モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書 (NewsPicks Book)
- 作者: 尾原和啓
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2017/09/27
- メディア: Kindle版
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ダーウィンは、
「生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。
それは、変化に最もよく適応したものである」
という有名な言葉を残しました。
社会とテクノロジーが進化しても、
人間の身体の形はほとんど変わっていません。
しかし、その人間を動かすガソリンである、
モチベーションの形というのは革命的に変わってきている
今、僕のいるコールセンター業界では
ヤマト運輸と全く同じような状態が起きている。
超売り手市場の中、
現場で受電対応/発信業務を行うオペレーターの採用に苦戦し、
人件費は高騰の一途。
もともと低利益体質の業種であるので、収益は悪化の一途。
そして、
オペレーターが不足している現場では
その穴を埋めるために、
管理者が自ら電話をとるようになる。
本来管理者としてやるべき仕事は
窓口受付時間が終了した後に着手することになり、
毎日残業をしなければ、到底終わらせることができない。
そんな上司(管理者)を見ている30代以下の人たちは
皆口々に「ああまでして働きたくない」といい、
管理ポジションは慢性的な超不足状態だ。
管理者が増えない=事業拡大ができない、ということだ。
そもそも、抜本的な働き方改革を求められている業界だが、
同時に、次世代の30代以下の人たちの労働価値観をきちんと把握して、
柔軟な職場を構築していかなければ、管理者不足の解消に未来はない。
コールセンター業界に限らず
30代以下の部下を持つ管理職の皆様
(40代~50代)には本書を読むことを強くお勧めする。
以下、まとめです。
ーーーーーーーーー
はじめに モチベーション革命
◾️ないものを、いかに埋めるか。
それが最大のモチベーションだった。
出世するため、お金のため、
人生まるまる仕事に捧げる上司を見て、
「自分はこうはなれない」
「自分はこうはなりたくない」と思ったことはないでしょうか。
今、「なんのために頑張るか」という働くための価値観、
つまりモチベーションが、ある世代を境に大きく変わってきています。
団塊世代より10年以上も上の彼らは、
戦後の何もなかったころに、
欲望への飢餓感と上昇志向と共に成り上がっていきました。
お金を稼ぎたい、広い家を建てたい、いいクルマを買いたい、、、、
ないものを、いかに埋めるか。
それが最大のモチベーションだったのです。
しかし、時代は大きくうつり、
今の30代以下は団塊世代以上とは全く異なる価値観を持っています。
◾️今の30代以下=「乾けない世代」
彼らは生まれたころからすでに何もかもが揃っていたので、
物や地位などを欲して頑張ることはない。
埋めるべき空白が、そもそもないのです。
生まれたときから「ないもの」がない。
だから何かが欲しいと「乾けない」。
◾️「乾けない世代」は
「意味合い」「良好な人間関係」「没頭」を重視します
人間の欲望は
「達成・快楽・意味合い・良好な人間関係・没頭」の5つからなります。
(by アメリカ人心理学者のマーティン・セリグマン)
団塊世代以前は前の2つ、「達成」「快楽」を強く欲しました。
汗水垂らして頑張って、高い目標を目指し
達成した暁には美味しい料理、高いワイン、美女を手にいれるなどの
「身体的・心理的・社会的な快楽」を味わうことが幸福のカタチでした。
一方、「乾けない世代」は、うしろの3つ
「意味合い」「良好な人間関係」「没頭」を重視します。
大きな目標を達成するため、
「身体的、心理的、社会的な快楽」を味わうことのためだけに、
一心不乱に頑張ることはできない。
それよりも、「自分が頑張る意味が持てるもの」に
「自分が好きな人たち」と「とことんハマる」ことを重要視する。
金銭や物理的な報酬とは関係なく〝自分の好き〟を追求する
◾️「乾けない世代」にとって、
最も犠牲にしたくないものが「自分の時間」です
出世のために、付き合いの飲み会に無理やり連れて行かれるくらいなら、
出世なんてしなくていいから、家に帰って家族と温かいご飯が食べたい。
気を許せる友人たちと楽しく過ごしたい。趣味の時間を充実させたい。
仕事が絶対ではなく、仕事と並列に、家庭や自分の時間を大切にしたい。
何より、どうしてそれらを犠牲にしてまで
仕事を優先しなければいけないのか分からない。
第1章「乾けない世代」とは何か?
