待ちに待った劇場版、まさか叶うとは思っていなかった桜ルートの映像化、映画『劇場版「Fate/stay night[Heaven's Feel]I. presage flower」』を観てきました。いやー、この日を何年待ち望んだことか……!
そう、10年である。2004年の原作ゲーム発売当時からのファンにとっては、13年。そのしばらくあと――DEEN版アニメが放送される前くらいの時期に触れた自分にとっても、10年以上。マジでこんな日が来るとは思っていなかった。ありがとうufotable。ありがとうきのこ。
2010年には凛ルートが劇場上映され、2014年には『Fate/stay night[Unlimited Blade Works]』としてテレビアニメ化。それだけでもう「ありがてえ……ありがてえ……」と感涙ものだったのに、まさか桜ルートまでが映像化され、それが劇場の大スクリーンで観られるなんて!
そんなわけで、『劇場版[Heaven's Feel]』のざっくり感想です。
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安定と信頼のufotableによる、極上の「Heaven's Feel」映像化
往年の『Fate』ファンには説明するまでもありませんが、此度の劇場版[Heaven's Feel]は、原作ゲームでは3番目にして最後のルートであるシナリオを映像化したもの。間桐桜をヒロインとする内容となっており、『Fate』世界の核心に迫る物語。
王道のボーイミーツガールであるセイバールート(Fate)、少年漫画のごとき熱血展開がアツい凛ルート(Unlimited Blade Works)を経て、最後に語られるのがこの桜ルート(Heaven's Feel)。いまだ映像化されていなかったこともあり、待ちに待った劇場版でござる。
「アニメで観れたらいいなー」とは思いつつ、ただでさえ鬱とエ口とグ口のオンパレードということもあり……ぶっちゃけ、無理なんじゃないかとも思っていました、はい。
初めて読んだときは、あまりにも前の2ルートとの温度差―― “雰囲気” の違いに愕然としたし、「どこまで絶望すればええんや……」と鬱まっしぐらな展開に気が休まらなかった覚えがある。タイガー道場だけが癒やし。そうなのだ……ブルマに癒やされるのだ……。
そんな鬱々とした感情を抱きながらも徹夜するほどに夢中になり、読み切ったときの達成感ときたら……! それと同時に、「でもこれ、どうあがいてもアニメにできないやつだ……」と理解した。2007年に観た某MADで「やった! 桜ルートの実質的な映像化だ!」と満足した記憶。
ところがどっこい。蓋を開けてみれば、まさかの10年越しのアニメ化である。しかも劇場版。しかもしかもの3部作構成。制作は『空の境界』を7部作で描ききったufotableと聞けば、こりゃもう約束された勝利っすよ。
また、前々からイベントレポートなどでも見かけていたけれど、監督の須藤友徳さんが生粋の桜大好きマンという話。パンフレットによれば、原作者・奈須きのこさんに「桜研究家」と言わしめるほどなので、安心感がパないのです。あ、パンフレットは読みごたえたっぷりなので、必読かと。
で、実際に観終わった感想としては、「控えめに言って最高」とかいうレベルじゃない。こりゃもう封印指定ですわ。まだ物語的には序の口、この後に数々の名シーン・名バトルが控えているのに、すでにお腹いっぱい夢いっぱい。10年も待ったかいがあったぜよ……。
映画館を後にした僕の心の聖杯は、「桜かわいい」と「アクションパねえ」と「ハサン先生ヒャッハー!」で満ち満ちていたのでした。もっかい観てえ。ufotable作品ということで、『Zero』の流れを汲んだ描写があった点もよかった。
最初の5分で「あ、最高の映画化だ」と確信した
既存の2ルートがアニメ化済みということもあり、気になるのは本作の導入部分。さすがにまた、セイバーとの出会いをはじめとするチュートリアル――もとい共通ルート部分に尺を取るわけにもいかないだろうし、どうするのかと思っていたら……。
「桜との出会いからがっつり描いちゃうぜ!」という、丁寧すぎるアバンだった。
多分、桜ルートが好きで好きで仕方がない人ほど、本当に最高の導入だったんじゃないかと思う。オリジナルのようでいて、その実、ゲームのテキスト部分を掘り下げて丁寧に描いているという、むちゃくちゃ嬉しいストーリー構成だった。まだ目が死んでる桜もかわいい。
その「士郎と桜の出会い」を丁寧に丁寧に描いているからこそ、その後の展開も映えてこようというもの。
パンフレットにも書かれていましたが、桜は唯一、聖杯戦争以前から士郎と交流のあるメインキャラクターなんですよね(藤ねえは別枠)。その前提、関係性の積み重ねがしっかり描写されていることで、徐々に壊れていく日常が引き立てられていたという印象。 “影” の異質さも含めて。
そして、その “日常” に亀裂が入る瞬間、アーチャーとランサーによる剣戟の「音」で反転し、梶浦由記さんの音楽がかかり、オープニングに入っていく展開がたまらない。共通ルートでおなじみの展開ではあるけれど、一連の描き方が違っていたのが印象的だった。
