こちら孤島のまどよりお便りします

円野まどの恥の多い日々の記録

かつて絶望していた男の子の話

 〒 みなさま

こんにちは円野まどです( *´‐`* )!

今日はでんきゅうの「進路の選択」のお話です。

個人的な話の上いつものごとく長いです( ´ヮ` )

 

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*登場人物

私 円野まど 筆者、ひきこもりの甘ったれ。

でんきゅう 私の弟と子供と友人の間にいる。九州から来た21歳。

しゃん 私のパートナー。休日の朝は起きて自動的に掃除をするきちんと男子(おのこ)

アイちゃん 大学生の時に出会った仲良しのオネエさん。

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 *21歳

 この前私の家でお茶を飲んでいた時のこと。

アイちゃんが「でんきゅう(私の弟のような人)もそろそろ打ち込めるものを見つけなくちゃね」と言った。

彼はもうすぐ22歳になる。今はオフィスワークをしながら(派遣)その合間に勉強をしている。もう数年もしないうちに25歳だ、と思うと急に年月の速さを感じた。

いつかは就職したり、起業したりするのだろうか。

 実際の年齢差にしても見た目にしても、でんきゅうと私を見て親子だと思う人はいないだろう。それなのに私はいつまでもでんきゅうを子供扱いしてしまう時がある。

何故かちょっとでも年下だ、というだけで、その子が2年か3年に1度くらいしか年をとらないように感じるのだ。普段よく話をする人たちが私より年上であることが多いので、知らず知らずのうちにその年代の気持ちになっているのかな。

どんなに時間が流れても、15歳だった時の彼を思い出してしまう。

だらしない私よりずっとしっかり者に成長した彼は、それを時々嫌がる。

 お湯が沸く音がして、火を止める。

でんきゅうはどんな大人になっていくのかなと想像をする。それはアイちゃんも同じだったようで、「何だかんだいって割となんでもできそう」という話が盛り上がった。

こういうのが普通だ、なんて。この時代に定型の生き方を求める気はない。

けれど、大学生の就職活動の時期を考えると、21歳は「将来どんなことをしたいか」を模索するのに早すぎるということはないと感じた。

考えた結果先送りにすることと、考えないまま空白にしたことでは違うから今度でんきゅうに将来のことを聞いてみようと思った。

彼はどんなものになりたいと言うのだろう、上京する時「家賃は三万くらいで2LDKくらいに住みたい」と希望してきたことを思い出して私は噴き出した。そんな自由な夢を聞いて見たいと思った。

 

*わからん

その数日後、でんきゅうと昼食を一緒に食べる事になった。

アボカド食べ放題という、割とすぐ限界が来そうな催しを私の家で行うことになったのだ。彼がトッピングのエビやサーモンをテーブルに並べている時、深く考えずに「そういえば、将来どんな仕事につきたいの?」と聞いた。この前アイちゃんとおしゃべりしたことも交えながら。

彼はしばらくふざけた後、「受けて受かりそうな所に就職する」と答えた。

それから彼は綺麗に盛り付けたスライスアボカドを運んで、着席をした。

私は食事をしながら先ほどの言葉を反芻する。

確かに受けて受からないと、就職できないよね、そこは割と重要な部分だなあと思いつつ「やってみたいこととか、興味のある仕事はないの?」と続けた。

すると彼はだんだんと表情を無くしてこう呟いた。

「わからん・・・。」

迷うとか、困るとかでもなく、テストで答えが浮かばないような感じでもなく。

うつろな目をして、軽く首を傾げた後で「まったく思い浮かばない。」と重ねる。

その時様子がおかしかった筈なのに、私は頭の中で都合をつけて普段通りにした。

私から見て彼の得意なことを幾つかあげて、「得意なことの中に好きなことはある?」と質問する。彼はそうやなあ~と言いながら今度は私に問いかける。

「なんか俺にやってみて欲しいことある?」

「うーん。仕事?そりゃあもちろん安定していてくれたら嬉しいけど、でんきゅうの人生だから、なりたい方に進んで欲しいかなあ。あっ、そうだ!職業や企業の具体名を考えるより、将来どんなふうに生活したいと想像してみるのはどうかな?」

でんきゅうの姉くらいの年齢で家でゴロゴロしている人の言えることではないと書きながら思ってきたけど、このときはドヤリティ(ドヤ顔品質)高めで言った。その上、我ながら良い質問かもと、自己満足でいっぱいだった。