◾️何もなかった世代と「すでにある世代」
旧世代のサラリーマンは、立身出世のためなら家庭を犠牲にしてしまうのが、
むしろ美学とされてきました。
残業して、接待して、汗ばんだシャツのままリビングで寝てしまう……。
彼らには
「自分たちこそがこの国を作っている」
「この社会を支えている」という自負があった。
個人という小さなものより、
もっと大きなものを一心に見つめてきたのがこの世代でした。
■自己成長と社会貢献がつながっていた
「乾いている世代」
旧世代は、
「世の中の空白を埋めるように」仕事をしてきた世代です。
社会にないものを生み出し、収入を増やし、
家のテレビを白黒からカラーに変えて、電車通勤から車通勤に変えていった。
彼らが幸福だったのは、何かを達成することが、
同時に社会貢献につながっていたからです。
例えばトヨタは、会社が大きくなればなるほど、
お膝元の豊田市が豊かになっていく。
トヨタのテレビCMが流れるようになると、
「トヨタで働いているの?」と羨ましがられる。
旧世代は、自分の成長が同時に会社の成長になり、
それが社会の成長につながっていくのを実感することができた世代なのです。
さらに、仕事で良い成績をおさめ、何かを達成すれば、
今までできなかったことができるようになる。
海外旅行に行けるようになったり、
会員制バーのVIPルームに入れたり、美女と付き合えるようになったり……。
そういうご褒美がもらえることが、モチベーションにつながっていきました。
いわば「乾いている世代」である旧世代のモチベーションは
「国」や「社会」を動かし、支えていくという
「大きな枠」で作り上げられてきました。
◾️「乾けない世代」のモチベーションは
「小さくて身近な枠」で作り上げられています。
一方、「乾けない世代」のモチベーションは
「家庭」「友人」「自分」という、
「小さくて身近な枠」で作り上げられています。
なぜなら、
旧世代がある程度社会を作り上げてしまったので、
乾けない世代は「すでに作り上げられた社会」の上に立たされている。
「大きな枠」はもはや変えようがないから、
「小さくて身近な枠」を大切に生きていく。
けれど、働き方のルールだけが変わらないから、
もう何かを建てる余白は残っていないのに、
旧世代からは「これを持って戦え!」と、
とりあえずトンカチを持たされている。
そんな、とんちんかんなズレが生じています。
社会も経済も激変したのに、働き方のルールは変わらない。
このズレを認識しないと、「乾けない世代」の力を引き出すことはできません。
◾️サイゼリヤのワインで十分だ
旧世代は、頑張って何かを達成することが生きがいです。
「達成」こそが、彼らにとって生きるうえで
欠かせないモチベーションになっているのです。
一方、「乾けない世代」は、
何かを達成することにそれほど心を動かされません。
なぜなら、彼らは「何もなかった時代」を知らないのです。
生まれたときにはテレビも冷蔵庫もあって、
ベッドから起き上がらなくたって、
スマホひとつでなんでも手に入る。
社会に出てみたら、
もうあらゆる業界で、あらゆることがなされており、
今から何かのパイオニアにはなれそうもない。
生まれたときからモノに囲まれて育った彼らは、
「ないものを勝ち得るために我慢する」
という旧世代の心理を理解できないのです。
さらにいえば、彼らは旧世代に対し
「達成」にこだわることのアンバランスさを感じてもいます。
「確かに、何かを達成して飲む極上のワインは美味しいかもしれない。
でも、友達とサイゼリヤのワインで気楽に乾杯するほうが楽しいんだけど」
というのが、彼らの本音です。
◾️これら世代間のモチベーションの差が顕著な例
上の世代:楽天の三木谷浩史さんと、サイバーエージェントの藤田晋さん
楽天は
「世界一のインターネット・サービス企業へ」を標榜しています。
サイバーエージェントのビジョンは
「21世紀を代表する会社を創る」という壮大な目標を掲げています。
この二つ、「世界一」「21世紀を代表する」という
「達成する大きさ」は書かれてますが、「何を」するか?がありませんね。
この「何を」「何のために?」というのが
目標になくても全力で走りつづけることができるのは、
上の世代のうらやましさであり、
今の世代の方にとっては違和感を感じてしまうポイントだと思います。
一方、
facebookのCEO マーク・ザッカーバーグは
6.2兆円の資産があるにも関わらず質素な生活で有名です。
そして、娘の誕生とともに保有する資産の99%(5.5兆円)を寄付しました。
ザッカーバーグ夫妻は財団を設立して、
「世界の人々をひとつにつなげ、
次の世代を担うすべての子どもたちのために、
人間の可能性を拡大し平等を推進する」
という目標を掲げています。
彼はまさに金銭的な快楽よりも、
「意味合い」を大事にする世代の代表といえるでしょう。
大事なことは、三木谷さんや藤田さんより、
マーク・ザッカーバーグが偉いという話ではなく、
二つの世代では、価値観が異なり、それ故に、何にドライブされるか?
というモチベーションが全く違うということなのです。
◾️やりたいことがないのは不幸?
旧世代では、別にやりたいことなんてなくても、
得意なことがなくても、決められたことをやり遂げて、
人より良い結果を出せればそれで十分成功できました。
大きな目標は誰かが掲げてくれたので、
必死に「達成」を追い求めれば幸せでした。
しかし今は、
「何が楽しいの?」「何をやりたいの?」ということを常に問われ、
すべて自分で決めていかなければいけない時代です。
固定された目標に向かって歯をくいしばって頑張る人よりも、
好きなことに夢中でいつも楽しそうな人のほうが、
なんだか新鮮で、魅力的に見えてしまう……。
あなたにもそんな覚えがあるのではないでしょうか。
不思議なことに、好きなことで楽しそうに仕事をしている人のもとには、
自然とお金や人が集まってくる時代なのです。
上司の飲み会に参加しなくても、サービス残業をしなくても、
我が道を行って夢中になっている人のところには、
良い人や仕事やお金が舞い込みます。
◾️幸せには、5種類ある
「乾けない世代」のモチベーションをより理解するために、
「幸せの5つの軸」を見ていきましょう。
アメリカ人心理学者で「ポジティブ心理学」の第一人者でもある
マーティン・セリグマンが唱えた「人の幸せは5種類に分けられる」
というお話を改めてご紹介します。
1番目は「達成」です。
決められた目標をクリアしたり、
誰にもできなかったことを成し遂げたりするときに
幸せを感じるのがこのタイプです。
2番めは「快楽」です。
これは単純に言うとドーパミンを感じることで、
ハンバーガーを食べたら幸せな気持ちになれるとか、
好きな人と抱き合うこととかで得られるといった幸福感のことです。