まず、2人の姿と戦闘を「映さない」点。干将・莫耶とゲイボルグがかち合うワンカットのみで、それ以降は(一応は)一般人である士郎目線で事が進み、そのままオープニングへ。でもたしかに、校庭でのバトルシーンは[UBW]でやってましたもんね……。
そのうえで、オープニングで共通ルートを「流してしまう」点も驚いた。一度は命を落とした士郎が、凛によって蘇生され、再びランサーに襲われて、セイバーと出会う運命の夜までがワンセット。大胆に感じたけれど、その後の展開を考慮すれば、バランスの取れた構成だったのかな、とも。
念願の銀幕デビューを果たした真アサシンと、各サーヴァントの見せ場
そんな最高のアバンを経て、動き出した物語。
とはいえ、全3部作の第1章ということもあり、むちゃくちゃ動きまくる戦闘アクションは控えめ……かと思ったら、ぜんぜんそんなことはなかったぜ! むしろ、全戦闘シーンにむっちゃ熱量をつぎ込んだ作画になっていた気がする。
正直、最初のバーサーカー戦の時点でヤバかった。――何がヤバいって、圧倒的な重量感を持ちつつも高速で繰り広げられる戦闘もそうだけれど、その「音」が尋常じゃなかった。
もしかすると、立川シネマシティの極上爆音上映で観ていたからかもしれない。バーサーカーの咆哮によって、自分が着ている服が小刻みに震え、その巨体から繰り広げられる一撃をセイバーが受けるたび、館内が大きく振動していたような。これから観る人には、ぜひとも極爆を勧めたい。
また、戦闘のなかでも際立っていたのが、真アサシン対ランサーの一連のシーン。新都での対峙から始まり、夜の街を疾走しつつの追いかけっこに、車上で繰り広げられる短刀と槍の打ち合い。ufotable作品ではおなじみ、「なんかよくわからんけどマジでパねえ」アクションシーンでござる。
――というか改まって考えてみると、真アサシンが劇中で映像化されるのも、実は初めてだったり……? そもそも『stay night』で登場するのが[HF]オンリーだし、ほか作品では割とネタっぽい扱いだった気もするので。『Zero』で出るのは “百貌のハサン” で、こちらは “呪腕のハサン” 。
『Fate/Grand Order』では低レアキャラ、かつストーリーでは仲間の立ち位置にいて、それがすっかり馴染んでいたので忘れかけていたけれど、そういえば “ハサン・サッバーハ” はこういうキャラだった。登場時からして「小次郎のなかからグチャア」だし、不気味かつ異質な存在。
そんなハサン先生の異質っぷりが前面に押し出されており、次々とサーヴァントを倒していくわけだから……なんかもう、絶望感がすごいよね……。
原作を読んだのが10年以上前ということもあり、ほぼ忘却していた、真アサシンの不気味さと絶望感。それを此度の劇場版で追体験することができ、そういった部分でも楽しむことができたのでした。金ピカ曰くところの「サーヴァント界でもっとも不遇なもの。その名をハサンというのだ」の面目躍如である。
鮮烈な銀幕デビューを果たしたハサン先生の活躍がある一方で、早期退場してしまった、何騎かのサーヴァントたち。ゲームではあっさりとした退場にも思えた彼らにも、劇場版ではそれなりの見せ場があった点もよかった。ただし小次郎は……うん、小次郎は致し方ないのでござる……。
その逆に、これまで見せ場のなかったライダーさんの活躍っぷりもね! 今回の1章ではさわりの部分だけだったけれど、劇場の大スクリーンで動きまわるライダーを観ることができて満足。別ルートでは悪役的な立ち位置だったり、惨殺されたりと、報われないお姉さんだったから……。
第2章「lost butterfly」は2018年公開予定
そんなこんなで、待ちに待った[Heaven's Feel]の劇場版第1章。SNSの反応を見ても、ファンの期待を軽く超えてくるような出来栄えとなっているのではないかしら。あと何気に、慎二の性格の描き方とか、各キャラの細かな表情の変化とか、演出面もむっちゃ手が込んでいたように思う。
本編最後にも予告がありましたが、第2章は2018年の公開予定とのこと。あんな第1章を観せられたら、否が応でも期待が高まろうというもの。おそらくはバーサーカー戦が入ってくると思うので……って考えたら、待ちきれず原作で読みたくなってきたぞよ……ぐぬぬ……。
古くからのファンはもちろんのこと、『FGO』からの新規層にもおすすめの劇場版。ufotableの映像は劇場の大スクリーンでこそ映えると思うので、ぜひとも観に行ってくださいな。
さっきも書いたけど、個人的には極上爆音上映がおすすめ。通常版と比べたわけではないものの、やっぱり立川シネマシティのあの環境で観て、聴いてこその魅力はあると思うのです。都心部からでも、中央線に乗って立川まで行く価値はあるかと。ぜひぜひ。
©TYPE-MOON・ufotable・FSNPC
公式サイト:劇場版「Fate/stay night[Heaven's Feel]」