今回は「愛国カルト」のデマじゃないんですが、デマから身を守る上で重要な「陰謀論」について考えてみたいと思います。

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「陰謀論」とは、「9.11はアメリカの自作自演だ」とか「3.11は人工地震だ」とか「アポロ11号はNASAの捏造だ」とか「タイタニック号沈没は保険金を狙った自作自演だ」とか、様々な出来事の裏に、世間一般で知られているのとは異なる陰謀(多くは巨大組織による)が隠されているとする考え方の事です。そのほとんどは、常識的な頭で考えれば、あり得るわけがないとすぐわかるものばかりです。


さて、今回私は、こんな陰謀論者と会いました。それは「日本の選挙はあらかじめ当選者が決まっている出来レースだ」というものです。その根拠は、投票が締め切られた直後にテレビの選挙番組で当確がいくつも発表されるからです。

なぜ投票が締め切られた直後に当確が出せるのか。当然、「初めから誰が勝つか決まっている」からではなく、事前の世論調査や出口調査の結果です。詳しくはこういう解説をお読みください。


はあ、こんな風に考えてしまう人もいるのだなあ、と思い、私はどうして開票率0%で当確が出せるのか、この佐伯まお@saekimao006という人に教えました。

すると、このように返ってきました。

この返信が来たあたりで、私は「こりゃあ陰謀論だな」と思い始めました。当確が出るのが早ければ不正選挙の証拠だと言い、当確が出るのが遅いと「あまりに露骨すぎてしまうため、多少遅らせているのでは」と、これまた不正選挙の証拠にしてしまっているからです。


(ちなみに「ほとんど全員20時に決まっている」ということ自体間違い。今度の衆院選の選挙速報で確認してみてください。20時に即当確が出るのは全体から見たらそう多くありません)


つまり、
「20時に当確が出る」→不正選挙が行われている結果だ!
「20時に当確が出ない」→不正選挙が行われていることを隠すための工作だ!

というわけです。


陰謀論者の特徴はここにあります。「どっちに転んでも、結論は同じ」。いかなる原因でも、自分に考える結論に合うように解釈するので無敵です。


もちろん、「外国人が書いたニセ票」というもの意味不明です。ただ読めないぐちゃぐちゃな字が書いてあるだけで「外国人が書いたニセ票」というのも全くの根拠不明。不正選挙でそもそもニセ票を入れる意味が分かりませんし、外国人に書かせるというのはさらに意味不明ですね。なんで外国人!? 日本人でいいやんけ。何より、不正投票でニセ票を入れるなら、ぐちゃぐちゃな文字じゃなく、当選させるべき人間の名前を書いておくだろ。なんでぐちゃぐちゃな文字を外国人に書かせるねん。わけがわからん。


実のところ無効票って結構ありまして、2014年の衆議院選挙では、全体の3.29%、およそ180万票もの無効票が出ています(総務省HP参照)。悪戯のような投票も大量にあることが予想されます。そう驚くことじゃないですね。


また、テレビ報道の当確は100%確実ではありません。他社よりも少しでも早く出そうとしているので、ごくまれですが間違って当確を伝えることがあります。2009年の都議選で、NHKが落選候補に「当確」を出してしまったことがありました。このことを伝えると、反応は予想通りでした。

開票率0%で確実な当確が出せる→不正選挙の証拠だ!

当確が間違えて報道されることもある→不正選挙を隠すための工作だ!

となるわけです。つまり、結論はすでに決まっていて、どう転ぼうとその結論に至るように解釈するわけです。


そして、この佐伯まおという人、不正選挙論を否定する私を「裏社会の工作員」扱いしてしまいました。



うーん、「裏社会」が何なのかわかりませんが、これまで在日認定や左翼認定は散々されてきましたが、「裏社会の工作員」という認定をされたのは初めてです。


そしてこの人によると、私のような「裏社会の工作員」の存在が、不正選挙が行われている証拠なんだそうです。


つまり、自分の説を否定する人間が出てくると、「私の説を否定する人間がいることが、私の説が正しいという証拠だ」と言うわけです。もう無敵ですね。


この論理を用いれば、いかなる陰謀論も正当化できます。「9.11はアメリカの自作自演だ」という陰謀論が否定されれば、「わざわざ否定するということは、不都合な真実を隠したいからだ。やはり9.11はアメリカの自作自演だ」などと言えるわけです。つまり、陰謀論者は、否定されても肯定されても、どっちでも自分に都合よく用いて、自分の妄想を強化してしまうわけです。