3番目は、「良好な人間関係」。
このタイプの人は、
「別に何も達成しなくてもいいし、
自分のしていることに意味合いを見出せなくてもいい。
ただ、自分の好きな人と笑顔で生きていければいい」
という思考をします。
セリグマンはこの「良好な人間関係」は人の幸せの基礎として捉えています。
4番目が「意味合い」。
英語では「ミーニング」という言い方をします。
「意味合い」の具体例を見てみましょう。
城の石垣を作っている二人の職人がいます。
片方はつまらないと思いながら仕事をしていて、
もう一人はいつも楽しそうに作業をしている。
つまらない人は
「毎日石を削っているばかりで、なんの変化も刺激もない。
もう肉体労働で辛いし、何をやってるんだろう」と愚痴をこぼします。
一方、楽しく作業をしている人は「この石垣ができたら、
僕の息子も孫も、何代にもわたって平和に暮らせるようになる。
こんなにやりがいのある仕事ができて、僕は幸せだ」と額に汗を光らせます。
後者の感じる幸せが、「意味合い」です。
自分のやっている仕事が、大きな文脈のなかで誰かに貢献できている。
さらに言えば、自分の大切な人のためになっていること。
これを実感できることが、「意味合い」タイプの人にとって、
モチベーションの源になるのです。
5番目は、「没頭」です。
これは、職人気質の人が多い日本人にはよく見られるタイプです。
プラモデルを組み立てるような細かな作業に集中しているときや、
アクセサリー作りに夢中になっているときに幸せを感じる人は多いでしょう。
自分が行うすべての作業に基準を設けて、
そのなかで成長し続けるのが「没頭」なのです。
「幸せの軸」にはこの5つがあります。
自分が何を幸せと感じるか、分析してみると、
自分自身のモチベーションを引き出す上で有効になるでしょう。
本当は好きなことだけをしていたいマイペースな「乾けない世代」が、
これまで言われてきたような、分かりやすい成功の形にとらわれず、
いよいよ主役になる時代がきた、ということでもあるのです。
あなたの心と身体のなかにも、
まだ目覚めきっていない無数の可能性の宝がざくざく眠っているはずです。
どんな人の中にも、その芽は眠っています。あとはそれをいかに見つけ、
どんな嵐がきても、まっすぐ成長させていけるかどうかにかかっています。
「幸せの軸」の後半3つを追い求めることができれば、
変化している時代と、旧来の価値観のズレに悩み、
「モチベーション迷子」になることはないでしょう。
第2章 偏愛こそが人間の価値になる
◾️仕事を頑張ったぶんだけ結果が出て、
社会全体が成長していく時代はとうに終わりました。
理由は2つあります。
ひとつは、日本の人口が減少傾向にあり、
かつてのような右肩上がりの経済成長を望めないこと。
もうひとつは、社会のIT革命とグローバル化によって、
あらゆる変化のスピードが速くなったこと。
「時代が変わる」ということは、働き方が変わる、
ということでもあります。
変化を捉えきれずに、自分の価値を上げることはできません
◾️食品業界の事例
戦後の食料すら足りない時代では、
いかに安く広く食べ物を配れるかが重視されました。
よって仕事も、「全国民に健康的な食品を」と目標を決め、
あとは決められた手順に沿って、
ひたすら同じ商品を生産していればよかったのです。
しかし、どの家庭にも食品が行きわたるようになると、
次は「品質」が求められるようになりました。
「もっと美味しいものを安く食べたい」という消費者の欲求が生まれ、
これらを解決することに重点が置かれるようになりました。
よって仕事では、
消費者の欲求という「課題」を解決する能力が求められるようになります。
「美味しいものを安く」という「課題」を解決するために、
ファミリーレストランや高品質なレトルト食品などが続々と生まれていきました。
では、今はどんな時代なのでしょうか?
美味しくて安いものが世の中に溢れている昨今では、
消費者の欲求はうんと多様化しています。
「お肉を好きなだけ食べたい、でも痩せたい」とか
「SNSにアップして、いいね! されたい」などと、
非常に個人的で細やかな欲求です。
よって先に消費者の潜在的な欲求を見つける必要が出てきました。
「太らない肉メニュー」を開発したり、
インスタ用のかわいらしくデコレーションされたケーキを提供したりと、
食にまつわる「体験」そのものをいち早く仕掛けていかなければ、
めまぐるしく変化していく消費者の欲求に応えられなくなってしまったのです。
すでに世の中には必要最低限のものは溢れています。
今は「どう遊ぶか」までを、提案してあげなければなりません。
相手の潜在的な欲求を見つけ出して、
体験をプロデュースしていくのが、これからの仕事なのです。
◾️アイデアの次は「インサイト(新しい視点)」
今はユーザーの潜在的な欲求や、購買意欲のツボである
「インサイト(新しい視点)」をすくい上げる時代です。
10代を中心に大人気のSNS「スナップチャット」を立ち上げた社長は、
開発当時はまだ22歳でした。
いかにユーザーの目線で、
「これがあると今までよりちょっと便利になる」とか、
「人よりもかっこつけられる」というような、潜在的な欲求を探し当て、
体験をプロデュースできるかに、ビジネスの焦点が当てられているのかが分かります。
◾️残業するほど暇ではない
シリコンバレーでは、残業ゼロ、週休3日の会社も珍しくありません。
しかし、彼らは仕事を休んでいる間、
ただ家でのんびりとしているわけではないのです。
社員にしっかり休暇をとらせるという会社の目的には、
「休んでいる間に、街でユーザーをしっかり観察してきてね」
という意図が込められているのです。
つまり、休んでいる間に「インサイト」を発見してくるという
〝仕事〟が課せられているということでもあるのです。
理由はもちろん、ビジネスにおける優先事項が
「決められたことをひたすらやる」ことから、
「消費者の潜在的な欲求を発見し、提案する」へ変化したからです。
1年中会社勤めをするのではなく、
まずは自分が生活者として生きることで、
世の中の潜在的なニーズを拾ってきなさいという意図が込められているのです。
時間をかけて課題を解決することよりも、
課題自体を発見したり、
新しく課題を定義したりすることに投資するべき時代なのです
◾️「ライフワークバランス」の時代
「仕事は辛いものだから、少しでも多く休んで私生活を充実させたい」
と感じている人は、そもそも〝ライフ(=余暇)〟と〝ワーク(=仕事)〟
が切り離されているのです。
しかし、「インサイト」が重要視され、
仕事と遊びの境目があやふやとなった今では、
なるべく仕事は「公私混同」で取り組んだほうが効果的です。
ライフワークとは、