でんきゅうは「将来の自分かあ」といつもの声を出す。

ちょっと想像しているようなので、それを待つことにして私は昼食を進める。下を向いてアボカドをフォークで刺している時、彼は呟いた。

「よくわからんなあ。」

何か言おうと顔をあげる間もなく、でんきゅうの声が頭に降りた。

「将来なりたいものなんて選択肢のある人だけが考えるものだと思っていたから。」

彼はいつも、今日や明日や来週の話をする。その先が、想像つかないのだと言っていた。

*かつて絶望していた男の子

彼は所謂ネグレクトを受けていた。

最初に断りをいれたいのだけど、親御さんを悪者にするつもりはない。

私には未だ子供はいないし、いたとしても他人の真の事情を私が預かり知ることは出来ないからだ。それに責める気持ちも、自然と湧かなかった。

小さな頃、親御さんが再婚して、その連れ子だったでんきゅうにはお小遣いはもちろん、学用品の準備もなかったこと。着るものも食事も殆ど用意されなかったこと。親御さんたちと、その間に生まれた子供たちがリビングで楽しくおしゃべりをしてご飯を食べている時、横の部屋で、電気もつけずに本を読んでいたこと。小さい頃から写真が一枚もないこと。一生残る傷が幾つかあること。

そういった状況の中、学校行事も担任の先生に支えられて必要品を揃え、義務教育を受けたこと、それがとても気まずくて行けなくなってしまったこと。一時不良になったこと。中学生の途中から働いてお金をいれるようになったこと。進学がしたいから家庭にいれるぶんを減らして勉強を再開したいと頼めば血がでるまで暴力をふるわれたこと。不良をすっぱりやめて貯めたお金で買った勉強道具はアルバイトでいない間に捨てられていたこと。それでも私に、義理の父親含めた両親の悪口を一度も言わなかったこと。

家族と別れて勉強する事を選択して、実家を出て東京に引っ越して、時々かかってくる無心の電話に悲しみながら、懸命に働いて合間に学んで高卒認定を取得したり、更に進学をしたこと。

そんなことがあって今の彼がある。

大人、という言葉はただの社会的な線引きで、大人だから万能じゃないことを私は自分で良く知っている。今日までの間に親御さん自身が苦悩していなかったか、誰にも分からない。だから批判するつもりは全然なくて、生んでくださったことを私はいつも感謝している。それはずっと変わらない。

悲しいことにはきっと色々な事情があると思う、本当にたくさん。

あれから何年も経って。

私はただ、でんきゅうが生きていてくれてよかったなと思っている。

生きていたからアボカド食べ放題祭りが出来たし、生きていたから私は一緒にゲームをする友達が出来た、それに生きているから毎日楽しい。

彼も生きていて良かったという気持ちになるような、困った思い出も自分の中で過去にできるような、そんな道を見つけられたらいいなと思う。

たとえば今から、棋士になるのは限りなく困難かもしれない。

サッカー日本代表とかも不可能だ。

生まれたときの環境で、実現が困難を極めることはたくさんあるんだろう。

でも21歳の彼にとって、選べる道も数え切れないほどあるから私はそれをどうにかして伝えたいなと思った。

そして、誰にも脅かされずに幸せになって欲しい。

甘い夢とか理想とかじゃなくて、幸福になろうと生きることが一番合理的に思うのだ。だから、誰でも望んでいいことなんだ。

そんな当たり前のことなのに、そう願うことに罪悪感をもつ時があるのはどうしてなのだろう。

 *彼のこれから

 

それから数日後、この前の話をしゃんにすると「思いつかないなら、とりあえず安心して食べていける仕事でいいんじゃない。」とのんびり答えた。

私がきょとんとしていると、「失敗したり、何か違うなってことも大事な経験だよ。そうすることで好みが定まることもあるし。」と続いた。

みんな、こんな風にずばりとした何かが出てくるものなのだろうか。

私はいつも、なかなか格好がつかない。

すかしたい気持ちが人一倍あることが問題なのだと思う。「たいしたこと言ってない風だけど哲学がある」みたいな路線で色々考えたけれど膨大な邪さのせいでまとまらない。

これを書いている今も、やっぱり進路を決めるためのスマートなアドバイスは全然浮かばなかった。

ただ、1つだけ私が意見を言ってもよいのなら

自分を好きになれるように、生きていってくれたらいいなと思う。

 

この日の夜。

でんきゅうから「とにかく新しい事をやってみたい。」というメッセージが届いた。

 

 

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*あとがき

思い出した順に書いたので話がぐちゃぐちゃしている所があったら申し訳ありません(〃`・н・´〃)みなさんは、進路をどんな風に決めましたか?

人それぞれだとは思うのですが、将来のことをいつごろ意識されたのだろうなあと想像しています。たとえば会社にお勤めの方はいつごろそちらに就職をすることを決めたのかな…とか既婚の方はいつ頃結婚を決断されたのかな、とかそんなことを考えていると、人生ってすごいなと思いました。(小学生) 

 

 それではまたお便りします( *´꒳`* )