希望の党が「企業の内部留保に課税しよう!」という政策を提言しました。

これは馬鹿げた提言だけど、政治家としては狡猾な「ウケ狙い」だと思います。

なぜなら日本にもポピュリズム的なムードは蔓延しているし、企業の内部留保に課税したところで大部分の有権者の腹は痛まないからです。

日本の株式は、おもに外人投資家や企業同士の株式の持ち合いで保有されており、個人が占める割合は17%程度に過ぎません。米国の場合、この比率は約5割です。

だから希望の党の「企業をこらしめろ!」的なトークは、無知な有権者の耳にこころよいというわけです。

しかし株式や不動産などの資産を持っていないことを礼賛するような社会は、どこかアタマのネジがはずれている社会のように思います。

実際、カール・マルクスの理念を採りいれて、社会主義に移行した国は、マルクスが当初想定したような資本主義が高度に発達した国ではなく、早い段階で社会がガタガタに崩れた帝政ロシアや中国のような情けない国でした。

トマ・ピケティは『21世紀の資本』の中で投資のリターン賃金労働のリターンより高く、しかもその傾向は強まっていることを指摘しています。

これは資本家、つまり「資本主義の豚(Capitalist Pigs)」がどんどん裕福になる一方で、自分の人生という時間を切り売りする労働者がどんどん取り残されることを意味します。

ピケティはその解決法として裕福層に対する課税を提言していますが、ここで彼の主張は彼自身が同書で示した歴史的事実から目をそむけ、「お花畑」の理想論へと入っているわけです。

なぜなら、歴史的には格差解消に唯一、効き目があったのは世界大戦だけだから。

従って、本気で格差解消を主張するなら、「ここらでイッパツ、デカい戦争をおっぱじめようぜ!」ということが、当然、主張されなければおかしいのです。それが科学の立場というものです。

もちろん、僕は戦争はイヤです。

すると(ヤレヤレ、どうやら格差は無くなりそうにないな)と村上春樹風にタメイキをついて、現実に立脚した身の処し方を考えるのが、いちばん良いように思うのです。

いまはモノが満ち足りた社会なので、人々の関心事は、モノを所有することから体験へと移っています。

そこでは利便性エンターティメント性が重視され、それらを実現する介在者としてのテクノロジーの役目もどんどん重要度を増しています。

これらのことを踏まえた上で、僕が考える「新しい働き方」とは、次のような要件を満たす生き方だと思います。


1. 投資を労働に優先すること
2. テクノロジーを駆使すること
3. 自分の会社を持つこと


まずサラリーマンとして、雇われの身で、自分の時間を切り売りしている限り、じり貧から抜け出せません。

つぎに蒸気機関が肉体労働者や家畜の仕事を奪ったように、ITはホワイトカラーの仕事を奪うと思うので、「テクノロジーを使う側」に回らないと、賃金下落圧力などの、イノベーションにつきもののデフレ効果の犠牲者になってしまいます。

自分の会社を持つことは、将来の資本戦略の自由度を増し、富の蓄積の速度を加速し、さらに税金効率を改善するメリットをもたらします。

逆にやってはいけないことは:

1. むやみに従業員を雇う
2. 事務所を借りるなど、「器」にこだわる
3. 通勤する
4. IT機器などへのムダな投資
5. ドメイン・エクスパティーズにこだわる


だと思います。いまはアマゾンのAWSのようなサービスがあるので、自前で「抱え込む」経営をするのは馬鹿げているし、いくら投資したところでスケール・メリットは出ません

またシェアリング・エコノミーが常態化しているので「借りて済ます」ことへのスティグマは無くなっています。皆が「借りて済ましている」のに、自分だけ所有していたのでは、コスト競争力が出ません。

そのうえビジネス・チャンスの賞味期間はどんどん短くなっており、変幻しています。ひとつのビジネス・チャンスに最適化するカタチでビジネスの器を用意しても、瞬く間にその器は不要になるかも知れないのです。つまり世の中が「オン・デマンド・エコノミー」の方向へ流れているのなら、自分のビジネスもオン・デマンド・ビジネスになるべきなのです。

同様に、ドメイン・エクスパティーズ(専門領域を深く極めること)の価値も、生鮮食料品のようにどんどん賞味期間が短くなっています。資格とか、技能とか、そういう形式的なことばかりにこだわっていても、自分のノウハウや専門性そのものが陳腐化するリスクが大きいです。

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