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 救急医療の現場が一変するかもしれない。縫合しなくても皮膚や臓器の傷を塞ぐことができる外科手術用接着剤が開発されたのだ。

 この接着剤はメタクリロイル置換トロポエラスチン(MeTro)というハイブリッド弾性タンパク質を基礎としたもので、体外と体内のどちらの傷にも使用することができる。
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縫合なしに傷口を60秒でふさぐ


 国際的な開発チームによると、文字通り命の救い主になる力を秘めており、傷をたった60秒でぴたっと塞いでくれる。しかも内臓や皮膚の自然な動きを邪魔することもない。

 現段階ではマウスの動脈・肺やブタの肺など、動物実験でしか試されていない。しかしさまざまな状況で試験され、従来のシーラントでは対応できない問題にも有効であることが確認されている。これまでのところは非常に有望であり、人間による治験へ向けて着々と準備が進められている。


MeTro – A breakthrough medical technology that could save lives

シリコンのような液体が傷口をもれなく接着


 研究に参加した米ノースイースタン大学のナシーム・アナビ(Nasim Annabi)博士によると、MeTroの利点は組織表面に付着するとゲル状に固まって垂れないことだという。

 塗りつけたら紫外線を照射して固める。それからさらに短光による架橋処理を用いて硬化させる。こうすることで患部に正確に使用した上で、組織表面の構造をしっかりとかみ合わせて接着させることができる。

 その使い勝手は、キッチンやお風呂場のタイルを貼る際に使用するシリコンシーラントにような感じだという。最初は液体のような状態で、傷口をその形状に合わせて埋めることができる。

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 MeTroを用いた場合、治癒時間が従来の医療用ステープラーや縫合のそれに比べて半分に短縮するという利点もある。

 また手術に用いれば、施術をよりシンプルなものにできる。救急医療の現場ではスピードが命である。MeTroならば傷や肺の穴の処置に大きな威力を発揮することは間違いない。

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 分解性酵素が混ざっているために、傷の種類に応じて持続時間を数時間から数ヶ月まで自在に変えることも可能だ。また分解したからといって体内に有害な物質を残すこともない。

 病院ではもちろんだが、戦場のような場所における怪我人の治療にも大活躍することだろう。首尾よく開発が進み一般に流通するようになれば、救急隊などの初期対応者にとって必須ツールになるだろうと研究チームは期待する。

via:sciencemag / nibib / ssciencedailyなど/ translated by hiroching / edited by parumo
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アリは有能な外科医。アリを使って傷口を縫い合わせる施術

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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 09:27
  • ID:6JewqOdK0 #
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瞬間接着剤も元々は野戦病院などで迅速に傷口をふさぐ、戦場医療を目的として開発されたんだよね(パーツ同士より指同士がくっつきやすいのも納得である)。

私も指切ったりした時は、瞬着で傷口くっつけている。

2

2. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 09:34
  • ID:mDXrIgIt0 #
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goodbad+6
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止血用の瞬間接着剤は昔からあるけどそれとは違うんだね

3

3. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 09:53
  • ID:gn3e7lYC0 #
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まさかこれは例のナメクジ接着剤が実用化されたとかそういうあれかな

4

4. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 09:53
  • ID:SfK0Q3Ga0 #
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goodbad+9
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>分解したからといって体内に有害な物質を残すこともない。
すごく重要
民生用に普及したときに、粗製乱造されないことを願いつつほしい逸品だね

5

5. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 09:55
  • ID:8WGvgVqx0 #
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60秒で治療しな!

