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【社説】

9条俳句訴訟 市民の言論を守りたい

 「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」-。さいたま市の女性が詠んだ俳句をめぐり公民館の月報に掲載を拒否したのは違法との判決が出た。憲法論議が大テーマの時代こそ市民の言論を守らねば。

 俳句サークルは約二十人。会員の投票で「秀句」を選び、公民館の月報に掲載するのが慣例だった。ところが二〇一四年、「梅雨空に『九条守れ』…」が選ばれると、公民館側は不掲載とした。

 ちょうど集団的自衛権の問題が大きな政治課題となっていた時期だ。公民館側はサークル側に公平・中立の立場から掲載は好ましくないと説明した。

 この問題に関係した公民館職員はいずれも元教員らである。さいたま地裁は次のように述べる。

 <教育現場において、国旗国歌に関する議論、憲法に関する意見の対立を目の当たりにして、辟易(へきえき)しており、一種の『憲法アレルギー』のような状態に陥っていたのではないかと推認される>

 この俳句の提出を受けたとき、たしかに複数の職員で「掲載は問題」「掲載は困難」と結論を得た。だが、検討不足だった。判決は「俳句を掲載できない理由について、十分な検討を行っていない」と厳しく突いている。

 仮に「護憲=不可」が不文律の状態だったならば、まるで検閲同然ではなかろうか。判決は「これを掲載しないことが、逆に公民館の中立性や公平性、公正性に反する可能性があることの議論はなかった」と書いている。

 判決はこう述べる。

 <思想や信条を理由として、俳句を月報に掲載しないという不公正な取り扱いをしたことにより、女性の利益を侵害した>

 このサークルの俳句は三年八カ月にわたり月報に掲載されてきたから「女性の俳句も掲載されるという期待は、法的保護に値する人格的利益であり、掲載しなかったことは違法だ」とも言った。

 この問題は俳人の金子兜太さん(98)と作家のいとうせいこうさん(56)の対談で取り上げられ、本紙の「平和の俳句」が一五年から始まるきっかけとなった。

 毎朝、毎朝、平和を詠んだ一句で一日が始まる。各地から届く無数の俳句は、戦争を憎み、平和の尊さをかみしめている人々の連なりである。

 行政の中立性、そんな取り澄ました理由で過剰反応を起こしていないか。俳句は自由だ。普通の人々の「平和」という強い言論が朝から、息をのませる。

 

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