ナポリ3区の有権者のみなさま、こんにちは。新党アルデンテ代表パオロ・マッツァリーノでございます。
選挙前恒例、勝手にマニフェスト発表、のつもりで、今回はいつもの思いつきアイデアでなく、以前から調べていたベーシックインカム(長いので以下BIと略します)を提案しようと思ってたら、なんと希望の党が公約のひとつに掲げてるではありませんか。
ただ、党のサイトを見たかぎりでは、具体的なことは一切書かれてないんですよね。ホントにわかってるのかな? なんかこの党、公約のすべてが適当なんです。その証拠に、希望の党は福祉の財源をあきらかにしてません。かたや自民党はどうかというと、財源としての消費税率アップは明言してるものの、あいもかわらず場当たり的な福祉政策ばかり。旧来の福祉が限界を迎えている国難は無視ですか。
となると、合理的な選択肢はこうなります。消費税を10パーセントに上げて、その代わり月額5万円のBIを導入する。これが新党アルデンテのマニフェスト。
そもそもBIとはなんなのか。生まれてから死ぬまで、全国民に無条件で毎月一定額のお金を支給する、合理的かつ画期的な福祉制度のことです。
なんでそんなのをやる必要があるんだ、といってるのは危機意識ゼロの人。いまの福祉がすでに破綻の崖っぷちにあることをわかってません。いまのままで福祉が続けられると思ってる? 続けるための妙案をお持ちですか。ないでしょ。ないんですよ。専門家ですら、お手あげなんですから。そんななか、現行の福祉制度のダメな点を解消できる可能性がある最後の切り札として、BIに注目が集まっているわけです。
年金、医療、教育と、必要になるたびその都度、場当たり的に増やしてきたもんだから、いまの福祉は複雑にふくらみすぎました。それを、可能なかぎりまとめて単純化しよう、ってのがBIです。
そのためには、困ってるか困ってないかに関係なく、最初からみんなに同じ金額をあげちゃえばいいんですよ。単純明快でしょ。公平でしょ。
現実問題として、誰だってなにかに困ってるんですよ。なにも困ってないといえるのは、よほど運とカネに恵まれた人のみです。みんななにかしらに困ってるけど、自分より困ってる人がいるから、とガマンしてるだけ。
極論では、すべての福祉をBIに一本化するのが理想ですが、それを一気にやるのはムリがあるので、いまの福祉制度も残します。でもBIをやれば、いまの福祉をかなり軽減できるはずです。
現状では福祉の受給資格の審査や不正の調査に、かなりの人員と費用を投入しています。BIなら無条件で支給されるのでムダな調査が省けます。BIなめんな、なんておそろいのジャンパー着て、受給者を脅す必要もありません。
いまの福祉って、困っている人が、自分がいかに困っているかをアピールするオーディションを受け、合格しないとお金をもらえない制度です。自分の権利を主張することを恥だと教えられて育つ日本人にとって、これは屈辱です。福祉を申請せずに餓死することを選ぶ人すらいます。
無条件でもらえるBIは、権利を主張できない奥ゆかしい(?)日本人にこそぴったりの制度なのです。
問題は、金額をいくらにするか。海外での実験例では、ひとりあたま日本円にして月30万円支給とか、設定がデカすぎます。それでやっぱりうまくいかなかったぞ、っていうけど、最初からわざと失敗させることを狙ってるとしか思えません。
最近邦訳が出て話題になったブレグマンさんの『隷属なき道』では、BI実験の成功例をいくつも紹介しています。反対派の人たちが失敗例としてあげていた実験も、じつはかなり成功してたのに政治家への報告書の段階で改竄されていたというスキャンダルも暴露されてます。
経済学者や税制の専門家が、日本の財政状況をもとに試算したところでは、日本では月7万円くらいなら、いまの税制などを大幅に変えることなく実行可能だとのこと。なので私は月5万円、さらに大事を取って財源としての消費税アップという現実的な線を提案したんです。
月5万円って、なかなか絶妙な設定だと思います。5万あれば、東京でも安アパートになら住めます。少なくともホームレスになる心配はなくなります。なにしろ政府が保証人になってくれるようなもんですから。
生まれてこのかたカネの苦労や心配をしたことのない人はわからないかもしれないけど、貧乏人にとって月5万の定期収入が生涯保証されるって、スゴいことなんですよ。
BIなんてやったら、働かないヤツが出てくるという批判があります。月5万でもムリすれば働かずに生きられるかもしれませんが、BIは生活保護とちがい、収入があっても減らされません。少しでも働けば5万プラス給料でもっといい生活ができます。労働意欲は削がれませんよね。
BIに反対してる人の理由は察しがつきます。全員にお金をあげるBIのしくみが「働かざる者食うべからず」という道徳理念に反するから。でしょ?
それはあまりにも世間知らずな考えです。真実を教えてあげましょう。「働かざる者食うべからず」という理念こそが最大の偽善なのです。あ、私は偽善を否定しないのですが、あえてポピュリズム的な感覚に寄せて、わかりやすく偽善といわせてもらいます。
現実の世のなかには、がんばって働いたって食えない人がたくさんいます。たとえば、介護や保育の職員はどんなに働いても安月給で家族も養えないから離職者が絶えないと、以前から問題になってます。ご存じないですか?
「働かざる者食うべからず」という命題が成立するためには、「働けば必ず食える」という保証が必要不可欠です。その保証もないのに「働かざる者食うべからず」とダマして働かせるのは偽善どころか、もはやサギです。
「努力は必ず報われる」もウソですから。インチキ宗教が、拝めば難病が治る、治らないのはおまえの信心が足りないからだ、っていうのと同じロジックで、おまえが報われてないのは努力が足らないからだ、とすべてを個人の努力不足のせいにできるのです。
現実の世のなかでは、努力は報われないことのほうが圧倒的に多いのにね。努力しても報われないから、福祉というものが必要なんです。努力が必ず報われるなら、福祉は必要ありません。それどころか、個人の自助努力ですべてが解決可能なら、国も政府も神も要りません。かなり危険なアナーキズムですよ。共謀罪で取り締まりますか?
とまあ、私がこれ以上説明しても、怒る人が増えるだけなので、参考書をおすすめしておきます。
原田泰『ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか』中公新書
経済学者がまじめに制度の是非について検証しています。まじめだけど、決して難解すぎない、ってのが評価のポイント。原田さんは私と違って、アタマの悪いヤツらを皮肉でからかうような下品なマネはしてませんので、BIに懐疑的なかたも安心してお読みになれます。
とにかく用意周到に、反論されるであろうポイントを先回りして押さえてます。経済理論的な面からBIを知りたいなら、この一冊でじゅうぶんだと思います。BIが決して絵空事ではなく、頭を柔らかくして意識を変えれば実現可能であるとわかるはず。ぜひ読んでみてください。
[ 2017/10/15 20:37 ]
未分類 |
TB(-) |
CM(-)