たとえお金にはならなくてもついつい取り組んでしまうような、
好きで好きでたまらない〝生きがい〟です。
どんな人にも、
「このために生きているな」と思えるほど、好きなものが存在するのです。
そしてそれを実感できるときが、あなたが元気になるときです。
自分が好きで仕方ないライフワークなら、
放っておいても24時間、1年中考えていられます。
つまり、
ワークのなかのライフワークにおける部分をいかに広げていくかが大事、
ということです。
これは、ライフとワークが別々に独立していた時代が
終わりつつあるということを表した言葉でもあると言えるでしょう。
◾️仕事の永遠のルール「ありがとう」
人が仕事をしていくうえで、どんなことが大切になっていくのか。
どんな仕事なら、ロボットに代替されることなく、持続していけるのでしょうか。
シンプルな言い方をするならば、
それは「他人から感謝されて、お金をもらえること」です。
一見当たり前のようなことですが、
これこそがどんな時代が来ても永遠に変わらない仕事のルールです。
人は自分にはできないこと、
なし得ないことに対して、いくらでもお金を払うのです。
そして、自分にはできないことをしてくれる相手に対して、
人は「ありがとう」という言葉をかけるのだと。
「ありがとう」という言葉は、
漢字で「有ることが難しい」と書きます。
つまり、自分には有ることが難しいから、
それをしてくれた相手に対して「有り難い」と思う。
だから「ありがとう」と言うのですね。
◾️非効率な「好き」こそが次の産業
人工知能にも代替不可能なもの……それは「嗜好性」です。
簡単に言えば、「私は誰になんと言われても、これが好きだ」という偏愛です。
人が頭で考えて、答えを出せるようなものは、
人工知能のほうがより優れた答えを早く出せるようになります。
一方で、人の嗜好性は、非常に非効率なものなのです。
なぜ嗜好性が非効率なのか。
それは、人の嗜好とは無駄なものによって塗り固められたものだからです。
例えば、ファッションは人の嗜好性の最たるものであるがゆえに、
無駄な要素の多いものですよね。
よって、これからは
「他人から見れば非効率かもしれないけれど、私はどうしてもこれをやりたい」
という、偏愛とも言える嗜好性を、個人がどれだけ大事に育て、
それをビジネスに変えていけるかが資本になっていくのです。
日本の人工知能の権威、東大の松尾豊教授が、こんな話を聞いたそうです。
「昔の資本は筋肉でした。肉体労働を集約できることが強かった。
それが蒸気管の発明で追いやられて、今の資本は頭脳になった。
そして頭脳は人工知能によって効率的な仕事に追いやられて、
次の資本は非効率を産業としていく嗜好になっていくのです」
これを受けて教授は
「自分が何を好むのかという情報はこれから価値になります」と語っています。
どんな業種でも、この「偏愛」を突き詰めることが、
生き残りをかけた分水嶺になる、ということです。
そして、「偏愛」を突き詰めることは、
まさに「乾けない世代」の得意分野なのです。
◾️変化を生き抜く3つの選択肢
この変化に富んだ時代を生き抜くには、3つの生き方があります。
1つめは、変化していくことをチャンスと捉えて、
ずっと最先端を走り続ける生き方。
「ライフワークバランス」を極め、
ただひたすらに好きなことをやっていく道です。
2つめは、宮大工のように、伝統職のなかで、コツコツと働く生き方。
3つめは、永遠のフリーターを楽しむ生き方です。
インドネシアのバリ島では、この生き方をしている人がとても多いです。
バリ島は温暖で人々の気質も温かく、非常に住みやすいところです。
実はバリ島は経済成長の途上なので、住民の平均月収も1万5000円ほどです。
さらにバリ島は1年中、そこかしこでお祭りをしています。
そのため、収入の多くをお祭りの飲み代などに使ってしまうのです。
彼らは、自分の成長やスキルアップのために自己投資などしません。
なぜなら、日々の恵みを神様にひたすら感謝して、
ただただ「今を生きること、楽しむことがすべて」だからです。
どうして、それで生活していけるのでしょうか。
バリ島は温暖な気候で水に恵まれ、米を三期作で育てたりします。
さらにバナナやヤシ、マンゴーがそこかしこに生えていて、
にわとりは放し飼いにしていれば自然と成長してくれる。
僕はこの景色を眺めていると、
まるでバリ島は現物支給によるベーシックインカムが
すでに整っている環境のように見えてきます。
そういう社会では必ずしも人がスキルアップしたり、
成長することを要求されたりしません。
3のような極端な選択肢を除けば多くの人達にとって、
これからは「変化をチャンスと捉え、最先端を走る生き方」
にシフトしていかなければならない。
第3章 異なる「強み」を掛け算する
最強チームの作り方
◾️「いざ関ヶ原」は昔の戦い方、
「VUCA」の時代の戦い方は?
みんなが一致団結して同じ目標を目指していく時代では、
リーダーが決めたことをひたすら守り、
決められた目標をきっちり「達成」していくことが求められていました。
こういう時代は社員は会社の歯車となり、
やるべきことをただひたすらにやることが勝つための大事な条件で、
だからこそ日本は群を抜いた成長ができたのです。これらは変化の少ない社会で、
やるべきことが決まっている時代には素晴らしく効率的な方法だったのです。
しかし、時代は変化することが当たり前となりました。
昨今の米国では、このことを「VUCA」の時代と呼んでいます。
これは米国軍事大学が提唱しはじめた造語で、
Volatility(変動が大きく)
Uncertainty(不確実で)
Complexity(複雑に絡み合い)
Ambiguity(曖昧) な時代に突入したということです。
こんな時代にすべて上司に判断を仰いでいたら決断が遅れます。
上司がさらに上司へ報告し、
さらに上の指示を仰ぐ間に次の変化が起こるというような事態になります。
つまりトップダウンの組織では間違いなく時代に取り残されてしまうのです。
◾️現場の変化に敏感に対応できる、
瞬発系チームを作れ
これからは過去の方法にとらわれず、
どんどん戦い方を変えていくべき時代です。
最前線にいる人が気づいたユーザーのインサイトを、
できるだけ速くアイデア化して、
実現させていく臨機応変さが求められていきます。
そのためには、上司やリーダーに許可をもらってから動くのではなく、
気づいた人がすぐにアイデアを形にできる体制を作っておかなければいけないのです。
つまり、チームメンバーの誰もが、リーダーであるか否かなどの立場に縛られず、
ユーザーインサイトの察知能力をさらに向上させ、
なおかつチャンスに対し適切な行動を起こす、
というような瞬発力が大事になってくるのです。
◾️理想は「ゴレンジャー」?
