関西の肉屋には、幸せの詰め合わせみたいなホルモン焼きが売られていました。
大阪へ行く用事ができたので、以前に書いた「じゃりン子チエに出てくるホルモン焼きを探す旅」という記事の続きができないかなーと調べていたら、ごく一部だが肉屋の店頭でホルモン焼きを売っていることがわかった。
そうか、チエちゃんは仕入れ先の肉屋に嫁いで、そこでホルモンを焼きだしたのか。いや、そういう架空の設定作りはもういいか。とにかく焼肉屋とも串焼き屋とも違う、肉屋のホルモン焼きを巡ってこよう。 ※編集部注:なんと尼崎を大阪と勘違いしてたため、公開後一部修正しました。大変失礼いたしました。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。
前の記事:「埼玉県出身の素潜り漁師に生き方と潜り方を聞いてきた」 人気記事:「一番安い寝台車のシート、ノビノビ座席で寝てきた」 > 個人サイト 私的標本 趣味の製麺 ダウンタウンも食べた尼崎の山里食品へまず最初に向かったのは、尼崎市にある山里食品(大阪といいながらいきなり兵庫ですみません)。関西の人には有名な話らしいのだが、ダウンタウンの同級生がこの店の子なのだとか。
ダウンタウンの出身地というくらいだから、かなりディープな下町なんだろうなと想像しつつ、JR尼崎駅を出てみるとと、広い道路と巨大なショッピングモールが現れた。 勝手に想像していた尼崎のイメージとちょっと違う。
ここは本当に尼崎なのだろうか。後日、尼崎市出身の友人である岡野さんにメールで聞いたところ、以下のような答えが返ってきた。
岡野さん。佐渡のイベントで知り合った時、ずっと柿の渋をとるための焼酎を飲んでいた。
「昔はビール工場しかない寂れた駅でした。そこが廃業して、ずっと空き地だった場所が再開発され、普通電車しか止まらなかったJR尼崎駅が、快速、新快速の止まる一大プラットホーム化したことにより、今のような栄えた駅になりました」
岡野さん、しゃべりはバリバリの関西弁なのに、メールの文章は丁寧な標準語だった。 ダウンタウンが子供の頃から何十年も経っているので、街並みは変わっていて当然なのだろう。 ダウンタウンの聖地めぐりをしている訳ではないのだが、ちょっと残念。
JR尼崎駅から、見覚えのあるチェーン店が並ぶ通りを北に進むと、全体がオレンジ色の派手なお店が見えてきた。
これが目的の山里食品なのか。お肉屋さんと沖縄食品店のせめぎ合い。看板には牛や豚ではなく、シーサーとハイビスカスが描かれている。 なるほど、こういう店なのか。 大阪色の強いホルモン焼きを探しに来たら、なぜか沖縄に辿りついた。
岡野さんによると、尼崎は大正区と並んで沖縄の人が多いのだとか。
沖縄は豚肉をよく食べるというが、その流れで豚のホルモンを中心に扱っているのだろうか。
これが山里食品のホルモン焼だちょっと肩すかしを食らった感もあるのだが、とりあえずはこの店のホルモン焼きを食べてみなければ。
メニュー表記は「ホルモン焼」と送り仮名を削ったタイプで、お値段は100グラム200円。買い食いに適正な量がピンと来ないのだが、はるばる尼崎まできて200円分だけというのも虚しいので、200グラムの400円分でお願いした。 100グラム200円!
ホルモンを前に「写真撮っていいですか?」と聞いている自分が、遠くから来たダウンタウンマニアっぽくてちょっと恥ずかしい。いや好きですけど。
「爪楊枝、入れときますか?」とおねえさん。お願いします!
沖縄系のお店らしく、豚の耳や足も売られている。ならば豚足も買っておくか。
肉屋っぽい王道の揚げ物もある。しからばミンチカツもいただこう。関西ではメンチカツじゃなくてミンチカツ、ヒレカツじゃなくてヘレカツというのが普通らしいよ。
お金を払って商品を受け取り、近くにあったベンチでさっそく。
爪楊枝が挟まっている方がホルモン焼、もう一方が豚足である。 新聞紙に包まれている食べ物、すごい久しぶりのような気がする。
新聞紙を開くと、薄い紙の蓋越しにたっぷりのホルモンが透けて見えた。内臓シースルー!
そしてドーン!包まれている中身を知っていたけど、やっぱり興奮してしまう。
うおー、濃そうだ。さすがは南国の沖縄で生まれて、この尼崎の地で磨かれたホルモン焼である。見事に茶色い。
部位は豚の腸と肺あたりだろうか。バレンタインのプレゼント、チョコが苦手な人にはこれがいいんじゃないだろうか。 まずは全体の八割を占める腸部分をいただこうか。
入れてもらった爪楊枝で指して、その濃厚な匂いで我が胃酸を呼び出しているホルモン焼をいただく。
濃い!すごく濃い!濃いだろうなとは思っていたけれど、その予想よりもさらに濃い!だがそれがいい!もう後戻りのできない濃さだ! この一口に、これぞホルモンという強いエネルギーを感じる。タレの味が濃いのもあるが、臭みは全く気にならない。爪楊枝で指して食べるものといえばタコ焼きだったが、それと並ぶ刺し心地といえるだろう。 こっちの茶色い部位も歯ごたえがあってうまい!
ここまでの濃さは、東京の五反田に勤めていた時、ランチ営業をしているスナックが出すカレーの金曜日版に似ている。その店は月曜にカレーを作って、それを金曜まで温め直し続けていたのだ。それくらい濃い。
甘いとかしょっぱいとかではなく、とにかく濃い。そんな味付けなんだけれど、これが全然飽きない。白飯かビールでも買っておけばよかった。 ミンチカツは安心のうまさ。
豚足は冷たいので、買い食いには向いていないようだ。
もしかして沖縄の肉屋では、このようにホルモンを店頭で焼くスタイルが当たり前なのかと思い、以前沖縄に住んでいたことがある編集部の安藤さんに聞いたところ、そんな店は見たことないとのことだった。
豚足は宿に持ち帰って温めたところ、柔らかくてとてもおいしかったです。プルンプルン。
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