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59人殺害「ラスベガス乱射事件」それでも米国から銃が消えない理由

「最強の利益集団」その影響力
アメリカ「史上最悪」の銃乱射事件は、規制の議論に何をもたらすのか? 政治家や全米ライフル協会(NRA)はどう変わっているのか? また世論は動いているのか? アメリカの銃規制にくわしい成蹊大教授・西山隆行氏は今回の事件とその影響をどう見ているのか。
 

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「殺したのは銃ではなく人」

2017年10月1日にネヴァダ州ラスベガスで起こった銃乱射事件は、59名もの人が死亡する史上最悪のものとなった。この事件を機に、アメリカでは銃規制の在り方をめぐって様々な議論が展開されている。

驚くべきことに、スティーヴン・パドック容疑者が宿泊していたホテルからは23丁の銃が、そして容疑者の自宅からは19の火器と数千の銃弾が見つかった。

容疑者が使用した銃は、半自動小銃に「バンプ・ストック」と呼ばれる装置を付けて全自動で連射することを可能にしたものだったとされる。

今日のアメリカでは、全自動の銃を一般人が持つことは禁止されているが、半自動小銃を持つことは認められるし、バンプ・ストックも合法的に購入できる。

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この事件が起きた当初、民主党の有力政治家は銃規制強化が必要だと発言した。他方、共和党指導部は、今は悲劇が起きた直後で混乱しているので、冷静になってから議論すべきだと主張した。

また、トランプ大統領は容疑者について「非常に病的だ」と発言するとともに、罪を犯す可能性がある者の精神状態、メンタルの問題に取り組むことが必要だと主張した。

共和党指導部やトランプの反応は、銃に関連する事件が起こったときに、全米ライフル協会(NRA)の支持を得ている政治家が見せる典型的なものである。

NRAは、「銃が人を殺すのではなく、人が人を殺すのだ」というスローガンを掲げていて、銃乱射事件を人の問題として位置づけ、銃規制強化に議論が進むことを避けようとする。

NRAの支持を得て当選した人々は、世論が銃規制強化の方向に進まないように注意を払っていたのだろうと予想される。

 

規制強化でも防げないケース

銃規制強化を主張する人々は、これまで様々な具体案を提示してきた。

例えば、銃購入希望者に身元調査を実施したり、精神疾患のある人やドメスティック・バイオレンスで捕まったことのある人への銃の販売を禁止したりすることなどだ。

また、今年9月にサウスキャロライナ州選出のジェフ・ダンカン議員(共和党)が、銃声を和らげるためのサイレンサーの購入を容易にするための法案を提出していたが、それに反対する人もいた。