全員がアカレンジャーになる必要はなく、
大食いだけは誰にも負けないキレンジャー、
クールで頭脳明晰なアオレンジャー、
いつも周囲をなごませてくれるミドレンジャーが、それぞれ必要なのです。
各々が特出した得意分野を持ち、どんな新型の敵が来ても、
それに応じた強さを持つメンバーが出て行って、勝っていく。
そんな多様なチーム作りが理想です。
つまり、できるだけカラーの違うメンバーを揃え、あらゆる角度、
意外な方向から飛んでくる変化をいかに素早く捉え、チャンスに変えられるか。
ここで重要なのは、
状況に合わせて凹凸の組み合わせを変えていく柔軟さです。
しかし、そのためにはまず、
自分たちの凹凸をしっかり把握しておくことが非常に大事なのです。
◾️自分のトリセツを書こう
お互いがお互いを理解していると、
「ここまで指摘してもいいよね」という信頼関係ができ、
より相互理解が早まります。
メンバーの得意分野を把握するためには、
相手とのコミュニケーションが欠かせません。
ただそう言うと、上の世代は「どんどん飲み会を開いて親睦を深めたほうがいい」
と発想しがちですが、わざわざお酒の場を用意する必要はないのです。
メンバー同士で飲み会をしたり世間話をしたりという行為には、
「僕たちは仲間だよね」と信頼関係を確認し合うこと、
会話のなかで
「君はカレーの大食いが得意なのか」
「みんなをまとめるのは苦手なのね」などと
得手不得手を把握することの2つが含まれています。
しかし、これらをもっと短時間で効率的に行うことができる
メソッドをご紹介しましょう。
まず、各自に自分のトリセツ(取り扱い説明書)を書いてもらいます。
トリセツに書く内容は、次の通りです。
1 この会社に入ろうと思った動機につながる、最も古い記憶について
ポイント:コツは、今の仕事につながる原体験を振り返ることです。
思い起こせば、子どものころからモノを作るのが好きで……」
2 自分が120%頑張っちゃうこと、ときは?
ポイント:ここでは自分が得意なこと、誰になんと言われようと、
どんなに時間を費やしても飽きない、
心のエンジンがかかるようなことはなにかを書き出してください
3 「これだけはダメ、嫌」自分の取り扱い注意ポイントについて
ポイント:「自分はこういうことにはどうも向いていない」とか
「こういうことをされると心がしぼんでパフォーマンスが下がる」
というような、あなたのNG事項について書いてください
すべて書き終えたら、
同じ仕事をするメンバーと「トリセツ交換会」をしましょう。
メンバーのなかには「アイデアを生み出す能力には自信がないけど、
地味な作業を淡々とこなしたり、進行をサポートしたりするのが大好き」
というような人がいて、
僕と凹凸がぴったりハマるベストパートナーを発見できることがあります。
強みと弱みを補完し合えるメンバーを把握できるのが、
トリセツのいいところ。
自分の得意なこと、苦手なことに関心を持って聞いてもらえるだけで、
人は認められた気持ちになり、さらに心を開くようになります。
当然ながら、お互いがオープンになれる関係は、
チームの信頼関係を構築するうえで大事だということが分かってきます。
これらはセンシティブな作業であるぶん、
たった1時間、会議をする代わりにやってみるだけで、
お互いへの理解がぐっと進みます。
それぞれが弱みを持っているなかで、
いかに補完し合い、強みを活かす方向へ持っていけるか。
凸と凹をうまく嚙み合わせて、
より進化した多様なチームとして機能していけるかが、
これからの時代で成功していくための鍵になります。
先述したように、これまでは
「同じような人が集まって、一方向に向かって走れ」
というような時代だったので、このような作業は一切必要がありませんでした。
個性だとか多様性などというものは組織には必要のないものであったわけです。
しかしこれからは
「毎回わけの分からない展開になるから、
何が起きても戦えるゴレンジャー、集合!」
という時代になります。
◾️変化のスピードには「信頼」でしか追いつけない
メンバーやパートナーをいちいち疑って、
信頼できずにいると、そのぶん動きが鈍くなってしまいます。
他者より1秒でも早くイノベーションを起こさなければならないときに、
その都度相手を信頼しないまま立ち止まっていると、
それが積もり積もって大きな時間の差を生んでしまうのです。
メンバーがそのとき、その場でしかできないことを、
それぞれがきちんと完遂してくれると信じ、任せきるようになるべきなのです。
なぜなら、変化の時代のスピード感は、
サッカーにおける0・1秒が勝利の明暗を分けるのと同じだからです。
インターネットで情報がオープンになっている今の世の中では、
1秒のアイデアに100人のビジネスパーソンが群がっています。
そこにいち早く、あうんの呼吸で飛び込めなければ、
あっという間に素晴らしいアイデアの実現を他人にさらわれてしまうのです。
◾️日本人は「信頼する技法」を知らない
「安心社会」とは、要するに
「僕たち、みんな〝一緒(似たもの同士)〟だよね?
