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前川喜平さんインタビュー「衆院選は加計森友隠しの安倍政権に審判下すチャンス」

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安倍首相のお友達に特権与えた

一方で、獣医学部の方は規制は残して加計学園にだけ特権を与えるから、薬学部のようなことが起こらないわけです。獣医学部は現在16大学しかなく、獣医学部の入試の競争率は極めて高い。そうすると、加計学園の獣医学部でどんなに学生募集が遅れたとしてもとにかく来年の4月に開学できれば、必ず定員はいっぱいになる。どこでもいいから獣医学部に入りたいという学生がいるからです。だから加計学園の側から言えば、食いっぱぐれがないのです。定員割れで四苦八苦しなくていい。それは規制があるからなんです。そういう特権を安倍首相はお友達に与えたということです。濃厚な状況証拠があることは事実です。

 自民党の二階俊博幹事長が、今回の解散を「加計・森友疑惑隠し」と野党が批判していることについて、「我々はそんな小さな問題を隠したりなどは考えていない」と記者会見で語っていましたが、これは安倍政権と自民党の本音ではないかと思いました。同時に、安倍政権が加計・森友問題を小さな問題と思っているということは、同じような行政私物化、国家公務員の「下僕化」は、今は表面化していないだけで各省庁のあちこちにあるのではないかと危惧しています。

 ――国家公務員の「下僕化」の原因は内閣人事局の存在にあるということでしょうか?

 複合的な要因があると思いますが、そのうちの1つが内閣人事局による幹部人事の掌握だと思います。実質的な権限は官房長官が持っています。私の経験では幹部人事だけでなく、課長の人事に官邸が介入してきたという事実もありました。

 森友学園を巡る問題に関し、国会で「当時の交渉記録は破棄した」などと答弁した財務省理財局長だった佐川宣寿さんが国税庁長官になったり、安倍昭恵氏付職員だった谷査恵子さんがイタリア日本大使館1等書記官になったりで、安倍政権による国家公務員の「下僕化」は極まっています。

 佐川さんは論功行賞で、谷さんは論功行賞であると同時に、国外に置いての「口封じ」という側面も強いと思います。

 いずれにせよ、国家公務員は、「全体の奉仕者」にもとることをさせられているときにどうするかが問われています。現在の無権利状態に置かれている大変不十分な状況の中でも匿名でリークすることはできます。加計学園の問題では匿名で文部科学省の職員がリークしています。その中には私の知らない職員も頑張っているわけです。厳しい現状の中でも何らかの工夫で「全体の奉仕者」としての役割を発揮してもらいたいと思っています。

 ――今回の選挙では、自民党と希望の党、日本維新の会が公約として憲法改正を掲げています。

 私は憲法改正に反対です。とりわけ憲法9条は改正すべきでないと考えています。集団的自衛権を憲法9条のもとで認められるとするのは暴挙です。立憲主義に反しています。

 立憲主義というのは国民がつくる規範があって、その国民がつくる規範で政府や権力を縛る必要があり、その規範が憲法だということです。縛られている側の権力が、縛っている憲法を解いてはいけない。縛られている側がいくらでも解いていいなら縛っている意味がなくなってしまいます。

 憲法が憲法でなくなってしまいナチスの全権委任法のような状態に陥り、どこまでも際限がなくなってしまう。立憲主義を守るというのは権力の暴走を防ぐ最低限の条件だと思います。

 2年前に安保法制が強行成立させられて立憲主義が崩れたわけですが、このままだと際限なく崩れていく危険性があります。

憲法9条は人類史の成果  私は安保法制は憲法違反だと思っているし、それを追認するような憲法改正はすべきではないと考えています。憲法9条が国外に行って戦争をしないということの歯止めになっていると思うので、憲法9条を守るべきだと思っています。

 改憲を主張する人は、今の憲法は自主憲法でないとか、日本民族の憲法じゃないなどと言いますが、民族性ではなくて人類史の多年にわたる努力と成果の中で形づくられたものが今の憲法と見るべきです。

 たとえば、憲法9条は1928年のパリ不戦条約にある戦争の違法化など人類の知恵の積み重ねの中で生まれたもので、人類史の中で燦然と輝いているわけです。

 こうした人類の憲法と言える9条をいかに大事にしていくかが問われています。第2次世界大戦後に世界でいちばん戦争している国はアメリカですよ。世界でいちばん戦争をしているアメリカと一緒に海外で戦争をする法案は絶対に作るべきではありません。今のままの9条改憲は集団的自衛権を認めることになるわけで、絶対に許してはいけないと考えています。

 私は現役の文科省職員だった2年前、安保法制反対の国会正門前デモに参加してシールズと一緒にラップコールも行いました。安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合のみなさんと同じ思いを持っています。

 他の国では平気で消防士がストライキを打ってたたかっていますが、日本の公務員は労働基本権が厳しく制限されています。そして、日本ほど国家公務員の基本的人権が過度に制限されている国はありません。表現の自由、つまり政治的行為が強く制限されていて、とても民主的な先進国とは言えないぐらい制限がきつい。そして労働基準法が適用されないのも酷い。政府は「働き方改革」と言うなら国家公務員の働き方をきちんと改善して欲しい。どんどん定員削減はされるし、仕事は増えるし、政治家はいくらでも公務員バッシングしてもいいと思っている。でも、少なくとも団結権と部分的には団体交渉権があるわけですから、国家公務員の労働条件を改善するとともに、国民本位の行財政・司法のために労働組合には頑張って欲しいと思っています。

前川喜平(まえかわ きへい) 1955年奈良県生まれ。東京大学法学部卒。1979年文部省(現文部科学省)に入省し、初等中等教育局長、文部科学審議官、文部科学事務次官などを歴任し、2017年1月退任。加計学園問題で今年5月に記者会見し「行政がゆがめられた」と告発。7月には国会で参考人としても告発した。

▼前川喜平さんのインタビューの一部を視聴できます。

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