このコメントへの意見(1件): ※10
6

6. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 09:58
  • ID:zGAkWnyV0 #
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ホッケーで昔から使ってたじゃん、と思ったけどそれとは違うのか。

7

7. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 10:01
  • ID:OYD2q.iK0 #
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人体補充剤とは…、SFが来たね~。

8

8. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 10:11
  • ID:5S441PCv0 #
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ずっと先の未来はips細胞みたいなのが接着剤になっていくんだろうなあ

9

9. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 10:13
  • ID:52HB6.w.0 #
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ベホマかよ。

このコメントへの意見(1件): ※26
10

10. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 10:17
  • ID:8525SSh90 #
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※5
グズはきらいだよ。

11

11. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 10:20
  • ID:h50fiddM0 #
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これが完成すれば
バイオシリーズの緊急スプレーが現実になるのか

12

12. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 10:21
  • ID:2vThYz5U0 #
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1枚目の傷跡、接着剤の透明度が高くて懐中電灯で照らしてクレバスみたいな肉の断面をじっくり見たいという衝動が…ウゴゴ

13

13. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 10:22
  • ID:BGC4DhDg0 #
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いや、紫外線硬化シーラントは日本じゃすでに歯医者で使ってるだろ。

14

14. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 10:29
  • ID:KatQJ5GD0 #
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アロンアルファでやってるわ

15

15. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 10:36
  • ID:iEWg6Aqt0 #
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スプレーにしたら救急スプレーになるやつだ

16

16. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 10:39
  • ID:zbiY0lY30 #
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米軍あたりはもうとっくに使ってたりしてそう

17

17. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 10:39
  • ID:HQYvaUAz0 #
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手術や治療のハードルをさげることになるから途上国の命を救うことにもつながりそう。アイデアが革命的なことも加味したらノーベル賞級じゃね?

18

18. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 10:47
  • ID:8vv58.Mw0 #
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縫合が難しい混み合った裂傷とかを、まとめて塗り込めて塞ぐこともできる、ということだろうか。

19

19. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 10:49
  • ID:SrjpwAC.0 #
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すごい未来っぽい

20

20. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 10:55
  • ID:PU35lm9P0 #
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こんな物簡単に一般販売できないよ
完全な殺菌できているか判らないのに傷を閉じれば後が大変
と、ヤブ歯科医に抜髄後適当に殺菌して閉じられ5年後歯根から歯槽までごっそり抉る手術を
受けた俺が断言

21

21. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 10:56
  • ID:MC5B708i0 #
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医療用ホッチキスといい、この接着剤といい、医療用品の文房具化がとまらない!

22

22. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 10:58
  • ID:i9p7D8030 #
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接着剤つけてラップ巻いて完了という時代がくるのかな

23

23. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 11:00
  • ID:a3HsRnLi0 #
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素晴らしい!!!

24

24. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 11:25
  • ID:Pc2QO1te0 #
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戦場だとガムテープが必須だけど、この接着剤が
あるとこの道具が必須アイテムになるかもしれん

25

25. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 11:26
  • ID:SxdMSyo80 #
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え、みんな傷口くらい一瞬で塞げるんじゃないの?
俺の友達は腕がもげても生やせるし君たち貧弱すぎじゃ

26

26. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 11:32
  • ID:Au4AUlmL0 #
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※9
最大回復はしないからね?

27

27. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 12:07
  • ID:Ia8gIV5O0 #
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プロメテウスも納得!

28

28. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 12:15
  • ID:BzNyB0g10 #
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持続時間を変えられるってのがミソだね。
止血程度の応急手当なら数時間で分解されるやつを使って医療機関へGO。
その後、ちゃんと手当てして長期間用を使うとか。

29

29. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 12:20
  • ID:gG8RxLFX0 #
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でもそんなに瞬時に引っ付いてしまうとなると、失敗や悪用が怖いし市販はされないよね
やっぱり理想は肌に吸収される傷口パッチだなぁ

30

30. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 12:34
  • ID:8BeB4ehJ0 #
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こういうのって組織と組織が繋がるのを邪魔する「壁」になってしまわないの?

31

31. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 12:46
  • ID:0AMuVm.40 #
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応急手当てで止血可能な怪我の範囲が広がるのは、生存率向上としては良いね

32

32. 匿名処理班

  • 2017年10月16日 13:23
  • ID:ZvIiilDj0 #
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擦り傷には使えないな

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