だから、お互いの立場を脅かさないよね」
という確認が済んでいることが前提条件にある社会。
特に日本人は「安心社会」を保つために、
お互いへの安全確認に非常にコストをかける傾向があります。
じっくりと付き合いを育んだうえで、
「これだけの付き合いなんだから、あなたは私を裏切らないよね」と確認する。
確かに、小さく固定された環境下では、
「安心社会」は非常に効率的なものになるのかもしれません。
しかし、変化の時代では「安心社会」は機能しません。
これからは「信頼社会」を前提にコミュニケーションをしていくべきなのです。
「信頼社会」とは、簡単に言うと
「私にはこれができない、だからあなたに任せます。
その代わり、私は自分の得意な作業を頑張ります」と言い切り、
お互いを信じて頼り切る社会です。
◾️震災におけるボランティア活動
そこで気づいたのは、
「人それぞれにやる気はあっても、
〝やりたい作業〟は同じじゃない」ということです。
人手が足りていない現場では、物資の荷物整理やゴミ拾いなどの
地味な作業をする人が求められていたのですが、
それだと被災者の人々と直接触れ合うことができない。
被災者の人々に対して直接元気づけることを
モチベーションに据えてやってきた彼らにしてみれば、
どうしてもやる気が削がれてしまう。
それを「いやいや、一見地味でも、荷物整理も十分役に立つ作業だよ」
と言うのは簡単です。
しかし、そもそもボランティアは報酬が出るわけじゃないし、
自腹を切ってかけつけてきた彼らのやる気の炎を消してしまうわけにはいきません。
そこで、できるだけモチベーションを下げずに作業し続けてもらえるよう、
一人ひとりと会話したり、状況を確認したりしながら、
なるべくそれぞれがやりたいことと現場での作業が一致するよう、
すり合わせていくことが重要な任務になっていきました。
僕は震災ボランティアの経験と、Googleに入社したことによって、
①全員がやりたいこと ②世の中のためにやるべきこと ③個人がやりたいこと
の3つをいかに把握し、揃えるかが、
組織のマネジメントにおいて最も重要であることを学びました。
◾️WHYを共有してマネジメントしていく
全員のやりたいことと現場で求められていることが
はじめから一致することはありません。
そこで、僕はプロジェクトを通じて集まったメンバーに対し
「なぜあなたはここにいるのか」
「このプロジェクトを通じて何をやりたいのか」を問い、
一人ひとりの「WHY(なぜやるのか)」に対する答えを
なるべく活かせるようにマネジメントしていくようになりました。
メンバー全員の「WHY」をすべて満たすのは至難の業です。
そこで大事なのは、リーダーが強烈な「WHY」を提示することなのです。
例えば、「TED Talks」はなぜこのイベントを行うのか?
さらに、TEDの本家は「なぜ世界各国にイベントを広めているのか?」
を突き詰め、徹底的に磨いていく。
そして、そこで出た「WHY」が、
メンバー一人ひとりの「WHY」と一致するかどうかを確認しながら、
できるだけつなげていきます。
僕自身がチーム作りで大切にしているのは、
チーム全員で「あなたはなぜここにいるのか」を問い、
みんなの「WHY」が、一人ひとりの「WHY」につながるように、
対話を重ねて、成長を続けていくことです。
◾️クリエイティブな組織を見分ける
たったひとつの質問
Googleは2012年「プロジェクト・アリストテレス」と題して、
生産性の高いチームに共通の要素は何なのかを分析していきました。
最後にいきついたのが、「お互いの心遣い、配慮や共感」でした。
これがない組織では、失敗すると恥をかくのではないか?
と冒険をしなくなります。
「信頼社会」のときに話したように、
チャレンジしてもみんなついてきてくれる、
失敗しても受け止めてくれると思えるから、
クリエイティブな試みが生まれるのです。
こういった空間のことを「心理的安全性」に満ちていると言います。
その「心理的安全性」を見極める質問は、
「あなたのマネージャーはあなたのことを〝人〟として見てくれているか?」 です。
〝人〟として見られるから「心理的安全性」が生まれチャレンジが生まれる。
〝人〟として見られると、本来の自分でいられるから、
自分の個性、好きがより出せて、結果的にクリエイティブになれます。
チームとして、大きな「WHY(なぜやるのか)」でまとまりながらも、
それぞれ集う人が〝人〟として認め合い、違いを楽しめてこそ、
「心理的安全性」が生まれるのです。
「達成」や「快楽」よりも「自分の生き方」を大切にする
「乾けない世代」が輝くのは「心理的安全性」のなかです。
〝人〟として認め合うことでメンバーみんなが自分の色を全部出し合って、
彩りある未来の絵を描いていくのです。
第4章 個人の働き方
◾️「好き」のエッジが利いてくるほど、
必ず気の合う仲間を呼び込んでいくのです
インターネットの時代ですから、
オンライン上でいくらでも同じ趣味や嗜好を持つ仲間とつながることができるし、
一緒に切磋琢磨していけます。
そして、人と違うエッジを持つ人は、
「アイツは何やら面白い」と見出され、支持されていくのです。
僕たち日本人は、とりわけこの「人とは違うこと」を恐れます。
確かに、人と違う生き方は時々しんどいし、
「好き」を突き詰めていく過程や、理解されるまでの日々は孤独です。
しかし、「好き」のエッジが利いてくるほど、
必ず気の合う仲間を呼び込んでいくのです。
(キングコング)西野さんにこんな質問をしました。
「そんなに毎日炎上させて、敵をたくさん作って怖くないんですか?