最終的には、なんか日本はCIAに牛耳られていて、不正選挙はCIAが行っていて、日本のネット掲示板の運営をして、都合の悪いコメントは消しているんだそうです。CIAって暇なんだなあ…。



まあ、皆さんもこれを見てお分かりいただけたんじゃないかと思いますが、繰り返し述べています通り、陰謀論者の特徴は、肯定されようが否定されようが、全部自分に都合のいいように解釈して、あらかじめ決められた結論を決して変えないということです。


開票率0%で当確が出れば「不正選挙の証拠だ」と言い、開票率0%で当確が出なければ「不正選挙を隠すための工作だ」として、どっちにしろ「不正選挙が行われている」という証拠にしてしまう。


当確の速報が正しければ「不正選挙の証拠だ」と言い、当確の速報が間違っていれば「不正選挙を隠すための工作だ」として、どっちにしろ「不正選挙が行われている」という証拠にしてしまう。


自分の説が肯定されれば、「不正選挙はこんなにもバレバレだ」と言い、自分の説が否定されれば、「わざわざ否定しに来る工作員がいるということが、不正選挙が行われている証拠だ」と言い、どちにしろ「不正選挙が行われている」という証拠にしてしまう。


こういう人には、いかなる説明も説得も無駄です。なぜなら、どんな反論も、どんな否定の証拠も、すべて自分の頭の中で都合よく解釈し、自分の論の補強材料にしてしまうからです。


今回は不正選挙に関する陰謀論について紹介しましたが、何も不正選挙に関する者だけではありません。ネトウヨの発言の多くは、このような陰謀論と同じ考え方が用いられています。


例えば在特会。この団体を支持しているネトウヨも大勢いますが、その一方で、在特会の暴力的なやり方を嫌っているネトウヨも大勢います。そういう人たちは在特会をどう考えるのか。在特会を、朝鮮人、もしくはしばき隊の自作自演とするのです。


新大久保での差別的な落書きを、「在日の自作自演だ!」と言う連中もいました。もちろん、何の根拠もありません。自作自演論は非常に便利です。どんなものでも、自分が嫌いなものを都合よく叩くことができますからね。


オウム真理教も、衆議院選挙に出馬し全員落選したとき、「オウムの教義が本物だから、国家が恐れて不正選挙で落選させたんだ」と考えました。落選したことを逆に自分たちの正当性の根拠としたのです。


陰謀論の大きな特徴は2つです。

1.「世間は騙されているけど、自分は真実を知った」と思うこと

2.結論ありきで、どんな証拠も自分の説を肯定することに用いること



酷いのになると、今回紹介したように、「私の説を否定する人がいるということが、私の説が正しいという証拠」という、否定しても肯定してもダメというすごい陰謀論者になるわけですが、軽めの陰謀論者ならだれでもなりうる恐れがあります。陰謀論から身を守るために、そして、自分自身が陰謀論者にならないために、既存の陰謀論とその考え方を知って、注意することが肝要です。私も、これまで以上に気を付けたいと思います。


==追記==

この記事で何度も「9.11はアメリカの自作自演」という陰謀論に言及しましたが、今回の不正選挙陰謀論の人、9.11陰謀論も信じてた…。大体1つ陰謀論を信じている人は、2つ3つ信じているものです。

どう見てもビンラディンの顔はコラージュだろ…。不自然すぎる。ちなみにこの画像、Freeking Newsというサイトのエイプリルフール号に載ったものらしいです(フォトショップコンテストという企画らしい)。


さらにこの人、wikiにも「CIA闇の組織」なんて項目を立てようとしていたらしく、それが削除されると「裏組織が本当だから削除されたのだ」と結論付けました。

発想がオウム真理教とまるで変わらない…。反論されたり否定されたり削除されたりすると、「自分が間違っているから」ではなく「自分が正しいから、奴らは真実を公表されるのを恐れているのだ」と解釈するという…。


流石にここまで強烈な陰謀論者とは、そう頻繁には関わることはないでしょうが、人は「世間は騙されているけど、自分だけは真実を知っている」という話に弱いものです。ついついそういう話に飛びついてしまいます。だから、テレビのバラエティーでも「アポロ11号は嘘」とか「タイタニック沈没は自作自演」とかの話が放送されるのでしょう。マンガや映画のネタとしてなら面白いですが、本当にそんなアホな話を信じないように、陰謀論者の思考回路を理解して、陰謀論に対して免疫をつけておくことが必要です。

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