Mちゃんの経世済民!

2009-10-25

とりま、直接民主制のダメなところを理解しようAdd Star

なにやらネットで10万人規模の直接民主制が可能、との発言が議論を呼んでいるようで。その可能性を探っている人も批判的な意見もあるのだけど、おのおので何か噛み合っていないというか、レイアーがそろってないんだよな。なので今後の議論のためにも直接民主制のダメと言われるところを整理して挙げてみる。

結論から言えば直接民主制のデメリットってのは3つに大別できて、ネットでの直接民主制はそのうち1つを解決できるに過ぎない。なお大別できるデメリットは以下の通り。

  1. 大衆は十分な能力がないからダメ
  2. 意見が多く出すぎてまとまらないからダメ (←ネットが解決できるのはコレ!)
  3. 直接民主制マイノリティーの無視を正当化するからダメ。

以上三つ。ではそれぞれ簡潔にわかりやすく述べていきたい。

大衆は十分な能力がないからダメ

この市民自体がダメ、というデメリットはさらに2つに分けられる。1つはいわばエリート主義的な考えで、「一般人は無知だから、政治は政治のプロの政治家(あるいは官僚)に任せた方がよい」ということ。学者でいえばシュンペーターがこの考えを持っていて、政治に口出しする一般市民を「弁護士が専門を離れたことに意見するようなもので、的外れなことをさも真実のように語る」と弊害を指摘している。でも本当に市民に能力があるのか、ないのかってのは検証しずらいよね。一部のオピニオンリーダーたちは確実に有能だし。

一方のもう1点は非常に簡単。「市民の熱心さは続かない」ということだ。イメージして欲しいのだが、日本では年間100本以上の法案が提出される。ではこれらの法案を吟味して賛成・反対を市民が毎回投じることができるのだろうか?しかも無報酬で。もちろんそんなことはできないだろうと思う。アリストテレスの「国家」ににもギリシアの民会で配給をもらうためにかったるいなあと言いながら出席する市民が登場する。ネット上で討論や採決が行われることで肉体的な負担は減ったにせよ、素人が仕事の合間に政治をやるには無理がある。平日に仕事をこなして、土日に年間100本の立法を評価・採決できますか?つまり、直接民主制は地域のボランティアや、マンションの理事会に一生懸命になれる性格の人ではないと不向きということだ。こう考えると暇を持て余す老人がより参加して、忙しい若者は参加しにくいので、ネット導入によってますますシルバー・ポリティクスが促進するという逆説的な可能性もある

意見が多く出すぎてまとまらないからダメ

ネットで解決できるのはこれ。今まで直接民主制は多すぎる意見を統合するのが無理、あるいは人数が多すぎて話し合うのが無理、という問題があった。この点はネットというツールと工夫次第で解決が可能になった。例えばある人(オピニオンリーダー)が意見を書いたらハテブみたいに他の人がブックマークしてその上位の意見を考慮だとか、エロサイトや2chのまとめブログにあるようなアゲサゲ投票で意見に得点をつけてもいい。ようは「多くの意見を出して」、「順位付け」ができるようになったことがネットでのイノベーション

直接民主主義ではマイノリティーを無視することが正当化される

これは極めて深刻な問題で、例えを挙げるとしたら農家だ。仮に直接民主制関税の議論がされたとしよう。関税を0%にすれば米価は5分の1になり、その他の食品も数分の1の値段になるとする。単純に言えば年間の食費が数分の1になる訳だ。有権者たちは「日本の農家が・・・」と思いながらも、直接民主制下ではきっとこの法案は可決されるだろう(少なくとも可決される可能性がある)。そして農家は文句を言ったところで「民主主義のルールにのっとって決まったこと」で却下だ。今までは政治家に文句を言えばよかったのだが、そもそも文句を言う相手すらいなくなる。文句を言うべく市民に向けてブログでも書くか「魚沼で働く零細兼業農家ブログ」。

というわけで、間接民主制では議員の理性(や特殊な政治力学)によってマイノリティーの意見も汲み取れる環境にあったのが、直接民主主義下ではその名のもとに完全にマジョリティーの意見に押しつぶされる運命にある。

まとめ

以上で述べていることまとめるとこうなる。

  •  インターネットで可能となったことは「多数の意見を出すこと」「(多数の意見を議論させること)*1」「多数の意見から国民目線で順位付けすること」の3つ。
  •  それ以外にも直接民主主義は問題があり、「大衆が政治参加することで衆愚政治に陥る」「そもそも市民は政治に真剣に取り組まない」問題や「少数意見が完全に無視される」という3点は全く解決できていない。

もちろん打ち手次第でかなり解決できる。例えば立法議員が行って、採決をネット投票とかにすればかなり直接民主主義的だし(だるい民会という問題は解決できないけど)、ハテブ方式で500万件ブクマが集まったら立法とかの署名作業はインターネットで相当やりやすくなったと思う。