「僕の発言は議論を呼ぶから、敵も生まれるけど、仲間も集まってくれる。
1万人の敵ができても、同時に100人の仲間ができる。
もし、1万人の敵を怖がって、声を小さくしたら、敵も少なくなるけど、
その分仲間も減ってしまう。僕にとっては、敵を作ることより、
仲間が減ることのほうが怖い」
西欧圏では、西野さんのように議論を巻き起こす話題のことを
コントラバーシャル(controversial)と言い、
「議論が巻き起こるところには、新しい何かが隠れている」
といって尊重されるというのです。
◾️「他人に迷惑をかけちゃいけません」
という現代の呪い
インドでは日本の反対で、親は子に対して
「あなたは誰かに迷惑をかけて生きていかなければならないのだから、
他人の迷惑も受け入れてあげなさい」と言うそうです。
昔の日本人は、長屋という細長い住宅に何世帯も住み、
何でも分け合って生活してきました。
しかし戦後、国をあげて経済成長していく時代になると、
すべての家に家電が行き渡り、ご近所同士のモノの貸し借りがなくなりました。
こうして、〝迷惑をかけちゃいけない〟という〝呪い〟が生まれてきました。
そしていつしか、この呪いは
コミュニティの枠から飛び出したり、チャレンジしたりする人に対し、
「失敗して誰かに迷惑をかけたらどうするんだ?」
という風に問いかけるようになっていった。
しかしこれから訪れる変化の時代では、
「おたがいさま」と言えるような大らかさや、
人それぞれの違う色を発揮できるような風通しの良さがないと、
どんどん行き詰まってしまいます。
◾️コツコツが浮かばれる時代
「評判」が可視化されていく時代は、
悪い「評判」が一瞬で広まってしまうので、
一見すると総監視社会のように見えるかもしれません。
しかしこれは、「おたがいさま」な「適度な迷惑のかけ合い」によって、
むしろ自由が広がっていく時代です。
この「評判」が可視化される時代は、
仕事において〝意味合い〟を重要視する
「乾けない世代」の味方をしてくれます。
これからは、好きなことをコツコツやる人こそが浮かばれる時代でもあるからです。
インターネットの時代では、
オンラインによってSNSもライブ動画でもいつでも、
ずっとつながっていられます。
よって、自分がコツコツやっていることが可視化されやすいのです。
あなたが自分の「好き」に打ち込む姿も、きっと誰かが共感して応援してくれます。
好きなことに打ち込む熱量は、見ている人を元気にします。
これがAIやロボットによってあらゆる作業が効率化されていくなかで、
人に残された大事な役割です。
◾️使いかけの口紅をメルカリすることの豊かさ
メルカリで頻繁に売買されているモノのひとつに、
使いかけの口紅があります。
一瞬「使いかけの口紅なんて不衛生じゃないの?」と思いますが
実は非常に合理的な方法で売買されているのです
口紅は、使ったところだけ斜めに切り落とせば、新品と同じです。
そして口紅は小さいので、送料も少額で済みます。
そのため、1回だけ使って気に入らなかった口紅は、
口をつけた部分だけ切って売れば、
新品に近い商品としてそれなりに高く売れます。
見方によっては、これは口紅のシェアリングサービスと同じだと言えます。
しかも、メルカリのダウンロード数は
国内だけで5000万(2017年6月30日時点)にも上ります。
莫大な数のユーザーがいるので、
たとえ手元にある口紅がイエローで、
ハロウィンパーティでしか使えないような色でも、意外と買い手がつくのです。
買い手の立場に立ってみるとどうでしょうか?
店頭で買うより安く済むのであれば、たまにはパーティで目立てるような、
普段使ったことのない色を選んでみるのもいいなと思えますよね。
気づきませんか?
これは、インターネットにおける
あなただけの好き・嗜好性という〝色〟においても、
同じことなのです。
インターネットは、
あなたにとってはいらなくなった口紅の色を、
必要としている誰かとあなたをつなげてくれる。
つまり、あなたにとっては
〝この色はいつも使えなくてしまっておくしかないなと思える〟
ようなものでも、
〝「好き」って言ってくれる人がいるのか分からないようなもの〟
でも、それを「ありがとう」と言って受け取ってくれる人を
見つけることができるということです。
世の中には、どんな需要があるか分からないものです。
インターネットを通じて使いかけの口紅を売ってみる気軽さで、
あなただけの「好き」をどんどんさらしていきましょう。
やがて、周りから「ありがとう」と言われ続ける、
あなただけの色が見つかります。
そして、あなたが発信した「好き」が、
誰かにとっての珍しい非日常になるのなら、
あなたはパーティで使いたいとっておきの口紅と同じ。
色んな人の非日常を飾るようにひっぱりだこにされ、
みんなから「ありがとう」と言われ続けるでしょう。
自分にとって〝誰が好きと言ってくれるか分からない色〟
でも、誰かが「好き」と言ってくれる。
あなただけの色をどんどん人に提供していきましょう。
やがて、持続的に人から「ありがとう」と言ってもらえる
自分だけの「好き」が見つかります。
◾️外にあるインサイトじゃなく、
自分だけにしか見えない「WHY」が時代を作る
AIの時代は課題解決よりも課題発見が大事です。
ただ、すでにあらゆるモノで溢れた現代で、
日常のなかからそれを見つけ出すことは困難です。
そんな時代に大事なことは、
すでに存在するモノに対する「意味のイノベーション」です。
iPhoneが世界を変えるほどのモノになったのは、
iPhoneを通すことで、自分が見た風景、
ふと浮かんだ考えをカメラやテキストで切り取り、
瞬時にインターネットでシェアすることができること。
ランチタイムには、すぐさま地図や交通情報、
レストランのレビューなどで情報を得て、
スムーズにお店へたどり着くことができること。
しかも、お店へ行き着くまでの間、好きな音楽を聴いたり、
動画を観たりできる。
そこで何か新しい発見や、アイデアが生まれることもある。
つまりiPhoneは、電話という人と会話するツールを
「自分をより好きになること、リアルにふれること、
より自分を表現できるようになること」
という「新しい意味」にイノベーションさせたということにあるのです。
スティーブ・ジョブズさんが貫いた
「Think Different(人と違うように考えられること)が
人にクリエイティビティや、その人だけの人生をもたらすことができる」
という強い信念、つまり「WHY」から生み出されたものです。
◾️『君の名は。』や『シン・ゴジラ』
大ヒットの秘密
この2つの作品の特徴は、圧倒的な絵と音のすごさで
作品の世界観に引き込まれた先にある、複雑なプロット・伏線の嵐です。
なので、つい観客は、自分が映画をどう解釈したか、
自分にとっての意味合いを語りたくなります。
特に、自分なりの解釈をした後にもう一度映画を思い出すと、
その映画は全く違う魅力を帯びるのです。
だから、もう一度観たくなる、自分なりの解釈を人に話したくなる、
誰かと映画の見方が変わる感動を共有したくて、誘いたくなる。
たとえ自分なりの解釈がなくても、
インターネットの世界では、SNSやブログを通して
他人の解釈がシェアされていきます。
誰かの解釈を聞くことで、映画の意味・重みが全く変わってくる。
「そんな見方があるなんて!」と、つい他の人にも聞かせたくなる。
誰もがうなるような解釈は、
インターネット上や口コミでどんどん拡散されていきます。
『君の名は。』や『シン・ゴジラ』の解釈、見方は何度も上書きされていき、
その度に映画の新しい魅力を体験したい観客を巻き込み、
巨額のヒットを生み出していったのです。
これは、生まれたときから周囲がモノで溢れていた
「ないものがない」世代が大好きな、
既存のモノに「新しい意味」を提供することで
「今あるものが全く違う魅力あるものになる」
という新しいビジネスのあり方です。
◾️あなた発、イノベーションの起こし方
人間は自分の好きなもの、こだわりのあるものは、
他人よりもはるかに高解像に見えます。
あなたの「好き」「あなたの歪み」は、
他人にとって、今ある世界を新しい意味で
楽しむことができようになるための源泉なのです。
TwitterやInstagramなどのSNSで、
ふと思いついた自分の解釈を共有していけば、
共感をしてくれる仲間に出逢ったり、
誰かの世界の見方を更新させていくことができます。
では、誰かに「新しい意味」を提供する源泉となる、
自分のなかの「好き」や「歪み」をどうやって育てていけばいいのでしょうか?
