャラクターデザインに近岡直さん、音楽に神前暁・MONACAといったスタッフが集結。
主要キャストはプロダクションに所属していない一般人を対象に、81プロデュースとエイベックスが共同開催したオーディンションから選出。
7人は劇中と同名の声優ユニット・Wake Up, Girls!としても活動しており、作品をきっかけとして、最近では他作品の主題歌を担当するなど、本作に止まらない成長を遂げてきた。
新シリーズ発表も山本さんは降板
2015年12月のイベント「Wake Up, Girls!Festa. 2015 Beyond the Bottom Extend」では、新プロジェクトの始動を発表。ほぼ1年後に開催されたイベントのラストで、2017年の放送決定と制作陣が明らかにされた。この時点で、監督は山本さんから板垣伸さんへ、キャラクターデザインをつとめていた近岡直さんが、キャラクター原案に変更されることが判明。
制作会社も、山本さんが立ち上げたアニメスタジオ・Ordetと共同で2015年の劇場版を制作したミルパンセが、今後は単独で手がけることが明らかになった。
直接的な関係は不明だが、山本さんは、同年5月に体調不良から休養を宣言。
前述のイベントでの放送時期発表以降、「当時の体調不良は監督降板(の決定を知らされたこと)によるものなのでは?」という推測が出始めた。
復帰後の9月、岡田斗司夫さんとの対談記事(外部リンク)で、休養の理由に問われた山本さんは「心が折れた」と回答した。
それはちょっと概論的なんですけど、具体的に政治的な人間関係のもつれとか、そういうのがぐちゃぐちゃっとあったんですよ。 『君の名は。』が”萌え”に支配されたアニメ業界から僕を救った――山本寛・アニメ監督への復帰を語る
山本監督の名前が出ることなく放送へ
2017年に入ると、山本さんから制作陣への批判とも受け取れるツイートが出始める。
7月に行われたフィギュアイベント「ワンダーフェスティバル」内で新キャラクターおよび新キャスト発表会が行われた際には、発表会の生中継を視聴しながらツイキャスを配信。
「新キャラクターとして登場するメンバーの構想は僕がもっていたもの」「僕が(制作に)絡んでいた段階で2話の脚本までできていた」「著作権法違反かもな」「弁護士と協議します」など、制作サイドと折り合いのつかない現状について、あけすけに発言していた。
その後も、放送に向けたイベントやインタビュー記事、ラジオでの発言などに対して、たびたび批判的なコメントを続けていた。
山本監督からの一方的な批判だけで、内情はわからない状態だったが、スタッフ変更についての制作サイドからの声明はなく、またメディアを通じた作品の情報発信の場において、山本さんの名前が出ることさえなかった。
この事態に、ファンの間でも賛否両論が巻き起こっていた。
「革命の三ヶ月」とは何なのか?
山本さんからの一方通行的な発信はその後も続いていく。結果的に、事態は進展することなく放送日を迎えた。山本さんは、クレジット未掲載が判明後、13日に「革命の三ヶ月」と題したブログを更新。そして、冒頭のツイートに至っている。
監督の降板を巡って、制作サイドと山本さんとの間に、どのようなやり取りがあったのか。山本さんも自身の口から明らかにしていない以上、すべて憶測の域を出ていない。アニメを護る、アニメを変える戦いだ。
多くの人間は冷笑するだろう。
すればいい。
僕はこの炎の中に身を投じた。
あとはこの炎が、「悪魔」どもを焼き尽くすのを待つだけだ。
僕は灰になるまで燃え続ける。 山本寛オフィシャルブログ「革命の三ヶ月」より
そして、現在放送されている新しい『Wake Up, Girls!』について、前作から大きく変わったキャラクターデザイン、キャストの実際の動きをモーションキャプチャーで取り入れたCGによるダンスシーンなど、一新された作風に関しての賛否両論は、あくまでも人それぞれ、好みの問題だろう。
それ以外で、山本さんがここまで憤る原因が何なのか? 法的な手続きを進めるとする背景に何があるのか、そもそも違法な点とは――ファンのもっとも知りたいことが明確ではない状態で、それでも対立だけが激化してしまっている。
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