最後にA・トフラーの『富の未来 上巻』だったかな?とりまなんかの本から心に残ってるフレーズを。

「人や社会は急激に変わったのにも関わらず、政府民主主義の方法はその誕生からほとんど変わっていない」

民主主義も人や社会や技術の変化を取り込んでよりいい制度にしていけばいい。そう思っております。

 

 

他の方の意見

*1:これはカッコ付だね

^shige^^shige^ 2009/10/28 08:58 なぜギリシアが衰退したか、ローマ帝国が飛躍したかを
考えると直接民主制が正しいとは限らないのがわかりますね。

ギリシアは直接民主制でしたけども陶片追放などの
衆愚政治で衰退しました(ポピュリズムによる
有効な政策が継続できなかった)。

一方、共和制をとったローマ帝国は地中海の覇者として
繁栄をすることになったわけです。

まぁ、そのローマ帝国も帝政になるわけですが
やっぱりこれはカエサルとアウグストゥスの共和制からの
移行が上手かったのでしょう。

こういった歴史を経て進化してきたので
いまさら現代の陶片追放的な総直接民主制にするとは
どうかと思います。

むしろ時間が立つにつれ組織は既得権益で硬直化して耐用年数が
あります。これはどんな優れたシステムでもそうなので
官僚制も大きく形を変える必要があるんじゃないですかねぇ。

eiei 2011/03/03 02:55 3つのうち2つを問題点としていますが、欠点の解決を試みるべきではないでしょうか。
例えば本気でない大衆をフィルタするために多数決制をやめるべきかもしれません。

*** 世界を取り戻そう ***

---以下は私のHPではありません
//en.wikipedia.org/wiki/List_of_direct_democracy_parties
//ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E6%B0%91%E4%B8%BB%E5%85%9A
//ja.wikipedia.org/wiki/Demoex
//blog.livedoor.jp/ddgjjp/#
//ameblo.jp/u-sa-kichi/
//www.nagaitosiya.com/a/referendum.html
//ideweekly.blog108.fc2.com/
//d.hatena.ne.jp/at-univ/20100421/1271832329
//www.dream-think.com/
//kotonoha.cc/no/82733

しかし、インターネットで直接民主制とか理想を言うHPに行って
広告だらけだと引きますよね。。

ぴいたぴいた 2013/07/22 22:13  党の公約、政策は、『ネット投票の結果をそのまま国会に反映します』のみ。
 国会や委員会の内容は、100%ネット中継。採決を求められるたびに、党員対象のネット投票をする。
 その結果、A法案に賛成:70%、反対:30%ならば、党所属の国会議員のうち7割が賛成票、3割が反対票を投じる。
 実質的に現行制度のなかで、直接民主制が実現できると思うが。

 政権奪取の目標を達成したとたん、中身も考え方もバラバラだったことがバレて、政権の座を追われた民主党。
 『直接民主党』と改称して、こういう試みをすると、案外党勢を伸ばせたりして。

PSSPSPSSPS 2014/11/24 18:01 というか一連の問題点自体、間接民主制でも直接民主制でも全く同じ問題点を抱えているような気がします。

1 大衆は十分な能力がないからダメ
2 意見が多く出すぎてまとまらないからダメ (←ネットが解決できるのはコレ!)
3 直接民主制はマイノリティーの無視を正当化するからダメ。

直接民主制
1 十分な能力が無いからマスコミに踊らされる衆愚政治になってしまう。
1-2仕事があるので政治判断までやってる暇が無い。
2 全員が勝手に意見を出し合い、まとまらない。
3 多数の意見によって少数の意見が無視されてしまう。

間接民主制
1 十分な能力が無いからマスコミの言うとおりの候補を推すだけの衆愚政治になってしまう。
1-2仕事があるので候補を精査するまでやってる暇が無い。
2 各議員が勝手に意見を出し合い、まとまらない。
3 多数派の議員によって少数派の議員が無視されてしまう

どちらのシステムをとるにせよ民主主義自体の根本的な問題である以上
それさえ解決できれば直接でも間接でもうまくいく気がします。

APSAPS 2014/11/24 18:01 というか一連の問題点自体、間接民主制でも直接民主制でも全く同じ問題点を抱えているような気がします。

1 大衆は十分な能力がないからダメ
2 意見が多く出すぎてまとまらないからダメ (←ネットが解決できるのはコレ!)
3 直接民主制はマイノリティーの無視を正当化するからダメ。

直接民主制
1 十分な能力が無いからマスコミに踊らされる衆愚政治になってしまう。
1-2仕事があるので政治判断までやってる暇が無い。
2 全員が勝手に意見を出し合い、まとまらない。
3 多数の意見によって少数の意見が無視されてしまう。

間接民主制
1 十分な能力が無いからマスコミの言うとおりの候補を推すだけの衆愚政治になってしまう。
1-2仕事があるので候補を精査するまでやってる暇が無い。
2 各議員が勝手に意見を出し合い、まとまらない。
3 多数派の議員によって少数派の議員が無視されてしまう

どちらのシステムをとるにせよ民主主義自体の根本的な問題である以上
それさえ解決できれば直接でも間接でもうまくいく気がします。

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