ジョブ型の会社であるスタートアップや外資系企業に転職する上では、自分でキャリアを切り開いていく意識が求められるように思います。日系大企業であれば年功序列で何歳ぐらいに課長代理になり、何歳ぐらいに部長になると出世コースみたいなものがみえやすい一方で、スタートアップや外資系では生え抜きよりも転職組が一気に昇進して、事業を任されるケースが少なくありません。以前にこんなつぶやきをしています。

今回は本件について整理しながら、スタートアップの転職を検討する際に注意しておいた方がいいこととして書いておきます。なお、結論としては別のコラムで書いたとおり、スタートアップに転職するのであれば次のキャリアについて考えた上で転職することをオススメします。

参考:スタートアップに転職するなら次のキャリアをどうしたいか考えるべき

点ではなく線でキャリアを捉えて、次の点をどこに置くのかぼんやりでもいいのでイメージしておくことで主体的なキャリアを形成できるようになるのではないでしょうか。

評価は在籍年数ではなく、仕事ができるかどうか

年功序列型の日系大企業においては在籍年数が非常に重要なポイントで、優秀さの評価も最年少で課長になった、最年少で部長になったなど年次を基準にして早く出世することが出世のバロメーターとして使われているように思います。総合商社の三井物産の社長が序列を32人抜いたことが、新聞や経済メディアに大々的に報じられています。

「32人抜き」の衝撃 三井物産「最年少社長」誕生の舞台裏

もちろん三井物産の社長も生え抜きの人材です。

一方でスタートアップや外資系企業においては在籍年数の長さは評価として、重要度はそこまで高くありません。職能型のスタートアップや外資系企業ではポジションとそれに紐づく職務が規定されており、そのポジションを任せて結果を出せる可能性が高いかどうかが評価基準の大部分になります。

調達金額が大きくなり、企業が大きくなるほどいい人材が採用できるようになる

そして成長しているスタートアップでは、後のステージになればなるほど優秀な人材の採用が出来るようになります。資金調達金額数千万円〜1億円では社員数も10人に満たないような段階で、給与もあまり高く払うことはできません。この段階ではメンバーレベルには300万円〜400万円程度しか払えないケースも多いでしょう。露出も少ないため、知名度も低く優秀な人材にリーチするのがなかなか難しかったりします。

一方で数億円〜5億円単位の調達ができるようになると、優秀な人材に1000万円以上でオファーすることもできるようになる企業が増えるでしょう。その段階でBCGやマッキンゼーの優秀な人材をCOOや執行役員候補として迎え入れて、実際に成果を出したらすぐに昇格させるという会社も多いでしょう。また上場を見据えて、公認会計士や外資系投資銀行からCFO候補を採用するのもこの段階です。下記のような記事もありました。

2年間監査法人を入れて、次の期で上場というのが最短だと思うので、上場まで3年前後の方が多い。入社3年以下で上場という会社は「上場のために招いた」という感じでしょうか。2年未満は「最後の1ピースとして」というところかな。

出典:上場したネット系企業15社のCFOは上場のどくらい前に入社したのか?を調べてみた

彼らを採用する段階になると、生え抜きで元々いたメンバーを飛び越してその上に彼らが上司として来ることも少なくありません。

累計77億円を調達しているラクスルの創業メンバーの方のインタビューにも、自分より優秀な人材が参加することの苦悩について下記のように語っています。

別の観点ですが、個人的なところでは、自分より優秀な人が入ってきたときは辛かったですね。技術責任者になったものの、プログラミングの経験は浅かったので。ベンチャー企業であることを考えたら、成長するためには優秀な仲間が加わったほうが絶対いいに決まっていますが、当時はまだ26、7歳で、素直にそう思えるだけの余裕がなかったんです。

出典:大企業→ベンチャー立ち上げ→独立。安定を捨ててまでプログラミング教育普及に熱意を燃やす理由とは

もちろん上記は一例でしかありませんが、ステージが後になるほど優秀な人材を採用できる傾向にあるのがスタートアップだといえ、優秀な人材には同時にポジションも与えられる傾向にあるというのが実態だといえます。

会社の成長に自分の成長がついていくことができるかが出世の鍵

もしこのようなスタートアップで出世したいのであれば会社の成長に合わせて自分も成長することが出来るかどうかが大きなカギになります。

レアジョブで執行役員にまでなり、起業されたfindyの山田さんもブログでこの成長スピードについて書かれています。

降格したのはズバリ企業の成長に自分の成長がついていけなかったらです。マネジメントが下手で部下は辞めるし、KPI管理ができていないので売上予想ができないし、経営陣とのコミュニケーションも不十分。急成長した組織をマネジメントする能力も経験もありませんでした。

出典:部長から平社員に降格した理由と、降格しても辞めなかった理由

ちなみにfindyの山田さんはその後も会社に残る決断をして、自分自身を客観視することで最終的に執行役員に就任されています。

スタートアップは期限のあるお金をファンドから集めたVCから投資されており、短い期間で急激に成長することを義務付けられた会社です。1年立てば見える景色が代わり、組織の人数が3倍、5倍になることも少なくありません。そのような拡大する組織の中で最初はいちメンバーとして仕事をしていたのが、数人をまとめるマネージャー、10人以上をまとめる部長の仕事をこなせるようになることが、その会社の中で出世をしたいのであれば求められることになります。

スタートアップに参加した次のキャリアで花開かせて回収する

資金調達金額数千万円〜1億円の10人未満の創業当初のスタートアップでは、営業、マーケ、開発、顧客対応、経理など様々な業務を限られたリソースの人員で対応する必要があります。この環境で学べることは非常に多く、自分から能動的に動き、吸収する能力があれば事業を行うのに必要な能力のかなり多くが身につくといえます。本人のやる気と能力次第ですが、人事部がない状態から採用チームを立ち上げる、営業組織がない中でセールス部隊を立ち上げるなどゼロから1を生み出す業務に数多く関わることが出来る環境が豊富にあります。ゼロから1を生み出したことのある経験がある人は実はそこまで多くなく、例えば日系大企業であれば立上げ経験があるとは言っても、実は本社や周りの強力なバックアップがあっただけで、本人の能力によるものではないなんてケースも少なくありません。

そのため、スタートアップの10人未満のメンバーで参加して、次のスタートアップで参加する際に共同創業者の取締役となるケースや、次のスタートアップで前回の経験をいかして部長クラスとして転職するというキャリアを切り開くことも全然不可能なことではありません。

そして近年では、BCGデジタルベンチャーズやデロイト・アクセンチュアのデジタル部隊など、コンサルティング会社もデジタル領域に進出しています。多くのスタートアップがインターネットに関連する事業をしていることから、これらのコンサルの実行部隊に転職できる可能性は高まっているといえます。実際に、スタートアップ周りでも失敗してしまった起業家や経営陣がこれらの会社に転職するケースが出てきているようです。

以上のことからスタートアップの次のキャリアを意識して参加することで、目の前の仕事でどんな結果が必要なのか、その結果を元にどういった選択肢が生まれるのか考えておくのは自分の人生を切り開く意味でも非常に大事だと感じています。

最後に

過去にこんなブログを代表の樋口が個人ブログ内で書いたことがありますが、「転職する」という選択肢を取る上でもこの問は重要になると思っています。

起業に成功して手に入れたいのは夢か金か自由か名誉か

自分自身の欲望と深く向き合い、自分が人生において重要視してる価値観をはっきりさせることはシンプルに行動して決断する上で非常に大事なことだと思います。その際にはスタートアップに転職するリスクも考えながら、最後は自分の感情に従って、決断した選択肢を正解にする気概が大事になりそうです。