亡き人の命日は、家族や親しい人の心に刻まれる。だが世に多くある書籍や論文の書き手がいつ亡くなったのか広く知られているわけではない。国立国会図書館関西館(京都府精華町)の仕事の一つが「没年調査」だ▼著作権の保護期間は50年。著者の没後、半世紀たてば誰でも自由に作品を利用できる。国会図書館が収集時にデジタル化した所蔵資料も、保護期間が終わるとインターネットで公開され、研究や創作に役立てられる▼価値ある資料も没年が不確かなら公開できない。関西館では担当職員3人が奥付や序文、他の資料にヒントがないかを丹念に調べている。デジタル化した図書97万点のうち、保護期間満了が確認されたのは27万点。先は長い▼こうした作業を郷土資料を使って後押ししようと先ごろ、京都府立図書館(京都市左京区)司書らのグループ「ししょまろはん」が調査イベントを開いた▼肩書や経歴に「京都」が含まれる著者を調べ、同窓会の記念誌や新聞の訃報で確認したり本の端書きに追悼文を見つけたりした。32人の没年が2時間で判明した▼ネット公開された国会図書館の資料はパブリックドメイン(公有財産)と位置付けられる。司書らは「新たな文化を生み出すために活用を」と願う。地道な作業が文化の継承を支えている。
[京都新聞 2017年10月16日掲載] |