元テスラ幹部が予言する「日本車」の未来

EVシフトで泣く会社・笑う会社はどこか?

米テスラが普及価格帯に初めて投入した最新車種「モデル3」。価格は3万5000ドル(約400万円)から。テスラ車に搭載される電池は日本のパナソニックが独占供給する(写真:テスラ)
電気自動車(EV)の製造コストの約半分を占めるといわれる車載電池。市場の本格拡大を前に、電池メーカーによる投資が加速している。
その好機をとらえたのが日本のパナソニックだ。米EVメーカーのテスラに車載電池を独占供給する。テスラが今年7月に出荷を始めた新型車種「モデル3」向けの電池工場「ギガファクトリー」はテスラ、パナソニックの共同出資で稼働。地元自治体を含めた投資総額は約5000億円ともいわれる。
両社がこれほどまでに強固な関係を築き上げた背景には、パナソニックに15年間勤務した後にテスラに入社し、電池部門のトップを務めたカート・ケルティ氏の存在がある。今年7月にテスラを退社した同氏に、EV市場の今後について聞いた。

テスラとパナソニックの関係は先駆的

カート・ケルティ Kurt Kelty/国際基督教大学卒業、スタンフォード大学大学院修了。1991年松下電器産業(現・パナソニック)入社、電池部門の要職を歴任。2006年テスラ入社、2017年7月まで電池部門統括。

――EVの普及に伴い、車載電池が足りなくなるという懸念があります。

EV市場はどんどん伸びるが、車載電池市場は急激には伸びない。供給能力が限られているからだ。電池製造に大規模な投資を今すぐに始めなければ、数年後に電池が足りなくなる。テスラとパナソニックはギガファクトリーへ大きな投資をしているが、他メーカーはそこまで大きな投資をしていない。

近いうちに電池メーカーは逆に顧客を選べるようになる。電池メーカーが投資しなくても、自動車メーカーが資金は出すからとにかく工場を作ってほしい、となる可能性もある。

テスラとパナソニックの関係は先駆的な例だ。テスラは土地と建物への投資と設計を行い、パナソニックは設備に投資する形で分担している。両社は生産体制の最適化でも協力している。いま多くの自動車メーカーはさまざまな電池メーカーと同時に付き合っているが、それでは電池メーカーも何千億円の投資に踏み切りにくい。やはり大きな投資を実現するには、深い関係を作らないとダメだ。そうなれば電池不足は解消されるかもしれない。今、自動車メーカーと電池メーカーがどのような提携や投資をするかが、3~4年後に大きな影響を与える。

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  • NO NAMEfb77d64e1766
    電気自動車市場が小さすぎるだろう。
    テスラ一人勝ちみたいな云われ方が続いているが、
    市場規模の拡大を待って参入すべきではないのか?という見方もあるだろう。
    国が本腰を入れて電気自動車普及にシフトするなら
    日産だけでなく、
    燃料電池自動車開発に尽力してきたトヨタやホンダも電気自動車開発に全力を注ぐだろう。

    あいにく日産はリコール問題を抱え、ユーザーに対する透明性が揺らいでおり、新型リーフ普及時の大きな痛手ではあるが。

    テスラも生産効率、大量生産などの問題を抱え、これからが本当の意味での正念場だろう。
    up24
    down12
    2017/10/17 06:22
  • NO NAMEed8e61a41268
    自動車はエンジンがモーターに代わればライフサイクルが長くなると言うのは妄想です。私の自動車は新車から20年ですがエンジンやミッションの故障は有りません。駆動・制動消耗品や灯火などEV主要以外の箇所です。報道で公表されるリコールを見てもエンジンに関わる不具合は少ない印象です。自動車の使用条件は非常に過酷です。EVに成ればすべて解決するわけではありません。
    up23
    down13
    2017/10/17 07:09
  • NO NAMEdc3d8b8198df
    スマホと同じ現象が起こりそう。ハードはどこでも作れるようになる。重要なのはソフトになる。EVになれば参戦できる企業が各段に増えて、差別化は一気に難しくなる。
    自動運転のAIをどこが独占するかで勝負が決まりそう。しかも、そのテーブルに上がってるのは米企業ばかり。日本はだめそうだ。
    up15
    down6
    2017/10/17 08:40
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