それは、まずはアウトプットを目的とせずに、
ただひたすら「没頭」すること、だと思います。
世の中の人にとって「新しい意味」をもたらすものは、
人との違いや、ズレから生じる「好き」や「歪み」です。
なので、人との違いが自分にとって確固たる強度なものへと成長する前に、
他の人にアウトプットしてしまうと、他人の評価軸や基準を取り込んでしまい、
折角の歪みがなくなってしまうかもしれないのです。
例えば、「虹は何色ですか?」という話をすると、
日本人は7色と答えます。
しかし、アフリカのアル族には8色に見えていたし、
沖縄の一部の地方では2色に見えるという話もあります。
子どものころに見えていた虹の色は、もっと色鮮やかだったかもしれないし、
単色にしか見えていなかったかもしれません。
でも、いつのまにか「虹」と聞くと、7色で描くようになっているし、
自分でもそうとしか見えないようになってしまっている。
だから、自分にしか見えない色や風景は、こっそり育てていくのがいいのです。
他の人に話して、「人と違う自分が悪いんだ」などと思い込まず、
直さなくてもいいくらいまで、しっかりと育てていきましょう。
自分の虹の色の見え方を世の中に発信すると、
「虹は7色じゃない!」と批判の声があがってくるでしょう。
しかし、それでも自信を持って発信し続けたら
「俺にもそう見えた」と共感する人や
「いやいや、私にはこう見えるよ」と言って楽しんでくれる人が現れてきます。
◾️好きを「生きがい」に変えていく」
1、
「ないものがない」時代から生きる「乾けない世代」は、
上の世代に比べ、
「達成」や「快楽」よりも「意味合い」「良好な人間関係」「没頭」
に意味を置く世代であること。
2、
その「新しい価値」は、
自分だけの「好き」や「歪み」から生まれやすいということ。
3、
「自分だけの世界の見方」を発信すると、
それが他の人にとって「新しい世界の見方」になったり、
既存のモノに新しい意味を与えたりすること。
Ikigai(生きがい)とは、
「That which you love(あなたが大好きなこと)」
「That which the world needs(世界が必要としていること)」
「That which you can be paid for(あなたが稼げること)」
「That which you are good at(あなたが得意なこと)」
の4つの点が交わるところに生み出されるものです。
「好きなことだけで生きていく」ことは、
「That which you love(あなたが大好きなこと)」のことですよね。
でもそれだけじゃなくて、
実は「That which you are good at(あなたが得意なこと)」のことでもある。
人は、自分が好きなことはいつまでも続けていられるものなので、
やり続けているうちにそれが
「好きなこと」=「得意なこと」に進化していくのです。
◾️はじめはちょと孤独、それでも!
日本がここまで短期間で成長したのは、
戦後に「人間がロボット状態になって働く」ことを一度受け入れたからです。
だからこそ、今の僕があり、あなたがある。
それは、ありがたくて素晴らしいことです。
しかし、
これからはもう誰かがロボットのように
感情を殺して働かなくてもいい時代なのです。
なぜなら、
それはもう高性能なAIやロボットが代わりにやってくれるようになるから。
ロボットのように働いていた人たちの仕事はなくなるのです。
自分が好きなことを探し出すとき、
どこからともなく、こんな声が聞こえてくるかもしれません。
「そんなことしたって誰にも認められない」
「そんなことお金にならない」
「そんなことが好きだなんて、みんなから白い目で見られるよ」
不思議なことに、誰にそれを言われなくても、
自分で自分にそうささやいてしまうものです。
それはもしかしたら、大人になっていく過程のなかで、
誰かが悪気なくあなたにかけた〝呪い〟なのかもしれないし、
傷ついたり失敗したりするのが怖くて、
いつしか自分でかけた制限なのかもしれません。
でも大丈夫。
あなたが心底楽しそうに没頭し、
それが少しずつ形になっていく背中を見ているうちに、
周囲の人はだんだんと巻き込まれ、応援してくれるようになります。
「生きがい」を磨く生き方は、はじめはちょっと孤独です。
一人部屋で絵を描く時間も、
誰にも自分の「好き」を理解されないことも、寂しいものです。
でも、その孤独こそが、
あなたの「生きがい」を確固たるものへと鍛え上げてくれます。
そして信じて貫いていくと、同じ高みを目指してきた人との出逢いが始まり、
本当の意味での「仲間」が増えていきます。